ヒルトン小樽の正面玄関に到着したのは、ちょうど昼頃だった。そこにドアマンはおろか、係の姿はなく、館内から人が出てくる気配もない。仕方がないので、自らカートを見つけ出して、たくさんの荷物を運んでフロントへと向かった。その間、何人かの係に遭遇したが、誰一人手伝おうとはしなかった。そういう態度なら結構。意地でも自分で運んでやろうじゃないか。

チェックインは毎度のように、HHonors会員専用カウンターに立った。だが、係はまたしても「こちらへ」と自分の立っている一般カウンターへ移動させようとする。2月に来た時も同様のことが生じたので、マネジャーに苦情を言った。あえて会員専用カウンターを設けた意味を考えて欲しいし、設けたからには活用するべきではないかと話したところ、その通りだと答えていたように記憶しているが、それは幻想だったのか。

この時対応した係は、初めて見る顔だった。もしかすると新人なのかもしれない。とすれば、教えられた通りにしているはずだ。ならば、教育が間違っている。だが、問題は教育だけではなさそうだ。「こちらへ」と促した係は、頑として専用カウンターから動こうとしない我々に敵対心を持ったのか、次々と意地悪を連発し始めた。ダイヤモンドメンバーカードを提示しても、オンラインでメンバーステイタスの確認が取れるまでは、特典の提供は出来ないと渋り、部屋が仕上がっているのならキーを渡して欲しいと頼んでも、規定の15時までは渡せないと言い張った。カードには2009年までステイタスを保有と記載されているのに、それを提示しても効力がないとなると、いったい何のためのカードなのか。

先にキレたのはディレクターの方だった。部屋に入れないのならイベントの控室はどうなのかとディレクターが尋ねたところ、イベント名を言っても「はぁ？」という反応。この日最大のイベントについて、何も把握していないとはお粗末である。マネジャーと営業担当を呼んで苦情を言うと、すぐさま部屋が用意された。最初からこのテンポでことが運べば、何も問題はないのに。到着時の対応がスムーズであるかどうかは、全体の印象を非常に大きく左右するといういい例だ。

だが、案内された部屋には少々問題があった。大キライなコネクティングルームだったのだ。マネジャー自ら案内してくれたので、その場で不満を述べると、隣室は空室のままにしておくと約束してくれた。だが、夜になったらオバちゃんのグループがチェックインしたらしく、けたたましい話し声や笑い声が聞こえてきた。ウソばっかり。とにかく信用できないホテルだ。室内にも問題が山積している。黒ずんでしまっただけでなく、ほころびまで目立つタオル類、空調の効きが悪く寒い室内、ヘタって凹んでしまっているマットレスなど、ビジネスホテル以下の部分も多くなってきた。

朝食も随分とレベルダウンした印象だ。閑散期だからか、アイテムはかつての半分くらいに減り、テーブルにはカトラリーもナプキンもなく、すべてがセルフサービス。コーヒーすら運んでくれないのだ。入口にいる案内係は、なんと立ったまま睡眠しており、前を通って目の前で手を振っても気が付かず、ペコちゃんのようにくらくらと首を振っていた。

朝食のレベルダウンについての印象をマネジャーに伝えると、「結構ご好評いただいているんですけどねぇ」という返事。それは、どこに水準を置くかによることだが、普段東横インにしか泊まらない人が、パッケージに含まれている朝食として利用したら満足するかもしれない。しかし、ヒルトンブレックファストの水準で考えると、この状態はお粗末としか言えないのだ。

とにもかくにも、ホテル全体にコストダウンが顕在化して見苦しい。現状はパッケージツアー客のニーズにはマッチしているのかもしれないが、個人利用客のニーズにも応えられるようエグゼクティブフロアを新設し、インターナショナルブランドのクオリティを守り抜いて欲しいものだ。