2005.05.19.（木）

車で到着すると、身なりの整ったドアマンが恭しく迎え、磨かれた真鍮の扉を開けてロビーへと案内してくれる。一時期、モダンになり過ぎた感のあったロビー入口のフラワーアレンジメントは、昔のように大きくて華やかなものに戻った。チェックインはスピーディに進むが、物腰はエレガントで落ち着いている。必要事項の確認をしつつも、再訪に感謝する言葉を投げかけてくるなど、快適に感じるツボをしっかりと押さえてる。

案内にあたるアテンダントたちも、無駄な力が入っておらず、とてもリラックスしながら仕事をしている。だからこそ表情も自然でよい。客室へ向かう途中には、さりげない会話をしながらも、「お荷物の中に、プレスやお洗濯が必要なものはありますでしょうか？」「コンピュータの接続のお手伝いをいたします。」など、ベルアテンダントの域を超えた、バトラーに近い役割を果たしていた。

客室はガーデンを望む45平米のスーペリアルーム。このホテルでは標準的な客室だ。開業して13年が経ち、途中、一度ファブリックの改装をしているが、家具はすべて開業当時からのものが使われている。しかし、メンテナンスが行き届いているので、とても10年以上経過した客室とは思えない素晴らしさだ。質感が極めて高いインテリア故に丈夫なのも然ることながら、利用客から大切に扱われることで長持ちし、年を重ねるごとに一層風格が増している。

既存のテイストを保ちながらも、客室は時代に合わせて変化している。テレビが収まるアーモアには、かつて大きなブラウン管テレビが入っていたが、現在では32インチ液晶ディスプレイに改められた。DVDプレイヤーやオーディオ機器も備えている。かつてはデスクの裏にあって接続しにくかった高速インターネットは、デスクのすぐ脇にコンセントとともに用意され、とても便利になった。料金も24時間1,500円だったものが、現在では無料になっている。

広いバスルームは、いつもながら快適だった。レイアウトや照明の感じがとてもいいし、ベイシントップやガラスの棚の他、シャワーブースにも物を置くスペースがあり、使い勝手がいい。タオルやバスローブも使いたいと思う時に、いつでも手の届く場所にあらかじめセットされている。バスルームでは、浴室金具が一新された。特にシャワーブースの金具は、わずかに回転させるだけで十分な量の適温の湯が出るのが気に入った。

清掃は、滞在中の清掃を含め、非の打ち所のないもの。また、毎日クッキーとハーブティや、さくらんぼとベリーなど、日替わりアメニティが用意されるのも、気が利いている。SPAは、いつ利用しても混雑がなく、快適だった。SPAまもなく改装に着手し、秋には都内最大級の優雅な空間に生まれ変わるとのこと。まだまだ目が離せないホテルだ。

メニューにはコースも用意されるが、今回はアラカルトで軽い食事を楽しむことにした。オマール海老のスープ、シーザーサラダ、ラザニアをオーダーしたが、どの料理もタイミングよく提供され、味もよかった。安くはないが、それだけの価値は十分に感じられた。

この日は、サッチャー元首相が訪中した際に振舞われたメニューを再現したという「名人菜単〜サッチャー元首相の晩餐〜」を注文。釣魚台の得意料理がちりばめられ、メニューデギュスタシオンという感じの内容だった。珍味もあちこちにちりばめられ、コラーゲンをたっぷり含んだカエルの脂肪分「ハスマ」の入った甘味水が久しぶりに食べられて幸せ。最後に個性的な杏仁豆腐も食べたかったが、満腹のためリタイアした。

サービスは概ね快適だったが、徐々にホールからスタッフがいなくなる時間が多くなってしまったこと、そして、「これはトマトです」「これは大葉です」と、どう見てもそうであるものを説明するのはどんなものだろうかと感じた。

とりわけ気に入っているのは、ヘルシーブレックファスト。ホールウィートのマフィンにサーモン、オムレツの載ったプレートに、蜂蜜をたっぷりと掛けて食べる。コーヒーの味も素晴らしい。セットメニュー内容の変更にもフレキシブルに対応してくれる。雰囲気といい味といい、最高水準を保っている。

[フォーシーズンズホテル椿山荘東京] 920523 930710 930715 930721 940402 960105 960921 970321 981015 990320 000319 000330 011113 020713 021103 030823