1998.10.05
勘違い
フォーシーズンズホテル椿山荘東京 Club Superior
楽-3チェックインはいつもどおりスムースだった。複数の客室を予約してあったので、アサインのことで少々てこずっているようではあったが、クラブフロアのレセプショニストは、明るくスピーディに振舞い対処していた。客室の清掃も丁寧なターンダウンもパーフェクトな状態で気持ちがいい。客室係のレベルはトップクラスだ。スパのにもまた実に気持ちのよいスタッフが揃っている。
クラブラウンジで同室の者とアフタヌーンティをとった。広くはないラウンジだが庭園を見渡すことができ、上品な家具に囲まれこのホテルならではの時間が過ごせる。クラブフロアの滞在客は無料だが、外来客を呼んだ場合には2,500円と有料になる。今回は同室のものと利用したにも関わらず、請求書に計上されていた。その間違いを指摘しても、外部からのゲストは有料だと繰り返し強く主張された。どうやら係は勘違いしているらしい。それを説明するのに結構時間がかかった。何事もスムースにゆくに越したことはないが、ちょっとしたことで時間もロスをするし、気分も滅入る。でも、やはりこの客室に快適さはクセになる。
タバコが苦手な方との会食があり、今回はぼくがホストだった。予約時にしつこく確認をしながら禁煙席をお願いしていた。しかし店に入って席につくと、背後から香りの強いタバコの匂いと、煙がダイレクトに伝わってくる。その時点でゲストは気分を害し、食欲を失っていた。直ぐに席を変えてもらえるよう担当を呼ぼうとするものの、誰も気付いてくれない。こうもしていられないと思い、自ら席を立ち、入り口のレセプションにクレームを言いに行った。担当者は「構造上の問題で仕方がないんです。ご容赦くださいませんか?」といささか慇懃無礼な態度で言う。
本当にこれは構造上の問題だろうか? 構造以前に配慮の問題ではないだろうか? 隣が喫煙席であれば、その席が禁煙席であろうと、それは喫煙席に通されたのと全く違いがないことくらい、ちょっと考えれば分かるはずだ。希望の時間に、どうしてもこの席しか用意できないのであれば、その席が禁煙セクションであっても隣が喫煙セクションの席しか用意できないと、予約時になぜ案内できないのだろう。あるいは、希望の時間はだめでも、この時間ならタバコが気にならない席を用意できると案内してくれれば、こちらも考えるのに。
そういった気遣いこそがサービスではないだろうか。東京を代表する超高級ホテルと言っても過言でないこのホテルのサービスのスタンダードは、客の要望を「構造上の問題」とやらであっさりと退けることであるらしい。その上、予約時間通りに店に到着したのに、「前のお客さまがお立ちになったばかりなので、少々お待ちください」としばらく待たされた。その間、後から来た客を、我々に断りもなく先に案内していた。結局、害された気分が戻るでもなく、そのままこの店を後にして、別の店に向うことになった。
昼に出かけたこの中国料理店では、中国の釣魚台国賓館直伝の料理が味わえることになっている。確かにオープン当初は素晴らしい料理に出会うこともあった。ところが、ここ最近は個性が失われ、立派な値段だけがかつての栄光を物語っているような気がする。サービスも人によるが、どうもしっくりと来ないことが増えてきた。
とりあえずグラスの白ワインを注文したが、著しく品質の落ちたものを注がれた。注意したところすぐに取り替えたが、グラスワインとは言え、2,000円を超す立派な値段を取るのだから、品質には十分留意してもらいたい。飲みなれていない人なら、こんなものかと、まんまと騙されてしまうだろう。スタートの悪い食事は、最後まで尾を引く。
このホテルの従業員には自分で頭を使えない人が多い。心もだ。マニュアルは芸術の域に達するほどに、良く出来ていことで有名だ。しかし、人間対人間の仕事場で、すべての答えをマニュアルが用意してくれるわけではない。時として自分の頭や心で考えて行動する必要がある。マニュアルに答えのあることは、非常に良く行われている。
しかし、わずかでもその範疇から外れると、とたんにお粗末な行動しか出来なくなる。これでは、「人材」とは言い難い。とりあえず、「頭数」だけしか揃えていないホテルがなんと多いことか。いま、巷で人気のホテルのほとんどがこの類いだ。とても残念なことだ。
Y.K.