1993.07.10
2度のルームチェンジ
フォーシーズンズホテル椿山荘東京 Conservatory Room
哀-3今回予約を入れた客室は、フォーシーズンズクラブフロアのツインタイプのエグゼクティブスイートだったが、案内されたのはダブルのタイプだった。案内された時点で予約内容と違っていると申し出たところ、調べてくる間、そのままこの客室で待つことになった。クラブアテンダントが戻って来て言うには、この日は満室でツインタイプのエグゼクティブスイートは用意できないとのことだった。
早い段階で予約を入れてあったにもかかわらず、チェックインタイムになったばかりだと言うのに希望の客室を用意しないというのは、ツインで予約を入れたというこちらの主張を信じていないような気分にさせた。それとも、すべてのエグゼクティブスイートには、すでにお客さんが入っていたのだろうか。いずれにしてもこのままでは埒があかないので、その時点で用意できるという、デラックスルームに移ることになった。ラックレートで予約していたので、料金は正規の59,000円ということになった。
このデラックスルームは折れ曲がった建物の窪み部分に位置するガーデンビューの客室で、55平米の広さがあるが、このホテルの特徴でもある三角形に張り出した窓ではなく、平面状のごくありきたりな窓なので、他の客室に比べて、開放感や景観が損なわれている印象だ。ベッドは、窓に並行ではなく、窓に足を向けるカタチで配置されており、総面積が広い分、スペースに余裕を感じるが、備え付けられた家具類は大差ない。
ただ、バスルームはより多くの面積を割いた設計になっているが、ウナギの寝床状に細長いので、スペースの割には広さを演出できていないのが残念だ。独立したドレッサーがあるのがこの部屋のポイントだが、化粧をしないのでほとんど意味がない。シャワーブースが広いのはありがたったが、それ以外の点では、スーペリアルームのほうがより快適だと感じた。
ところが、食事から戻ってシャワーを使ったところ、排水が悪く、すぐに溢れ出てしまった。おなかもいっぱいになり、バスルームで疲れを落としてからゆっくり休もうと思った矢先の出来事で、せっかくのくつろぎはだいなしになってしまった。排水の不具合でまたしてもルームチェンジ。もう午前1時近くになっていたのに、荷物をまとめてお引っ越し。
引越し先は5階のコンサーバトリールーム。日本初登場となったフォーシーズンズホテルならではの客室は、窓際に観葉植物をふんだんに配して、さながら温室のようだ。面積は64平米あり、入口から寝室部分までは、スーペリアルームに準じた仕様になっている。ベッドルームから大理石のステップがあり、その先は窓辺の植物までの間、大理石を敷き詰めたリビングルームになっている。ベッドルームとの仕切りはスライド型の折り戸で鏡張りになっており、高級感がある。
植物越しには少々横目にはなるものの、庭園の木々も望め、あふれる緑と格段の採光がサンルームのような雰囲気を作り、午後のまどろみにはこの上ない空間だ。今回は、2度のルームチェンジで手間と時間を費やし、興ざめしかけたが、一度で3種類の客室を比較できたと考えることにし、気を取りなおした。しかし、最高級ホテルだというのに、手違いや客室の不備がこうも重なるようでは、信用が揺らぐ。
椿山荘の名物とも言える「蛍ファンタジーナイト」の期間中、日本料理「みゆき」では、“蛍”会席18,000円が用意されている。他のレストランでも、蛍鑑賞と合わせた特別メニューを用意しており、レストラン利用客と宿泊客は、庭園に放された蛍の幻想的な乱舞を楽しむことができる。
蛍の入った虫かごも販売されており、それを下げた子供たちは、更に庭に出てより多くの蛍を捕まえようと元気一杯だった。家族連れに人気のイベント期間中だからか、レストランの店内はいつも以上に砕けた雰囲気で、高級ホテルの店舗というよりは、地方の大衆リゾートホテルのようだ。
“蛍”会席は、変化に富んださまざまな器に盛られた料理が14品続くが、混み合っているためか、料理と料理の間が開き過ぎて、待ち疲れてしまった。窓際の席に座れたので、庭園を眺めながら料理を待っていたが、いつしか退屈になってしまった。料理もこれといって気を引くものはなかったので、目で楽しむという要素が大きい店だと感じた。
Y.K.