コンラッド 東京 Executive City Suite
Conrad Tokyo
2009.06.05(金)
東京都港区
喜-3

空を見あげる
 
見舞い この日、コンラッドへはボロボロの体調で到着した。一層のことキャンセルしてしまおうかと思ったが、行かなければ行かなかったで後悔が募り、余計に具合が悪くなりそうだった。チェックインしてしまえば、あとは部屋でゆっくりと短期療養を決め込めばいいと、今日ばかりはコンラッドの入院患者になる覚悟で館内へと踏み入れた。

静かで薄暗い地上階ロビーは、病んだ目で見ると病院というより墓場に近い冷やかさだった。従業員に気付かれることもなく、病人というより亡霊のごとく影さえ残さず、高層階行きエレベータに乗り込んだ。28階に着くと、顔見知りのアシスタントマネジャーが気づいてくれ、そのまま雑談しながらエグゼクティブラウンジまで向かった。

ラウンジでいつもの係に引き継がれた後は、至れり尽くせりの快適時間のスタートである。もう、チェックアウトまで館内から出ない。そう心に決めたのも束の間、決心はあっけなく崩れ去ることになった。馴染みの係に「風邪などひいてませんか?」と尋ねられ、「実は薬が欲しいと思っていたところだ」と答えると、医者に診てもらった方がいいと強く勧められ、すぐさまクリニックのアポイントを取ってくれた。

そのクリニックはコンラッドと同じ建物にある。とは言っても、一度エントランスから館外へ出なければならず、終始ホテル内で過ごすという意気込みは不成立に終わった。予約時間にクリニックへと行ったが、思いのほか混雑していた。コンラッドの従業員もここの医師に診てもらうことが少なくないのだという。

やがて順番が回ってくると、手慣れた手つきで診察され、レントゲンを撮るよう指示された。ちょっと疲労が重なって風邪気味なだけなのになぜだろうと思ったが、先生のご指示である。おとなしく従い、レントゲン室へと向かった。撮影が終わり、今一度診察室へ戻ると、消化器のトラブルがあるので、今日一日は食事を控え、明日からもしばらくは負担を掛けない食事を心がけるよう言い渡された。そして、処方箋を受け取り、向かいの薬局で薬を買い求めて部屋に戻ったのであった。

ラウンジに顔を出し、クリニックを手配してくれた係に診察結果を報告。と同時に、こういうわけで今夜は断食と相成ったため、レストランの予約は無用と告げねばならなかった。あらゆる気まぐれに対処するため、準備万端に構えていたに違いないと思うと、忸怩たる思いがした。

ちょうどラウンジではアフタヌーンティが始まった時間。にぎやかに並ぶお菓子に誘惑されたが、グッと我慢。他に客もなく、お菓子たちもさみしそうだ。でも、我慢。部屋に戻れば、ウェルカムアメニティとして、フルーツや小菓子プレートが届けられていたが、これも今日は眺めるだけにしよう。

夕食もとらず、部屋で静かに過ごしていると、入口でわずかな物音がした。何かと思いドアまで行くと、床との隙間にメッセージカードが差し込まれていた。体調を気遣い、快復を願うスタッフからのメッセージだった。すぐに扉を開け廊下に顔を出すと、まだカードの送り主は立ち去る途中だった。ドアの音に気付いて振り向いた彼女に向けて小声で「ありがとう」とほほ笑むと、ホッと安心した表情を返してくれた。

こんな日は早めに休むのがいい。夜更かしはせず、珍しく日付が変わる前に眠りに着いた。翌朝、一番乗りで「セリーズ」へ。一晩寝たら、だいぶ元気になっていた。だが、医師の診断によれば、まだ通常の食事には戻せない。それならばと、新しくスタートした和朝食を試してみることにした。それなら消化器への負担も軽いだろう

和朝食は注文を受けてから作るらしく、運ばれてくるまでに15分程度を要する。追加料金を払った割には、内容は今ひとつ。味どうこう以前に、盛り付けがてんでなっていない。まるで素人がブッフェ台から取り分けてきたかのような状態で、これにはガッカリした。

体調はすっかり快復したような実感があったが、1週間は様子を見るよう言われているので、無理はしないよう気を付けなければならない。まあ、軽く泳ぐくらいは平気だろうと思い、午後にはほぼ貸し切り状態のプールでゆっくり過ごした。

部屋に戻ると清掃が終わっていたが、使用したバスアメニティの補充がなく、ベッドリネンには夥しいアイロンの折れ皺が入っていた。こうしたリネンは見た目も肌触りも悪いので使わずにはねるべきだが、係にその判断がつかなかったのは残念である。

さて、夕食をどうするか。館内で最も軽く済ませられるのはルームサービスだが、いささか飽きた。次いでカジュアルなのは「セリーズ」である。エグゼクティブラウンジのスタッフ経由で予約を入れてもらい、店に向かった。だが、なぜか店先で一見扱いされた上に、今日は予約が多く、料理を出すのにかなりの時間を要するので承知しておくようにと言われた。

この宣言の意図はなんだろうか。高級ホテルのダイニングで、料理が出せないなどという言い訳が通用するのか。人員を減らし、料金を値上げし、その上、客に待てとは、バカも休み休みにしてもらいたい。しかも、説明する係の様子に、迷惑を掛けて申し訳ないという気持ちは表れていなかった。むしろ何か高飛車なものが感じられ腹立たしかったので、マネジャーをラウンジに呼ぶよう伝えて店先から立ち去った。

やがてラウンジにやって来たマネジャーに、こうして苦情を述べるのは初めてではない。それどころか、彼にしてみれば近頃は毎回こっぴどくやられており、またかという気持ちだろう。だが、またもやらかしたのはそちらなのである。大いに反省してもらわなければならない。散々説教を聞かされた彼は、振り絞るようにして「もう一度チャンスを」と言った。もちろん、チャンスは差し上げる。だが、失敗は許さない。そして15分後に行くので準備しておくようにと伝え下がってもらった。

約束通り15分後に行くと、用意されていたのは満席だと言っていた「ゴードン・ラムゼイ」の席だった。今日は軽食なので「セリーズ」でいいって言ったのに。ややピントが合わないが、精一杯の厚意なのだろう。しかし、ここでスープとチーズだけというわけにはいかない。それでは周りの客に対しても無礼になる。

ソムリエは「お食事前にシャンパンでも」と勧めてくるが、今日に限ってそれは相応しくない。具合が悪いことが耳に入っていなければならないからである。まずは体調を気遣い、何を用意するか尋ねるべきであろう。それでも、飲み干すつもりはないが、香りだけ楽しもうと思い、グラスワインを注文した。にもかかわらず、温度管理の悪い生ぬるい白ワインが注がれた。「もう少し冷えている方が好みだが」と、やんわり嫌味を言っても、ケロッとして気付いてくれなかった。

注文した料理の出来栄えはとてもよかった。美味しいのは結構だが、やはりタイミングは悪く、散々待たされた。このようにやむを得ず料理の間隔が空いてしまう時は、適時テーブルに介入して、適当な話題で間を持たせるのも重要なサービスのひとつであるが、この店はそれが0点。要するにサービス的な演出力がまったくないも同然なのだ。客を楽しませるのは、料理だけではない。店内の雰囲気、細やかなサービスが伴ってこそ、見事な料理が輝くのである。

 
ウェルカムアメニティ ウェルカムアメニティ 見舞いのメッセージ

和朝食 和朝食 バーラウンジ

シティスイートベッドルーム シティスイートベッドルーム 1階エレベータホール前

正面玄関前 地階エントランス 宴会場棟外観

外観 外観 外観

外観 外観 外観

 コンラッド東京(公式サイト)
 以前のレビューはこちら→ 050710 050724 050904 051128 051213 060212 060501 070104 070715 071028 090228 090324 090425


公開中リスト | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
| ホテル別リスト | レストラン別リスト | 「楽5」「喜5」ベストコレクション |