今回もこの上なく快適な滞在だった。メインエントランスでの到着時の出迎えから、出発の見送りまで、不快とは一切無縁なだけでなく、細かい気遣いが時間の質そのものを極限まで高めてくれる。滞在中、28階より下に降りることはなく、ほぼ24時間の間、天空の楽園で心ゆくまでくつろいだ。特に何をしたという訳でもないのに、いつも通りの行動が特別なものになる。大都会のホテルライフはかくありたいものという理想のひとつを感じる一泊だった。
これまで何度か滞在したが、毎回スイートを利用していた。だが、今回は初めてクラシックルームと呼ばれる48平米の標準客室に宿泊した。エグゼクティブフロアのうち、天井の高さがレギュラーフロアと同じである36階の客室だったので、部屋そのものはレギュラーフロアの同じタイプとまったく同等だ。37階の天井高を知っていると、やや低いという気もしたが、それでも3メートルある天井は室内に圧倒的な開放感を与えている。
入口部分はフローリング仕上げで、扉とクローゼットとの間には、一輪の蘭と水を湛えたデコレーションがある。クローゼットは3面の開き戸になっており、結構な収納力だ。
居室は枝と花の絵柄のカーペット敷きで、134センチ幅のベッドが2台並ぶ。ベッドの前には光沢のあるキャビネットがあり、冷蔵庫やプライベートバーが納まっている。その演出力も見事で、感じの良いグラスや、コーヒーメーカー、カップ&ソーサーの他、光る石のような台に載ったブルーの箱の中にミニボトルが並んでいるなど、酒を飲まなくとも、一度は中身を見てみると面白い。日本茶の茶器もなかなか趣がある品を備えている。
キャビネットの上には37インチのディスプレイが間接照明を仕込んだ白いパネルに掛かっている。豊富なチャンネルを備えるが、デジタル放送に対応していないのが残念。
ライティングデスクは円形で、引き出しを引くと木のいい香りがする。室内電話と共に、館内に持ち歩けるPHSも備えている。デスクに添えたチェアは白いレザー張りで、座り心地もよい。窓際にはベンチシート状にソファを置いた。一直線のロングシートのように見えるが、真ん中のスツールをずらせば、3つのシートにもなる。添えられた石とガラスのスクエアテーブルは、どっしりと重い。4メートル80センチ幅の窓からは、ベイエリアを見渡し、眼下には浜離宮が広がる。レース、完全遮光スクリーンともにパワーコントロールだ。
バスルームは約10平米あり、一面がガラス張りになっていて、室内を見渡せる。ユニークな形のバスタブに浸かれば、室内のディスプレイを見ることができ、バスルーム内でその音声を楽しむことも可能だ。バスタブに給湯中、水流がバスタブの縁に当たって、水しぶきが飛び散ってしまう部屋になったことがあったが、この部屋ではそういったことは起こらなかった。だが、ふたつあるベイシンの内、一方のベイシンは排水がうまくいかず、すぐに水が溢れそうになってしまうので、結局使うことができなかった。
トイレとシャワーブースはそれぞれ曇りガラスのブースで仕切られている。トイレはそれでいいにしても、シャワーブースは四方とも視界を遮られることになり、圧迫感があるので、シャワーブースの扉は透明ガラスにしてもよかったのではないかと思う。オリジナル製品で揃えたアメニティは、香りの良さも印象的だが、シャンプーやソープは細かい泡立ちで、使用感も心地よい。
夕方はエグゼクティブラウンジのカクテルアワーを楽しみ、その後はフィットネスルームとプールで汗を流す。夜のプールは照明が抑えられ、幻想的だ。この雰囲気で25メートルを確保できているのが非常にありがたい。スパのサウナにも人が少なく、リラックスしながらメディテーション気分が味わえる。夕食はルームサービスメニューから、ライトな料理をチョイス。各レストランからのスペシャリティは、よい状態で迅速に運ばれてくる。しばらくはこのパターンが病みつきになりそうだ。
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