誕生、新エグゼクティブルーム
2006.07.16(日)
ヒルトン東京 Executive Room
Hilton Tokyo
哀-2

最悪ベッドから快適ベッドへ 30階にある臨時エグゼクティブラウンジでのチェックインは、この日で最後となる。窮屈な空間だったので、ここで座ってのんびりと過ごしたことはなく、いつも単にチェックイン・アウトをするだけだった。名残惜しいというほどではないが、最後だと思うとそれなりの感慨もある。

4月から改装を進めてきた客室は、やっと一部フロアが完成し、利用できるようになった。早速その新しい部屋がアサインされ、楽しみに部屋へ向かった。36階でエレベータの扉が開き、エレベータホールの白々とした蛍光灯の照明が目に入った時、「こりゃ何だ?前の方がずっと雰囲気がいいではないか。」とガックリきてしまった。大理石張りの立派なエレベータホールは以前のままなのに、照明が変わるだけで、こんなにダサくなるとは驚き。まるで中国の地方都市のホテルみたいだ。

廊下も同様で、以前の方がずっと落ち着いたいい雰囲気だった。部屋もこの調子でガッカリかな、と心配だったが、逆に部屋の方は入ったとたんに「おおっ」という感じだった。障子と襖が残っていなかったら、ヒルトン東京だとはわからないほど違って見える。かつての温かみがあって落ち着いた雰囲気は、シャープでクールなテイストに激変した。だが、しばらくして第一印象の目新しさに慣れると、この部屋のよい点や悪い点が浮き彫りになってきた。

艶のあるダークブラウンの木目シールに囲まれた入口付近は、照明をぐっと抑え、絞り込んだハロゲンのスポットが照らしている。バゲージ台とクローゼットが並んでいるが、照明がムーディー過ぎて、バッグの中のものを探したりするのに困る。クローゼットは棚があって整理に役立つ半面、ハンガースペースが少なく、冬場などは衣類の収納に苦労しそうだ。

また、この部屋のクローゼットは、内部が縦に三分割されており、中央部分がハンガースペースになっている。扉は二枚の引き戸だ。左右のどちらからスライドしても、構造上ハンガースペースは半分以上露出することがなく、服の出し入れに際して非常に不便だ。

居室には一新されたベッドがハリウッドスタイルに並んでいる。マットレスは硬めだが、なかなかの心地よさ。寝具の肌触りや重さもいい感じで、眠りの質は大幅に改善された。ナイトボードには照明スイッチが4つ並んでいるのだが、どれがどこに対応しているのか書いてないので扱いにくかった。

テレビは32インチの液晶になり、DVDプレイヤーも備えているが、まだ地デジ放送を見ることは出来ない。ダブルルームではガラス製のテーブルを備えているようだが、ツインルームにはなく、テレビの載っている台の延長部分をデスクとして代用している。そこに、リクライニングするオフィスチェアを添えているが、デスクとしては有効スペースが狭すぎる。

ベッドと窓の間には、部屋のアクセントにもなっている赤いレザー張りのアームチェアが置いてある。このアームチェアも体重を掛ければ背もたれがリクライニングするので、リラックスするにもいい感じだ。しかし、この室内にテーブルと呼べるものが何ひとつないのには、まったくもって困惑する。ウェルカムフルーツを届けに来た係も、ルームサービス係も、一様に「どちらに置きましょうか」と尋ねてくるが、こっちが聞きたいくらいだ。これは、デザインを優先するために、必要なものすら排除してしまった悪い例の典型と言える。

デスク側の壁一面には、ステンレスパネルが取り付けられ、この部屋のシャープなイメージを決定付けている。ミニバーと冷蔵庫を収納しているキャビネットは、漆を思わせる赤と黒の扉が印象的だ。しかし、この部屋のミニバーキャビネットは、他の部屋のものよりも壁から突き出しているために、通路が狭くなっていて、ルームサービスワゴンが危うく通れないところだった。照明はダウンライト、ナイトランプ、デスクスタンドのみで、フロアスタンドはなく、すべて調光は不可能だ。ちょっと照明を絞りたいときなど、どうしようもなくて不便だった。

バスルームは基本的には以前と同じ構造だが、ベイシンは一新された。黒い石の天板を使い、スクエア型の浅いベイシンを採用。見た目はスタイリッシュだが、よく水がはねる。バスタブは以前のままで、シャワーや浴室金具は新調してある。シャワーヘッドは、ウチワのように扁平なデザインで、広範囲にシャワーを当てられるし、一番高いところにセットすればレインシャワー的な使い方も出来る。だが、水圧は低いので、高いマッサージ効果や豪快なシャワーを楽しむことはできない。

また、シャワーカーテンの代わりに採用したガラスのスイングドアは大失敗作だ。ガラス部分の半分だけがスイングするのだが、なんと内側にしか動かない。内側にスイングしたら、水栓に手が届かなくなる。いったいどうやってカランをひねったらいいのだろうか。そのうち誰かが滑って転んで怪我をするに違いない。よい点としては、バスルーム全体が明るくなったことだ。白一色の壁も雰囲気にマッチしている。

今回の改装で、確かに新しく斬新なデザイン空間が出来上がり、ベッドやテレビなどが代表するように、改善された部分もある。しかし、改善されたと同じくらい、結果的には改悪になっている部分も見受けられた。見た目に気を取られて、使いやすさが犠牲になっているのは、大変残念。客室をデザインする際にも、もっと使い勝手を検証する必要がある。この部屋は、早くも次の改装への課題が満載だ。

 
真っ赤なアームチェアがアクセント テレビの右には赤と黒の扉がついた冷蔵庫入れ デスクとして使うには狭すぎる台

ナイトランプも調光不可 ディレクトリーなどを入れた箱 バゲージ台

明るくなったバスルーム スタイリッシュなベイシン 不可解なスイングドア

 
ヒルトン東京 940505 941018 970301 990628 000411 000518 000528 010512 010901 011231 020629 020630 020704 020806 020831 040311 040602 040621 040628 040908 041228 050106 050219 050322 050327 050403 050417 050528 050624 050909 051228 060114 060408 060429 060605


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