1997.03.01
大人になりたい
東京ヒルトン Executive Room
哀-3

ツインタイプのスイートを希望していたが、スイートはすべてダブルベットひとつだというので、仕方無しにエグゼクティブルームで我慢した。31u、最上階の38階、天井高は2.4mくらい。天井高が低いので38階といえども隣のアイランドタワーの25階くらいがちょうど同じ目線になる。

31uといえば、10年前ならインターナショナルサイズで広い空間を誇れる広さだった。当時、ヒルトン、ハイアット、全日空といえばと東京で最先端をゆくオシャレなホテルの代名詞でさえあった。それがフォーシーズンズの日本上陸を皮切りに客室面積の標準が30u台から、40u台の時代になった。帝国ホテルやニューオータニなどは急いでリノベーションを行い、2部屋を1部屋にしたり、3部屋を2部屋にしたりして頑張った。今30uで勝負するのはよほどの工夫がないと難しい。バスルームに大理石をはったり、ファブリックやアメニティの質を上げないと勝負できない。

このホテルはエグゼクティブルームでさえ天井や壁が薄汚れていて暗い雰囲気だ。工夫しているのは羽毛の寝具とホテルディレクトリーファイルくらいだ。ルームサービスは24時間で、和食レストラン中国レストランが営業中はそれぞれのレストランのメニューが注文できる。しかし、天ぷら定食に8,500円出すのはちょっと勇気がいる。

かつて、このホテルは最もアメリカ的で明るく、親しみがあり、楽しい雰囲気のサービスが売り物だったが、近頃はだいぶ印象が違ってしまった。他の中堅ホテルと大差なく、ホテルのカラーを出せずじまいになっている。

まだぼくが幼い頃、このホテルは日枝神社の裏手にあった。そこのロビーに「大人の世界」を感じ、早く大人になりたいと思った記憶がある。日中一生懸命に働いた人たちが、ホッと一息つきながらグラスを傾けたり、仲間内で打ち解けたムードでテーブルを囲むシーンをよく見掛けた。その傍らで合理的にかつにこやかにたちうごく従業員もまたカッコよかった。今一度そんなヒルトンホテルに出会いたい。

Y.K.