ドアマンは館内で待機しているベルアテンダントに名前を引継ぎ、「リージェンシークラブまでご案内して下さい」と言い添えた。やはり、「いい」か「いやな」かはともかく「特別」な客として認識していたらしい。ラウンジでのチェックインも形の上ではスムーズだった。

だが、案内されたのは極めてタバコ臭い禁煙室だった。これで何度目だろう。同じことを何度でも繰り返すのが不思議でならない。消臭対応がダメだといっているわけではない。少なくとも「禁煙室らしい」仕上がりにならなければ、禁煙室希望の客には提供できないのではないか。いったい誰がインスペクションしているのか知らないが、これで禁煙室としてGOを出すという神経が信じられない。仄かにタバコの残り香があるなどという程度ではない。明らかにヘビースモーカーが一晩中吸い続けた直後の臭いである。

その状態をリージェンシークラブの係は事前に把握していなかったという。確かに、客室係の範疇にみだりに首を突っ込むのは気が引けるだろう。だが、過去にもそれで苦情を言われた相手の部屋なのだから、念を押すとか、自分で確かめるとか、一歩踏み込んだ確認をするという意識があってもいいのではないかと思う。

第一、実際に不満をぶつけられるのも、頭を下げなければならないのも、フロント役のクラブアテンダントである。せっかくドアマンがよい出迎えをして、見事な連携でチェックインまでの時間を演出しきったのに、客室係の「まあ、いっか」的な甘い判断で、すべては台無しになった。その事実を客室係は知るべきである。というわけで、担当した係を部屋に呼んで、苦情ついでに事の成り行きを説明した。

そして、新しく用意された部屋に見受けられた汚れを指摘して、一緒になって掃除をした。客室係は「私どもで致しますので・・・」と言ってくれるが、あまりに要領が悪くて見ちゃいられないのだ。窓についた手垢に、いちいちガラスクリーナーを吹きかけているが、そんなことをすれば汚れは広がる一方。固く絞った布で擦ればすぐに落ちるのに。また、ガラスの正面から構えて拭いているが、それでは汚れは見えない。斜めに構えて反射を利用して汚れを見つけた方が効果的なのである。そんな調子で清掃をしているのだから、やり残しが多数あることにも合点がいく。

その後は不快なことはさほど生じなかったが、同じフロアにアジア系外国人の団体が滞在しており、ドアを半開きにして部屋を往来しながら騒いでいるのが気になった。クラブラウンジでミネラルウォーターを頼んだら、水道水が出てきたのも驚いた。部屋のレーザーディスクは撤去され、42インチのフラットスクリーンとDVDプレイヤーに変わった。75平米のデラックスルームは、広くて快適。ワイドな窓からの眺めもいい。バスルームにもゆとりがある。せっかくのバスルームだが、照明がON/OFFのみで調光ができないのは残念だ。

チェックアウト後は伊丹空港から羽田空港へと向かう予定になっていた。朝から関東地方の悪天候が影響し、欠航が相次いでいた。運行状況をチェック しながら、欠航になれば新幹線に振り替えることも考えていたが、出発遅れの表示から変化はなかったので、伊丹まで行った。

折り返して搭乗予定の羽田行きになる便は、羽田を飛び立って伊丹に到着した。これで大丈夫だと思っていたら、出発時間を過ぎてから欠航扱いに変更になり、到着した機は次の便として運行されることになった。困ったことにそれは満席になっており、カウンターに行くと空席待ちだと言われ途方に暮れたが、重ねて頼んだところ、幸いにも欠航になった便と同じ条件で席を確保してくれたので、なんとか東京に戻ることが出来た。5時間遅れでの到着。もっと早く新幹線に変更すればよかった。