そうこうしているうちに、エレクトーンシティ渋谷に至る坂の下に、グランベルホテル渋谷なる妙なホテルができた。小さな飲食店を付帯しているが、そこも何度か利用して見限った。飲食店ばかりでなく、一度くらいは泊まってみようじゃないかと思わないではないが、いざとなるとどうにも気が進まない。デザイン性には一見の価値がありそうだが、それと快適性とは別次元の話である。ホテルはショールームではない。1晩とはいえそこで暮らすための空間だ。まずは清潔で快適でなければならないが、その点に不満を感じるような気がしてならないのである。

それはそうと、この日は久しぶりにセルリアンに泊まることにした。同じ料金ならばもっと優れたホテルに泊まれるのにとも思ったが、たまには行って見なければ現状はわからないので、今回はセルリアンに決めた。チェックイン時、フロント係の接客態度は丁寧で笑顔に溢れていた。以前よりも雰囲気がやわらかくなり、また、少しは心地よさも感じられるようになった。

だが、表面的なイメージチェンジの裏で、実質的な親切さはむしろ低下したように思う。東急ホテルズからもらった客室のアップグレード券を差し出して今回これが使えるか尋ねると、「すでにワンランク上のフロアにしてありますので」と言われ、それならとウェルカムドリンク券を出したら、今度は「ミネラルウォーター1本ですが、よろしいですか」と言われ、なんだか気が萎えてしまい両方とも引っ込めることに。その後、結局利用することなくゴミ箱行きになるとは、この時考えもしなかった。

すでにアップグレードしたと言うが、24階までのカテゴリーで予約してあったのを、25階にしたというだけ。それもアップグレードだと言えば確かにそうだろうが、恩着せがましく言われるくらいなら、24階でも十分である。また、ウェルカムドリンクがミネラルウォーターというのも、さすが東急、まことケチくさく、歓迎という意味を理解しているとは到底思えない。

客室は44平米のデラックスツインルーム。バスルームに大きな窓のある、人気のコーナールームだ。清掃は、以前よりは注意深く行っているようだが、それでも鏡やガラス部分に汚れが散見され、電球切れが2箇所あった。カーペットは新調されたが、他は開業以来のまま。家具は久しぶりに見ても、やっぱり安っぽい。さっぱりしていると考えられなくもないが、全体の色味も陰気で、気分が滅入る。バスルームは広く、独立したシャワーブースや、大きな窓に面して設置されたバスタブなど、魅力的な点も数多くあるが、使っている石の色が濃すぎて、まるで墓場のようだ。

フィットネスクラブは同じ館内にあるのだが、ややアクセスが遠い印象。受付はなんとなくメディカルクリニック風の雰囲気がある。ジムのマシンは旧型であまり使い勝手はよくない。屋内プールは明るい雰囲気で、プールサイドには大きなジャクージも備えている。しかし、プールサイドのチェアは背もたれを倒すことができず、プールサイドで昼寝でもしながらのんびり過ごしたいと思う人には向いていない。ロッカールームの奥には浴室があるが、浴槽はなくシャワーブースが並んでいるのみ。ドライサウナも付帯しており、タオルはロッカールームに豊富に用意されている。

今回は、いつも強気なセルリアンにしては比較的リーズナブルなレートで予約したが、それでもまるで損をしたような気分にさせるから不思議。サービスに対する感覚が古く、ケチケチしているのが見え見えなのが、大きな原因のようだ。