シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート Luxury Grande Japanese Suite
Sheraton Grande Ocean Resort
2009.12.29(火)
宮崎県宮崎市
-4

端整な和室
 
別世界

シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートに2泊した後、同じホテル内にあるラグジュアリーグランデへと移った。いわゆるクラブフロアのような位置づけだが、多彩な付加価値と細やかなサービスを用意して、他の客室とは明らかに異なる満足を感じさせてくれるのが、ラグジュアリーグランデである。そこには大型リゾートホテルならではのスケール感と、高級旅館のようなサービスタッチが共存し、ユニークで魅力あふれる滞在を実現している。

先に2泊を過ごしたスイートも、100平米超というゆとりの面積に上質なルームアメニティを誇り、インターナショナルリゾートとして十分に満足できる客室だった。だが、移った先のラグジュアリーグランデ和室は、すべての面でその上をゆく。

改めてのチェックインは客室内で行われる。コンシェルジュによる丁寧なアテンドがあり、松の葉茶とマカロンを振舞われながら、プランや特典についての説明を聞く。コンシェルジュの接客ぶりは、とても心地よく響いてくる。これだけでも、まるで別の世界に辿り着いたかのような特別な気分にさせられた。

用意された部屋は7階に11室ある和室のうち、コーナーに位置するタイプ。入口で靴を脱ぎ、カーペット敷きの長い廊下を進むと洋間のリビングがある。そこにはソファセットと32インチ液晶テレビがあるのみとシンプルで広々とした印象だ。隣接する和室との間は、ほんのわずかに段差のある広縁風の板の間になっている。

10畳の和室には、卓が置かれ、床の間や式台もある。クローゼットはビジネスホテルのシングルルームほどの広さがあり、十分な収納力を持つ。

バスルームは、フローリング床のダブルベイシン、独立トイレ、窓と洗い場のある深いバスタブと、魅力的な造り。この仕様はコーナー和室のみだ。窓はバスタブ脇からすぐにガラスなので、湯に浸かりながらでも外の景色がよく見える。また、バスタブから湯を溢れさせられるのも豪快で気分がいい。

内装は端整だが、地味ではない。窓からは松林を間近に望む。松泉宮の各温泉も、見た目には近くに感じられるが、実際はやはり遠い。

昼食は中国料理店へ行ってみた。ランチメニューは手ごろでボリュームたっぷりと記憶している。選ぶ料理の品数で料金が変わるシステムのランチセットは1,300円から1,900円までで、他に3,500円のランチコースがある。コースだとセットより品質の良い料理が出るのかと尋ねてみると、「同じ」との返事だったので、だったら安いセットを選ぶことにした。せっかく散財する覚悟でいても、高い方に訴求力がないのでは頼みようがない。

ラグジュアリーグランデの数ある特典の中で、最も魅力あるもののひとつが貸切湯「離れ」の利用だ。「離れ」はラグジュアリーグランデ利用客でなくても有料で利用可能だが、予約はラグジュアリーグランデが最優先だという。利用時間は営業時間内で自由に選べるが、ベストなのは夕暮れ前の陽が当たっている時。ちょうど背後から陽が差し、池や松林が光を浴びて輝いて見える。

各「離れ」には、石造りのプライベート露天風呂、ドレッシングアイテムと休憩用のイスを備えた東屋、シャワーブース、トイレが設けられているが、座って体を洗える「洗い場」はない。ここでは体を清めるよりも、じっくりと湯に浸かって、取り囲む環境との一体感を楽しむのがいい。

湯船からふと池に目をやると、見事な出来栄えの鳥のオブジェが見えた。あまりにリアルだと思いながら、しみじみ見つめていると、そのオブジェはやおら動き始めた。そうか、生きている鳥だったのか。であれば、じっと眺めている数分の間、微動だにしないという芸もたいしたもの。路上の静止パフォーマーもこれにあやかりたいことだろう。

月明かりの頃も悪くないかと思いつつ過ごしていると、隣の「離れ」から、賑やかなはしゃぎ声が聞こえて来て、一気に興ざめした。

さて、宮崎で最後の夕食は、楽しみにしていた宮崎料理「とよたま」。今回の宿泊プランに付いているのは15,000円のコースだが、料金を追加して20,000円のコースに変更してもらってある。予約した時間に出向くと、係が恭しく応じてくれた。用意されたのはテーブル席ではなく、奥の座敷だった。手前の座敷にグループ客がいるので、少しでも静かな席をと気を利かせてくれたようである。

座敷に納まり、特選焼酎のリストを見ながら、今日はどの幻の焼酎を味わうかを悩んでいると、そのグループ客の座敷から、ドンチャン騒ぎが聞こえてきた。あちらはあちらで座敷にいることで、周囲の目から遮断され、抑制が効かなくなっているのだろう。明らかに酔いが回っているらしく、ハイテンションで叫びまくっていて、裸踊りでも始まりそうな勢いが伝わってくる。

座敷の構造も、遮音はまったく考慮されずにデザインされており、逆に響きが増しているような印象すらある。この環境で板前渾身の料理を味わうのは、喧騒でシンフォニーを聞くようなもの。その真価を感じることは不可能である。これでは、せっかくの価値を間違って解釈してしまいそうなので、グループ客の宴がはねるまで、部屋で待つことにした。

それから1時間半。待てど暮らせど音沙汰なし。そうこうしているうちに、すっかり気分は萎えてしまった。こんな気分で食べても、美味しいものの価値を十分に感じられない気がしてきた。その時、部屋のチャイムが鳴った。「とよたま」のマネジャーが迎えに来たのだった。その時の気持ちを正直に伝え、ご馳走を味わう楽しみは次の機会まで取って置くことにした。

ちょっとガッカリしながら、コンシェルジュが敷いた布団に横になった。畳に寝るのは久しぶり、と思いきや、つい1週間前にも新潟で和室に泊まったではないか。なぜか記憶が遠い。この布団は、見た目よりも心地よく、いつしか眠りについた。

朝食は7時に予約してあった。場所は因縁の「とよたま」。朝は座敷ではなくテーブル席が用意された。他に数組の客がいるが、静かで上品な雰囲気が保たれている。これこそが本来の「とよたま」だろう。

ラグジュアリーグランデ専用の朝食は5,000円相当。宮廷料理を思わせるような膳が運ばれ、大きな器からは粥が盛られる。魚は席に着いてから焼かれる。汁には大きなあさりが入っていて、朝からご馳走を食べたという実感だった。食後にはコーヒーもサービスされる。最後の最後になってしまったが、本来の価値を味わうことができて本当によかった。

コンシェルジュに見送られ、名残惜しくチェックアウト。土産にもらった朝市のミニトマトとパパイヤをかばんに忍ばせ、送りのハイヤーで空港へと向かった。

 
ウェルカムティーとお菓子 玄関 調度品

リビングはカーペット敷き リビングから和室を見る 和室

洗い場付きバス バスタブからの眺め ダブルベイシン

バスアメニティ 和室入口 廊下にあるイス

貸切温泉「離れ」の湯船と池 オブジェかと思ったら本物の鳥 デッキから見る湯船

湯船と東屋 湯船と東屋 東屋にはクッション付きイスがふたつ

テーブルには花 ドレッシングコーナー シャワーブース

屋外プールガーデン ガーデンの花 松の木とプールのカメ

「とよたま」 朝食 焼きたての魚

 シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート(公式サイト)
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