BGMにかき乱されるくつろぎ |
2006.10.07(土)
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シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート Royal Ocean Suite | |
Sheraton Grande Ocean Resort |
哀-2
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シェラトンの3泊目は、ロイヤルオーシャンスイートにルームチェンジした。このスイートがある40階は、ラグジュアリーグランデと呼ばれる特別階になっており、専任のコンシェルジュが滞在中のあらゆるサービスを取り次いでくれたり、離れ湯を含めた温泉施設の最優先利用など、高級旅館を思わせる濃密なサービスがウリになっている。また、それぞれの客室も特別にデザインされており、アメニティなども充実させている。
このホテルの最高級スイートに当たるロイヤルオーシャンスイートは、40階の先端部分を占め、300平米の面積がある。両開きの扉を入ったところにあるエントランスホールだけでも15平米以上あり、ちょっとしたビジネスホテルの1室よりも広いくらいだ。100平米以上あるリビングルーム、キッチン、バーコーナー、マスターベッドルーム、セカンドベッドルームから成っており、いずれの部屋も贅沢な内装が施されている。 エントランスホールを抜けると、ガラスの内扉があり、その先を曲がるとリビングルームが広がっている。正面にはグランドピアノがあって、その両脇にダイニングセットとソファーセットが置かれている。ソファの傍らには地球儀が載っている大きなライティングデスク。リビングの一角は大理石のカウンターとハイチェアを配したバーコーナーになっていて、後ろの飾り棚にはグラスやデカンタがディスプレイされている。その奥は広いキッチンだ。また、リビングルームの数箇所に据えられたコンソールキャビネットにも、立派な食器類が入っている。照明は、シャンデリアや間接照明のほか、豊富なスタンド類が各所に配されており、シーン設定が可能な調光システムを採用している。 マスターベッドルームへの扉は、立派なフレンチドア。140センチ幅のシェラトン・スイート・スリーパーベッドが窓の方を向いて2台並び、エレガントな布のキャノピーが設えてある。ベッドボードには立派な象嵌が施されており、窓際にセットされたイスは白いレザー張りだ。ベッドルームからバスルームへと続く廊下の壁には、邸宅に据えるような大型の収納家具が設置されている。収納力には富んでいるものの、クローゼットの扉の内側にスライド式のミラーがはめ込まれていたり、引き出しもスライドドアの奥に隠されているなど、見た目は優れていても、やや実用性に欠ける。 マスターベッドルームに付帯するバスルームもまた広々している。全体に白い大理石を使い、浴室金具には金メッキを施してある。バスタブはプラスチック製だが、丸みを帯びたユニークな形状。だが、大型であるがゆえに給湯に時間を要することと、ジェットバスではないことが残念。ベイシンはダブルで、トイレは完全に独立している。また、シャワーブースの奥には、強力なスチームサウナも設置。シャワーの水圧は低く、湯温が不安定で、どちらかというとぬるいことが多かった。 セカンドベッドルームもまた、なかなか魅力的だ。マスターベッドルームと比較すると、一回り狭いスペースだが、2台のベッド、オットマン付のソファ、ドレッサー、テレビキャビネットがあり、独立したシャワーブース付きの大理石張りバスルームを備えている。だが、結局こちらの部屋は、まったく利用することがなかった。 ラグジュアリーグランデフロアの特典として無料で利用できる離れ湯にも、せっかくなので行ってみた。浴槽は小さいが、古い民家のような設えの休憩処があり、縁台の向うに広がる池を眺めながら、のんびりと過ごせるようになっている。個室風呂を完全に貸しきるスタイルなので、プライバシーも万全。カップルや家族で、気兼ねなく入浴を楽しめる。 最終日の夕食は「クイーン・アリス アガペ」を利用した。せっかく広い部屋に滞在するので、ルームサービスにでもしようかと思っていたのだが、コンシェルジュが気を利かせて席をキープしてくれているという。その配慮を無駄にしたくないと思い、42階のレストランへと出向くことにした。食事の前に、同じ階にあるバーラウンジ「ステラ」に立ち寄った。この「ステラ」では、グランデフロアとラグジュアリーグランデフロアに滞在中のゲストを対象に、イブニングカクテルサービスを提供している。いわば、クラブラウンジのような存在。店内は狭く、満席だった。カウンターにはクッキー、チーズ、カナッペ、フルーツが並び、飲み物は係がオーダーを受けて運んでくれる。 「クイーン・アリス アガペ」は九州では初の展開となるクイーン・アリスのイタリアンレストランだという。メニューを開くと、「アガペ」についての説明が書いてあった。それによると、アガペは何をやっても、もうちょっとのところで失敗してしまうダメな天使の名前なのだそうだ。なんだか、このホテルの現状とダブってしまうではないか。店内は照明を非常に絞っている。周囲の客が浴衣姿なのがよく見えずにありがたいけれど、肝心な料理すらよく見えないのは困ったものだ。料理の味は悪くはない。だが、塩味が際立ちすぎていた。そして、内容は東京で普段食べているような料理ばかりで、何も宮崎まで来て食べなくてもいいという感想だった。 店内のBGMはJAZZ。それもモダンジャズやアシッドジャズなど、アップテンポで扇情的なもの。割れたサックスの音が果てしないインプロビゼーションを奏でたかと思うと、今度はこれでもかと言わんばかりのドラムソロが続く。これが、ダイニングに相応しいBGMだろうか。JAZZは大好きだが、太陽と自然に囲まれたこの豊かな土地「宮崎」で休日を過ごす中、このような音楽を聴きたいとは到底思わない。 同様に、1階のカクテルバー「パシフィカ」では、ビートの効いたクラブミュージックを流している。アトリウムロビー内に位置する店なので、そのBGMは同時にロビーのBGMにもなっているのだが、それは活気を感じさせるというよりも、大衆的な日常感を呼び覚まし、まるで渋谷にでもいるような気分にさせる。客たちがこの地に何を求めてやってくるのかは、人それぞれかもしれない。だが、客層を見ている限り、この音楽を歓迎する人は少ないだろう。 BGMが象徴するように、このホテルは、あらゆる面で客のニーズを読み違えている。モダンで都会的な空間デザインを取り入れ、カジュアルでフランクなサービスを提供する新しいシェラトンのイメージ。これが東京ならば受け入れられるかもしれないが、宮崎はまだそういう土地ではない。気合いを入れて整えた「バンヤンツリースパ」も流行るわけがないと思っていたが、案の定、規模を大幅に縮小することになった。ターゲットに据えた客層にはなかなか来館してもらえないと嘆くばかりでなく、その理由をよく考えるべきだ。 最後の食事は、みやざき料理「とよたま」の朝食。この店は当初ラグジュアリーグランデ専用ということになっていたが、すぐさま誰でも利用できるようになった。朝食はなんと5,000円。どんな驚きを感じさせてくれるのかと楽しみに出かけたが、非常にガッカリした。まず、店内が不潔だった。朝一番なのに清掃が行き届いていないとは、どういうことか。そして、「はよざいま〜す」という緩くてだらしない挨拶。ホテル自慢の最高級店が聞いて呆れる。この店には、気品というものが存在しない。そして、料理は朝から刺身だなんだと夕食のような料理が出てくる。これまた勘違いしていないか。5,000円でもいいけれど、シンプルながら手間隙掛かった料理で、「これぞ宮崎の味」というものを食べさせて欲しい。 ホテルから宮崎駅まで、ハイヤーを利用した。そのドライバーは、味のある話し方や物腰を持った人で、たった15分のドライブながら、最も「宮崎」を感じさせてくれた。3泊の滞在よりも、15分のドライブが圧勝。この現実をしっかりと受け止めて、世界に誇れる「宮崎」のリゾートへと成長してほしい。 |
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シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート | 041002 061005 |
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