シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート Ocean Grand Suite | |
Sheraton Grande Ocean Resort |
2008.11.07(金)
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宮崎県宮崎市 |
楽-5
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ラグジュアリーホテルに泊まる意味 | 都城を拠点に現地のクライアントや東京のエージェントたちと4日間行動を共にした後は、宮崎市内へと移動し、市内で2泊する予定になっており、ホテルはエージェントが市街地のビジネスホテルを手配してあった。だが、ここまで来てシェラトングランデを素通りするのはイヤだったので、ビジネスホテルはキャンセルしてもらい、自腹でシェラトングランデを予約した。
その行動をエージェントはひどく不思議に感じたらしい。なぜわざわざ高いところに泊まる必要があるのか。寝るだけなら用意したホテルでも十分ではないのか。無駄な出費ではないのか、などと散々だった。エージェントとしては2泊分の滞在費用が浮いたのだから、黙ってラッキーと思っていればいいのだろうが、それ以上に、そこまでしてシェラトングランデに行く理由に興味を持ったようだった。 確かに寝るだけならビジネスホテルでも十分である。街によっては、どんなに望んでもビジネスホテル以上の選択肢がない場合もあり、そこで文句を言っても始まらないので、与えられた環境の中で快適に過ごすよう心掛けている。仮により高級なホテルがある都市だとしても、前後の予定や滞在時間、目的などを考えた上で、今回はビジネスホテルでも十分と判断し、自らリーズナブルな宿を選ぶこともある。何かの拍子に人から放って置かれたい気分の時には、高級ホテルの手厚いサービスが鬱陶しく感じられ、カジュアルなホテルに安息を求めることだってある。 要するにケースバイケース。その日の目的や気分で、服や時計を選ぶようにホテルも選ぶというわけだ。 この時は、気分というよりも、個々の細胞が高級ホテルでの滞在を渇望していた。スケジュール表を見れば、あと1ヶ月余りは、毎日1回以上のコンサートが予定されており、常にベストコンディションでいる必要がある。疲労を蓄積して質を落とすことは許されないし、気分的に滅入るなど以ての外。心身共に健康であることを前提に組まれたスケジュールを呪いたくなることもあるが、お声が掛かるだけありがたいのだと、その発想を恥じることしばしば。 そんな時、疲れを翌日に残さないためのベストな選択は、許される限り高級な宿を選ぶことである。洗練された雰囲気、細やかなサービス、美味しい食事、快適なバスルームとベッド、エネルギーを十分に補給できる朝食などなど、高級ホテルには次の日のアクティビティやパフォーマンスに有益な仕掛けが満載。これは贅沢などではなく、自己管理とメンテナンスへの投資に他ならないのだ。 とまぁ、エージェントにはこんな内容のことを説明したのだが、それでも「私には小奇麗なビジネスホテルで十分です。高速インターネットは欠かせませんけどね。」との反応で、まるで変わった趣味の持ち主だといわんばかりの表情だった。そこでこう切り出した。「今日はシーガイアで夕食にしませんか? よろしければ県のご担当者もご一緒に。ご馳走しますよ。」と。最初は遠慮していたが、興味がないわけでもないらしく、「それではお言葉に甘えて」ということになった。 エージェントに送られ、シェラトングランデに到着。夕食まではまだ2時間半あり、エージェントたちは彼らが泊まる市街地の宿に一度チェックインしてから戻ってくる予定になっていたが、「せっかくなら、このままホテル内でゆっくりなさってはいかが?」と持ち掛けると、ふたつ返事でそのようになった。シーガイアの敷地内に入ってからのリゾート感、アプローチを車で上がる時の高揚感など、すっかり雰囲気に魅了されていたのである。 しかし、メインエントランスでの出迎えは、今ひとつスムーズとは言えなかった。エントランスには二人の女性が立っていたが、不慣れなのか、覇気や華がない。壮大なリゾートへの到着の瞬間は、重要な演出ポイント。ここでこそ「シェラトングランデへようこそ!」と雰囲気を盛り上げるべきだ。 そのままフロントへ連れて行かれそうになったところに、コンシェルジュデスクに案内して欲しいと声を掛け、方向転換してもらう。コンシェルジュデスクでは、サインレスの極めてスムーズなチェックインが済み、そこに顔馴染みのヘッドコンシェルジュがやって来た。 エージェントたちを紹介し、彼らを連れてきた理由を説明すると、夕食までの時間、ラグジュアリーホテルの価値を感じてもらうために、館内を案内してもらうことになった。ロイヤルオーシャンスイートを含む、ラグジュアリーグランデ客室、宴会場棟など、いくつかの施設を見物した後、同行したヴァイオリニストは松泉宮の「新月」で温泉に浸かり、エージェントはスイートのリビングで静寂を味わった。 そして県の担当者も合流し、「とよたま」で夕食。落ち着いた広い座敷が用意され、料亭風の丁寧な挨拶からスタートした。料理は客の出入り口とは別の出入り口から運ばれてくる。宮崎名物の尾崎牛や、伊勢海老、松茸などを使った料理は、どれも量が控えめで上品なスタイル。器にも思い入れが感じられた。 そして、圧巻なのは焼酎の品揃えだった。入手困難と言われている幻の焼酎が、適正で手頃な価格で取り扱われているのには好感が持てた。最初は「車なので」とアルコールを控える覚悟でいたエージェントも、「代行を呼ぶので」と宗旨替えをし、様々な焼酎を飲み比べては勝手なコメントを披瀝していた。よほどご機嫌だったのだろう。これだけ喜んでもらえたのなら、お招きした甲斐があるというのもだ。 名残惜しくも夕餉はお開きとなり、一向をメインエントランスまで見送った。その時間まで待機していてくれたヘッドコンシェルジュにも礼を述べ、ひとり客室へ。用意されたのはいつものスイートだが、上の階から大きな足音が響いて、あまり落ち着いて過ごせなかった。誰もいない「新月」の露天風呂に浸かりながら今日一日を振り返り、明日という一日を思い浮かべる。時には明日が怖いと思うこともあるが、この時は明日もいい日になると確信できた。 それはそうと、またしても「新月」の男湯は眺めが悪くなった。最初は柵がなく、池と連続しているような感覚の「インフィニティ風呂」だった。しかし、行儀の悪い客が女湯を覗こうと池まで出て行くので、第一の柵が設けられたが、それだけでは防御しきれず、今度は第二の柵が張られ、池の半分が視界から消えた。仕方がないとはいえ、残念である。 翌朝は「クイーンアリス アガペ」の朝食でスタート。入口ではコンシェルジュが出迎えてくれた。店内は貸し切り状態。静かでいいが、なんだか申し訳ないような気分にもなる。朝食内容はユニークだ。パンはフォカッチャ、それにクロワッサンのサンドイッチ、ミネストローネ、キノコだけを食べて育ったという都城ポークなどが、ひとつの皿に盛られてくる。朝食というよりは、ピクニックのブランチのような感じ。 ジュースはオレンジかアップルをチョイスするが、氷を入れてくるのは感心しない。これで終りかと思ったら、デザートがあるという。コーヒーを飲みながら待っていると、カモミールとハチミツのシロップに漬け込んだフルーツとマンゴソルベの盛り合わせが運ばれてきた。爽やかな一皿だった。 午後からは公演のためホテルを空けた。昨晩夕食を共にした人たちがシェラトンまで迎えに来てくれたが、彼らの表情を見て驚いた。実にスッキリとしたいい顔をしていたのである。よいホテルでのひと時は、こうも人を癒し変えるものかと、改めてその効能に目を見張った。 この日の公演は、語り手とのコラボレーションで、宮崎市内の夜景を見下ろす高台のレストランが会場だった。民話を題材にした語りを音楽で彩るという趣向だが、敢えて事前の準備をせず、その場の雰囲気で直感的に音楽を当てていくという即興的な方法を取った。感情を込めて投げ掛けられる言葉には、すでに魂が宿っており、そこに音楽を添えるのには、なんの迷いもなかった。必然的にインスピレーションが湧き出て、とても面白い体験が出来た。 市内で夕食をとり、ホテルに戻ったのは23時近かった。今日もまた、眺めの悪くなった「新月」に浸かり、禊の気分で心身を清める。明日はまた別の場所に移動である。初めて会う人たちに、疲れた顔など見せられない。リラックスしてゆっくりと休むとしよう。だが、上階の足音は深夜2時10分まで響き続けた。一応、フロントに相談したが、「廊下は静か」という理由で、何も手を打ってはくれなかった。今回はホテルにも世話になったし、我慢することに。 2泊目の朝食は「とよたま」で。夕食の時は感じなかったが、明るい時にしみじみ見ると、窓や壁紙がチープ。様々なパターンの障子や高い照明効果など、デザインは面白いが、まるで映画のセットの中にいるようで、ホンモノの質感に乏しいのである。 店内中央には人が立ったまますっぽりと入れそうな大きな甕が飾ってある。古くから実際に使われていたアンティークなのかと思い、係に使用目的を尋ねてみると、「単なる飾りです」とのこと。デザイナーが外国人だと、日本人の感性がどこに目を向けるかという点までは計算できないらしい。 午前中はジムとプールで日課の運動をこなし、ランチは中国料理「藍海」を利用した。プリフィクススタイルのメニューは、チョイスする料理の品数で値段が決まる。メインが1品だと1,300円で、メインを1品増やすごとに300円が加算されるという手頃なプライス。スープ、ライス、ザーサイ、デザートもセットになっている。 各レストランでは「いらっしゃいませ」の代わりに「ようこそ○○へ!」と声を掛けることになっているらしいが、スタッフはそれを恥ずかしいと感じているようで、どうも歯切れが悪い。そうなると、聞いている方も気恥ずかしくなる。到着の時に愛想も元気も見せずに、レストランでいやいやながらに気合いを入れても本末転倒ではないのか。尋ねると、これはシェラトン共通のイメージ戦略なのだとか。明るくフレッシュな印象を演出したいのだろうが、それにはどうも無理があるように感じられた。それ以前に、基本的なことをしっかりと確実に遂行してもらいたい。 チェックアウト後は丁重に見送られつつシーガイアを後にした。宮崎駅から乗る予定の列車まで、しばらく時間があったので、評判のコーヒー店に立ち寄った。すべて自家焙煎で、常に新鮮なコーヒーが味わえるのが魅力。店の主に、美味しいコーヒーを見分けるコツを尋ねると、コーヒーは酸化したり古くなると濁るので、カップにスプーンを底まで沈めて、スプーンがはっきりと見えているかどうかが一番簡単な見分け方だという。プロの入れたコーヒーはまさに琥珀色。艶があって透き通っていた。 |
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シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート(公式サイト) | |
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