昼下がりのフロントは人も少なく、穏やかな時間が流れている。カウンターに立つ係は若く、ポップな雑貨を扱う小さな店が似合うような女性だった。手続きをすると、部屋はすぐに用意できるとのこと。予約はモデレートツインで入れてあったが、ダブルベッドでよければスーペリアタイプにアップグレードできるとも告げられた。ラックレートでわずか1,000円の差ではあるが、よりよい部屋になるのは興味深いので、そのようにしてもらった。

キーが渡された後、カウンターに山盛りになっているリンゴを指し、「こちらはウェルカムフルーツと申しまして、欧米のホテルではよく見られるサービスです。おひとついかがですか」と、目の前の客が無知に見えたのか、丁寧に説明をしてくれた。「ほう！そうなんですか。ではひとつ」と彼女にお付き合いしてみることに。折しも今年は開業40周年の節目に当たっており、更に開業日が13日なので、13日限定でウェルカムフルーツサービスを行っているとのことだった。

だが、リンゴよりも嬉しかったのは、スタッフの醸す雰囲気が、これまでと大きく変わっていたことである。若いスタッフが中心だが、皆フレッシュで歯切れのよいサービスをしており、それぞれに自分の仕事を楽しんでいる様子がうかがえる。スタッフが明るくなったことで、ホテル全体が華やいだように感じられ、好印象であった。

用意されたスーペリアダブルルームは表通りに面しており、22平米の広さがある。モデレートツインルームと広さや向きは同じだが、ラックレートで1,000円の料金差はどこにあるのだろうか。部屋をしみじみ見ても、共通点の方が圧倒的に多く、違いはごくわずか。それはエスプレッソマシンが備わっていることと、バスルーム壁の一部がガラスになっていること。これ以外の違いは見つけられなかった。

また、モデレートツインと同じ価格設定になっているモデレートダブルは裏向きに並んでおり、22平米という専有面積は同じことになっているが、柱によるデッドスペースが大きく、このスーペリアに比べるとかなり窮屈。しかも、シャワーのみでバスタブがないため、好まない人も多いようだ。実際、モデレートとスーペリアの居心地を比べたら、後者の方が格段に快適で、その差1,000円以上の価値は十分にあると感じられた。

部屋の形状やレイアウトは至ってシンプル。160センチ幅ベッドの両脇にナイトテーブルとランプを設置し、シモンズのマットレスやデュベカバー仕上げの寝具は快適だ。ベッドの向かいには、カウンターデスクとテレビ台。32インチの液晶テレビが載り、この時期ちょうど地デジへの移行工事中だった。デスクはやや手狭だが奥行きがたっぷりとあり、載っているものを片付けたら、十分な作業スペースが確保できた。冷蔵庫は空ではなく、人気のある商品を手ごろな価格で揃えている。

窓際にはアームなしのソファひとつとテーブルを設置。家具は白っぽい木目で統一し、明るくナチュラルな雰囲気に仕上がっており、照明は明るいシーリング、ムードあるダウンライトや間接照明など、好みに応じてコントロールできるのがいい。引き戸のクローゼット内は広く、バゲージ台もここに設置されている。ハンガーレールの上には棚が設けてあり、限られた空間を有効に活用している。

バスルームはユニットごと交換され、清潔感が大きく向上した。ガラス窓になっているのは、ほんのわずかな一角だが、それでも自然光は十分に入り、閉そく感はかなり軽減される。裏側のモデレートダブルに泊まった時は、なんとも気が滅入る部屋だという印象だったが、こちらは明るくてさっぱりとしており、スペース的にもまだゆとりが感じられていい。結局、限られた空間を最大限活かし、かつ使い勝手がいいのは、典型的なホテルルームレイアウトであるようだ。