リージェンシー
2007.10.07(日)
ハイアットリージェンシー東京 Regency Club Deluxe Room
Hyatt Regency Tokyo
哀-4

「ミシェル・トロワグロ」の店先 この10月1日よりホテル名が変更になり、27年間掲げていたセンチュリーの看板を捨てた。センチュリーは小田急の象徴的名称であり、それを外すことはロマンスカーがロマンスカーでなくなるくらいの大事件である。一体どんな思いで決断したのだろう。その真意はわからないが、代わりにリージェンシーの名前を冠することで、ハイアットとしてのカラーとポジションを一段と明確にするのが狙いだという。

その成果がすぐに現れることはないが、変化はすでに始まっている。一番早かったのは料金の値上げ。これは焦りすぎではなかったか。クオリティ面ではまったくと言っていいほど前進がないのに、名前を変え、室内の備品をちょこちょこっと変えただけで、値上げに対する理解を得ようというのは虫がいい考えだ。

こんな調子では、ぱったりと客足が遠のく日がいつかやってくる。この値段で一冬持つかも疑わしい。客室の実勢価格にも驚いたが、それよりも朝食の値段には卒倒しそうになった。内容は同じなのに、値段だけは40パーセント近くも上昇。これまでが比較的控えめだったと言えないこともないが、あまりにも乱暴な値上げに感じる。

今回利用した客室はリージェンシークラブのクラブデラックスルーム。フロアのコーナーに位置し、一般階のシングルルーム2室分にあたる約50平米の面積のあるタイプだ。入口から内扉までの間に、姿見とクローゼットがあるが、まずこのクローゼットが問題。クローゼットの奥行きは、半分が42センチ、もう半分が27センチと非常に浅く、ハンガーにスーツを掛けると壁や扉に肩が擦れてしまう。これでは長期滞在でなくても不便するだろう。

居室は広々と感じられる。手前にソファ、中央にデスク、一番奥にベッドというレイアウトだ。ソファは3人掛けが1台だけで、アームチェアは添えられていない。脇にはミニバーキャビネットがあり、上にはティーセットとオブジェのようなフォルムのスタンドが載っている。テレビは壁側の台に載っており、26インチと小さめ。DVDプレイヤーを備えている。デスクはステンレス、ガラス、木目を組み合わせたシャープなデザイン。可動式イスとアームチェアを対面して添えた。広さも十分で使い勝手のいいデスクだ。ベッドは200センチ幅。マットレスはやわらかいが、ベッドリネンはハイアットらしく、シワひとつなくビシッとメイキングされている。

全体で8平米近い面積のあるバスルームは、ベイシン、トイレ、シャワーエリア付きバスタブがそれぞれ独立している。ベイシンには一輪挿しが飾られ、ふかふかのタオルやレギュラールームよりも充実したアメニティは用意される。ウェットエリアは約3.5平米で、150×70センチのスリムなバスタブがあるが、バスタブに横たわると頭が壁に当たって不快感がある。また、バスタブの奥の壁側に排水設計がなされておらず、池になりやすい。シャワーはウチワ型で、ラックとバスタブ脇にモルトンブラウンのアメニティを揃えている。一見大理石張りに見えるが、ほとんどの部分は人造石という、案外チープなバスルームである。

全体にモダンなテイストでよくコーディネートされているが、質感が低く、色気がないので、特別な時間を過ごそうという目的には不向きに思う。リージェンシークラブラウンジでのフードサービス内容は、以前と変わっていない。

夕食には「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」を利用した。言わずと知れた名料理人トロワグロ氏の血統を継ぐ店である。この店の前身となる「シュノンソー」時代から、小田急とトロワグロは親密な関係を維持して来たが、ダイニングの改装に当たり、高層階から低層階に引越しをして、店名も現在のものに改めた。店の内装はスーパーポテトが手掛けている。全体に温かみを感じさせるデザインで、最高の料理を楽しむ舞台として完成度の高い空間だ。アプローチからダイニングまで進む間にも、コーナーごとに雰囲気が変化するのが感じられる。

一番奥のテーブルに案内され、ふと天井を見上げると、自然木の梁が渡してある。周囲の雰囲気はリビング風だが、テーブルの上はいたってシンプル。聞こえてくる音楽も軽快を越えて軽薄だ。サービス陣もリラックスしており、フレンドリーな印象。それが度が過ぎて感じられる場面もあった。中には女性の係もいるが、高級レストランでの女性によるサービスはどうも好きになれない。女性は空気に徹し切れないからである。

料理は出だし好調だった。アレンジが効いており、どの皿も斬新さに満ちている。だが、スパイスに彩られたその味わいにはいつしか飽きてしまい、ロンジュ・ド・ヴォーのローストが運ばれてくる頃には、伝統的な味が恋しくなっていた。ザルツブルクのオペラのように、あまりにモダン過ぎるのである。その後、フロマージュが出て、次のデセールが運ばれてくるまでに30分以上。最初から料理のタイミングはあまりよくなかったが、最後になって異常事態に発展したわけだ。

原因が厨房にあるのか、サービス陣の不注意にあるのかはわからない。だが、滞りの責任は常にサービス陣にある。料理の提供が何らかの原因で滞る場合は、サービス陣がテーブルで会話したり、それでも間が持ちそうもないなら正直に詫びるなり、少なくとも客から文句が出る前に対処する必要がある。だが、この店はそれが出来なかった。30分以上の間隔を空けながら、デセールを運んできた係は、無愛想に皿を置き、そのまま立ち去ろうとした。それを引き止めて、何か言うことはないのかと尋ねたが、ポカンとしているだけ。マネジャーを呼び苦情を言うと、素直な詫びが返ってきたが、傷ついた時間の流れを修復するのは不可能である。

 

スッキリとしたデラックスルーム ベッド側からリビングを見る 左の扉は入口へ、右の扉はバスルームへ通じる

ハイアットらしいベッドメイキング クローゼット扉と入口 デスクはガラス製

オブジェっぽいスタンド ティーセット 新しいディレクトリー

4種のグラスが用意されている ベイシン ベイシンのカラン

シャワースペース バスタブ フロント脇に新設されたデスク

新しいサイン 看板も変わった 花壇

スパイスの効いた料理 メインディッシュ デザート

 
ハイアットリージェンシー東京 950303 970823 990911 991113 000618 000725 001102 010212 021028 031110 040225 040923 050305 050416 050513 051202 060423 060508 060521 060807 060927 061020 061102 070102 070305 070505


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