1999.09.11
パフェ
ホテルセンチュリーハイアット Regency Club Room
楽-3

ルームサービスのパフェ

新宿にパークハイアットがオープンしてからというもの、話題も人気もそちらに奪われてしまい、それまで花形だったヒルトンやセンチュリーハイアットは影が薄くなってしまった感がある。ところが実際には、影が薄くなってから競争が激化したことも手伝って、サービス面や設備面において向上した部分も少なくない。

サービスに従事するスタッフの人数はかつての方が遥かに贅沢で、文字どおりパーソナルタッチのサービスが可能だった。現在ではここ新宿のホテルに限らず、あらゆるホテルで人員の削減が進み、もはや従業員の負担が限界に達しているホテルさえあるようだ。また、割引合戦が長引いて、コスト削減やサービス内容の見直しなどが進み、デラックスホテルのあり方が一昔前とは随分と様変わりして来たように思える。新宿にあるヒルトン、センチュリー、京王プラザは、その時代の変化をもっとも色濃く感じさせるホテルだ。

センチュリーハイアットには、季節ごとにオトクな料金があって、今の時期はハイアットグレートディールが手頃で利用しやすい。スーペリアルームが21,000円、デラックスルームが23,000円、リージェンシークラブルームが26,000円。料金的にはビジネスホテルのレートと大差ないが、客室の広さ、設備、サービスは、どれを取ってもビジネスホテルには真似のできないクオリティだ。ドアマンをはじめ、到着から出発までに接した従業員は、みな親切で好感が持てた。24時間のルームサービスやさまざまなビジネスサポート体制も心強く、全体的にバランスの取れた、充実度の高いホテルだという印象を受けた。

リージェンシークラブフロアは、6階から9階に位置しており、9階はトップスイートをはじめとした高級スイートが集まったスイートフロアになっている。9階のみ壁にベロアが張っており、ゴージャスな空間に仕上がっている。6階から8階までのフロアは、片廊下で一方がアトリウムの吹き抜けに面しており、階下のざわめきが心地よく伝わる。見下ろせば、燦然と輝くシャンデリアと大理石のモザイクが目に飛び込んで来る。他のホテルにはない、独特の雰囲気を持った空間だ。

6階にはリージェンシークラブラウンジがあり、朝食やカクテルタイムの他、営業時間内であれば常時喫茶利用が可能だ。クラブルームの天井高は2メートル70センチで、レギュラーフロアに比べ20センチ高くなっている。ベッドは120センチ幅で羽毛布団を採用しており、シーツも肌に心地よく、よくありがちなすえたような臭いがすることもない。落ち着いた雰囲気のインテリアは、ちょっぴりエレガントな雰囲気が漂う。家具類などは設備的な差はないものの、やはりクラブフロアのものの方が一段と立派に見える。

バスルームはオーソドックスな造りだが、レギュラーフロアに比べると、ビデがある分広く造られている。広くなった分は廊下にせり出したカタチ。アメニティは大きな差はなく、どちらも標準的な品揃えだ。シャンプー・リンスはパコラバンヌを使っている。

ユニークだと思ったのは、ルームサービスで注文できるパフェだ。季節のパフェと題して、チョコレート、マロン、フルーツの3種が用意されており、それぞれ1,000円。これらは、ロビー階の「ブーローニュ」で注文しても同じ値段だ。コーヒーは「ブーローニュ」で700円のところ、ルームサービスだと800円になるものの、ひとつ注文しても、気を利かせてカップは2客用意してくれるので、むしろ部屋で楽しんだ方が安くつくようだ。その他にも、思わず注文してしまいたくなるような、楽しいメニューが写真入りで用意されている。

リージェンシークラブルーム リージェンシークラブのバスルーム

1999.09.30
ないない尽くし
ホテルセンチュリーサザンタワー Twin Room
哀-3

新宿駅南口、タイムズスクエアとはJRの線路を挟んだ反対側に建つ小田急サザンタワーの上層部19階から35階までに位置する小田急ホテルセンチュリーサザンタワーは、「リミテッドサービス」をコンセプトに、サービスをとことん絞り込んだ新しいタイプのホテルだ。

徹底した合理化を図り、シティホテルの様相と価格設定をしていながら、ビジネスホテルぎりぎりのサービス内容となっており、評価が大きく分かれるところだろう。マイペースで自分流に過ごせてよいとか、従業員にいちいちまとわりつかれなくてよいといった声を耳にする一方、サービスを省き過ぎていて不便に感じるという意見も多い。感じ方は人それぞれだが、今までにないスタイルとして、話題を呼んでいることは確かだ。そのサービスの実態と、お値打ち感をこの目で確かめてみたいとの好奇心から、一度宿泊してみることにした。

ベルサービスが行われていないことは知っていたが、その代わりにどのようなアイデアでゲストに不便を感じさせないようにしているのかについては知識がなかったので、荷物をどのようにして客室まで運んだらよいかわからず、とりあえず車で1階のエントランス車寄せに車をつけてみた。

係の姿は見当たらない。エントランス内部の様子を見てみようと車から降りるや否や、駐車場入口にいた警備員が駆け寄ってきて、車をすぐにどかすように言われた。ダメ元だと思って、「荷物を降ろしたいんですけれど、係の人はいませんか?」と尋ねてみたところ、「ここはそのようなホテルではありませんから。」との返答だった。

仕方なくその通りにしたのだが、1階エントランスとロビー階にはカートが備えられていることを後から知った。せめて警備員も我々を追い払うだけでなく、どのようにすれば一番合理的かを案内してくれてもよいような気がした。駐車場から1階までの小さなエレベータ、1階からロビー階までの3基のシースルーエレベータを乗り継いで20階のロビーに降り立つと、可能な限り窓を大きく取り、床をフローリングにしたフロントがある。

フロントでチェックイン手続きをすると、カードキーを手渡され、客室番号を頼りに自分で客室を探し当てることになる。客室階へのエレベータは4基あり、比較的スムースに運行している。客室階のエレベータホールはチープな作りで、ワシントンホテルのレベルと大差ない。廊下は、ベージュとオフホワイトを基調とした控えめな雰囲気で、照明の効果が高い。

客室に入ると、カーテンが完全に閉じており、真っ暗だった。カーテンを開けると、眼下に線路を見下ろし、前方に高い建物がないお陰で、眺望が開けておりなかなかの眺めだ。手に取れるほど近く感じる新宿御苑の緑が目を和ませてくれる。31平米、24,000円の客室だと案内されたが、天井が2メートル50センチあるにもかかわらず、31平米あるようには感じない。実測してみたところ28平米しかない。壁の厚さや給湯設備のスペースを考慮に入れてもこの誤差は妙だが、正確なことはわからなかった。

客室のレイアウトはごくありきたりで、ユニークだと言えるのは、ライティングデスクに備えられたライトのカバーの部分を回転させることができ、直接照明にしたり間接照明にしたり、またその中間にしたりと、自在なセットが可能なことと、天井に照度がコントロールできるシーリングライトがあるなど、照明に工夫が凝らされていることくらいだろうか。

ズボンプレッサーが備えられており、音楽チャンネルを含む幾つかの衛星チャンネルが無料で楽しめる他、テレビゲームも用意されている。電話は2回線あるので、通信と通話が同時に可能だ。電話機はナイトテーブル、ライティングデスク両方にあってボイスメール機能を備えている。空調が4管式なのもありがたい。

ベッドは120センチ幅で羽毛風の寝具を採用しており、枕はひとつだけだ。冷蔵庫は空で、ロビー階エレベータホール脇のコンビニエンスストアか、もしくは各階のエレベータホール脇の自販機で好みのものを購入して利用する。ルームサービスはないがランドリーサービスは一応ある。

バスルームはシンプルなユニットだが、スッキリしており使い勝手はよい。アメニティはポーションのものが中心で、タオルは3サイズが各2枚ずつ揃う。トイレは洗浄式。シャワーの水圧は非常に強く申し分ない。このように、ビジネスホテルとしては贅沢な設備があるのだが、シティホテルとしてみた場合、安普請な造りやナイナイ尽くしのサービスなど、不足を感じる部分が少なくない。

これが1室14,000円くらいなら、お値打ちに感じることだろう。外から見上げる機会は頻繁にあるのだが、週末でさえも最近はあまり電気が点いていないようだ。ちょっと強気すぎるのかもしれない。

カーテンが閉まった状態 窓際から入口方向を見る

ベイシンの天板はプラスチック シンプルなアメニティ

「トライベックス」

ランチタイムには未だに長蛇の列ができる「トライベックス」だが、最大の魅力はその眺望だろう。まぁ、絶対的に比較すれば、ホテルレストランとしては手頃な価格設定だが、見る限りではその価値のある料理だとは思えない。この料理でこの値段では、高い店のたぐいである。

とはいえ、せっかく宿泊したので、朝食をとってみることにした。朝6時30分からオープンしているのだが、7時頃に出掛けた。まだ店内はひっそりとしており、数組の先客があるだけだった。手前が喫煙セクション、奥が禁煙セクションと、中央のオープンキッチンを境にして、くっきりと分煙できているのは、ありがたいことだ。この日は運よく禁煙席にある、ビルの先端部分に位置する窓際の席につくことができた。ギザギザになった先端の窓からは、一層パノラミックな景色を楽しむことができる。

朝食ブッフェは1,700円で、洋食が中心だが、和食のアイテムも若干用意されている。全体に品数はあまり豊富ではなく、品質もいまひとつで、よくいえば価格相応かもしれないが、料金に見合うだけ食べるには相当頑張らなくてはならないだろう。サービスはそれなりで大きな不足はないが、ホテルのレストランというよりも、街場のカフェのようなタッチだ。まぁ、こんなもんだろう。

1999.11.13
応接間
ホテルセンチュリーハイアット Deluxe Suite
楽-3

バルコニーからの眺め1

ホテルセンチュリーハイアットの9階は、インペリアルスイート、プレジデンシャルスイート、アンバサダースイート、そして4室のデラックススイートの計7室のみを配置した、スイートフロアになっている。このフロア以外にも、リージェンシークラブフロア内に2室のエグゼクティブスイートがある。

9階はフロア全体が他の階とは異なる構造になっており、一般階では表側、裏側の両方に客室があるのに対し、9階は片側のみが客室で、正面玄関側の客室のある位置が、壁面一杯の大きな窓をもつ客室廊下となっている。その分、9階の客室は廊下から窓までの距離がかなり長く取られ、広い客室ではあるが、ウナギの寝床のような感じがする構造だ。

このホテルの空調は2管式のシステムだが、チェックインを済ませて客室に案内された時点では、大きな窓から燦燦と日が射し込み、すでに暖房に切り替わっていた空調も手伝って、室温がかなり上昇していた。客室のエントランスを開けると、ここだけでシングルルーム分ほどの広さの前室があり、クローゼットとゲスト用のトイレが設置されている。その奥のリビングルームには、大きなソファセットと4名用のダイニングセットがあり、ゆったりとしたスペースを確保してる。壁にはベロア地が張られ、弧を描いた2メートル90センチの天井からは、華やかなシャンデリアがさがるなど、ゴージャズな仕上げを施している。

にもかかわらず、なんとなく垢抜けない感じがするのは、家具の趣味によるものだろう。ソファのファブリックや絨毯など、開業した80年代初頭に立ち戻って考えても古臭いコーディネイトで、まるで昔の応接間のようだ。テレビやミニバーが収納された2台のサイドボードに挟まれた壁の中央部分がアーチ状の鏡張りになっているお陰で、更に鏡の向こうにもう一部屋の空間が広がっているような雰囲気を生み出している。

一般客室より格段に大きな窓はコーナー部分がL字型に回り込んでおり、一方のサイドからはバルコニーに出られるようになっている。ビロードのカーテンは手動だが、大きい割には軽々と動く。窓の外には、都庁をはじめとした高層ビル群と、新宿中央公園の緑を同時に望むことができ、どことなくニューヨークを彷彿とさせ、バルコニーに立てばそのイメージは一層膨らんでゆく。

このリビングルームで不便に感じたことは、ライティングデスクがないうえに、電話機もインターネット接続用に増設されたモジュラージャックも、ソファのサイドテーブルにしかなくダイニングテーブルから遠く、パソコンを利用する環境が整っていないことだ。また、照明もオンオフのみで、照度の調節はできない。

寝室には140センチ幅のベッドが2台入り、リビングと共通のコーディネイトがなされている。窓際にはライティングデスクが置かれているものの、電話回線はない。ベッドはかなりやわらかく、横たわると体が沈み込むほどだった。

寝室の奥はバスルームとドレッシングルームになっている。幅の広いドレッサーや、大きなクローゼットのあるドレッシングルームの更に奥に位置しているバスルームは、青いタイルと壁に設置されたシャンデリア風のライトが明るい雰囲気を醸し出しているが、設備は古さを感じさせる。金色の蛇口やタオル掛けなど、デコラティブで華やかなイメージであるものの、手入れが面倒そうなわりには演出効果は小さい。シャワー、カランともに水圧が低く、壮快なバスタイムを過ごすことは難しい。

トイレの給水もチョロチョロで、一度フラッシュすると、2,3分待たなければ水が溜まらない。ゲスト用のトイレは洗浄式でないが、こちらは洗浄式に交換してある。となりにビデがあるが、洗浄式トイレにしてからは役立たずだろうから、思い切ってシャワーブースでも取り付ける改装工事をしてはどうだろうか。

ラックレートで15万円の客室に付帯するバスルームとしては、かなりわびしいものがある。アメニティはリージェンシークラブの用意に準ずるが、クナイプや男性用化粧品などが加わっている。ターンダウンサービスが行われているがベッドカバーを外すのみで、ゴミ箱を空にすることもなければ、タオルの交換も行わない。全体的に、ハネムーナーやフルムーン向けの設えで、ビジネスには向かないようだ。この設備なら、リージェンシークラブのレギュラールームで十分だと思った。

リビングルームのシッティングコーナー リビングの窓側から入口方向を見る

ベッドルーム バスルーム前室のドレッサー

ダブルベイシン 浅めのバスタブ

アメニティー ユニークなカラン

中国料理「翡翠宮」

ハイアットリージェンシー香港からシェフを招聘しての特別プロモーションが開催されていたので、ランチタイムに利用してみた。この日は宴会場で小田急百貨店の店外催事が行われている関係で、館内は混み合っていた。レストランもまた然りで、午後1時半過ぎに店に直接出向いたときには、満席のため15分以上の待ち時間があると案内を受けたため、席が空き次第電話を入れてもらうことにして部屋で待った。案内通り15分ほどで電話が鳴った。

この店は数年前に改装をし、隣りにあったブッフェレストランのスペースを吸収して、より多くの座席を擁してリニュアルオープンした。改装後は、モダンで都会的なインテリアに生まれ変わったが、自然光の中で見ると安普請に見える。テイストとしては、センチュリーサザンタワーの感じとよく似ているが、皿にプリントされた柄は、「バーミヤン」のものによく似ている。どちらにしても、安っぽいことには変わりがない。

プロモーションのランチコースは、4,000円だった。ホテルの中国料理店としては、標準的な価格設定だと思う。ホテルの中国料理店といえば、オークラの「桃花林」が代表格だが、丁度値段も同程度だ。どんなに混み合っていても終始安定したサービスを提供し、多少待つことがあってもさほどいらつかずに待てるオークラに対し、この店のサービスには大きなムラがあり、従業員の動きにも無駄が多かった。

無駄な動きが多ければ、慌ただしくなるのは必然だ。表情も強ばり、サービスには角が立ってくる。この状態にハマると、連鎖反応のようにサービスが崩れ、たて直すのは大変だ。まず、注文を済ませてから、最初の前菜が運ばれてくるまで20分以上掛かり、その後も料理は滞りがちで間隔が大きく開くことがしばしばだった。

店側の言い訳を聞くと、料理を数卓分まとめてこしらえているので、どうしても仕方がないという。これは、基本姿勢に問題があるように思う。従業員からは、それなりに誠実な謝罪があったが、お客の都合に合わせて調理をできない店にもう用はない。確かに料理はおいしかっただけに残念だ。

Y.K.