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ザ・ブセナテラス Maisonette Ocean View | |
The Busena Terrace | 2010.06.26(土) |
沖縄県名護市 | 怒-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
パラソル マリオットからブセナテラスまでは、車だとわずかな時間で到着する。チェックインタイムまでは時間があることは承知していたが、部屋が出来ていなければランチでも食べればいいと思い、寄り道はせずに直行した。今日からの滞在については、ナハテラスから連絡も入っているだろうから、うまくいけばすぐに部屋に入れるかもしれない。 正面玄関に車を付けて、すぐに雰囲気の違いを感じた。かつてなら、この瞬間に他とは別格のホテルに来たのだと直感したものだ。しかし、すでに覇気は失せ、特別なものを感じさせないホテルに転落した様子。顔見知りのスタッフと出会っても、向こうは半分忘れているのか、サラッとした対応しか見せず、親しみを感じるどころかそっけなくされてガッカリだった。 メインロビーでは、結婚式の真っ最中。いつもはイスとテーブルが並び、ウェルカムドリンクとともにチェックイン手続きが行われるロビー前のテラスも、この時ばかりは入ることもできない。結婚式が終わっても、赤い毛氈は敷いたままで、そこを踏まないようにと係から注意され、遠回りを強いられるというのも感じが悪い。 そんな状態なので、チェックインは奥まったところにある薄暗い場所で、なにか密談でもするようにして行われた。そして係は、「チェックインは14時からなので手続きだけ」という言葉を、何度も何度も繰り返した。客にうんざりされずに同様のことをアピールする方法がいくらでもあるのに、そこに知恵が回らないところが悲しいかな一流になれない理由のひとつだろう。 部屋が出来次第、携帯電話に連絡をよこすように頼み、中国料理店に行って冷麺のランチを。13時半になったところでフロントに戻り、部屋はまだかと急かして、やっとルームキーを手にすることができた。 今回利用したのは、メゾネットルーム。海側6室と裏側7室が、同じ6階にそれぞれ横一列に並んでいる。うち海側の部屋は、部屋番号の数字が大きくなるほど海が見えやすい。逆に数字が小さいほど、目の前に別の棟が迫ってくる。用意されたのは、ちょうどまんなか辺りだった。 室内は上階がリビングとバスルーム、下階がベッドルームになっており、バルコニーは両方の階にある。面積は上下合わせて64平米だ。 エントランスドアは上階にあり、ホワイエはテラコッタ床。コンソールに並んで引き戸のクローゼットがあるが、半分は柱なので、実質的な収納スペースは非常に少ない。 ドア脇のコンソールには、スタンドライトとオーキッドの鉢植えがあり、壁面のミラーに映った花の姿もまた美しい。 上階のリビングはフローリング床。ソファ前のテーブル下にだけマットを敷いてある。天井高は3メートルと高く、天井ではシーリングファンが回っている。入口ドアからまっすぐ進むと下階への階段になっており、特に仕切りなどはないので、子ども連れには相当の注意が必要である。 リビングのシッティングエリアには、石造りのベンチシートとオットマン付きのソファ、ガラスのテーブルがある。石のベンチは中央部分にだけマットを敷き、幾つかのクッションを添えている。両脇に露出した石部分は、バゲージ台代わりにもなる。ガラステーブルはかつて緑色だったが、入口コンソールと共にゴールドに塗り替えられた。 ベンチシートの反対側は、階段のガラス仕切りがあり、その向こうの壁に42インチの液晶テレビが取り付けられている。階段と窓との間には、ミニバーキャビネットがあり、冷蔵庫や湯沸かしポット、ティーセットなどが用意されている。LANの接続口は上階にしかない。 バルコニーにはふたつのイスと丸テーブルが置かれ、くつろぐのに十分な広さがある。手すりの向こうには、ホテルプール、植栽、ビーチ、海、空など、海辺のリゾートに来たなら眺めたいと思うものすべてを見ることができる。 だが、混雑している時は、隣室の気配や、プールサイドから上がってくる歓声などが、安らぎを遮ることもあるかもしれない。最高級リゾートならば、満室でも混雑を感じさせない構造と工夫が徹底しているが、ここにそれは期待できないので、解放感を満喫するには、可能な限り客の少ない時期を選ぶ方がいい。 さて、急な階段を下りて下階に行くと、寝室になっている。天井高は330センチで、上階よりも高い。そして、上階と同じように、天井にシーリングファンがある。空調の効き具合に違いがあるのか、あるいは構造上の影響なのか、下は寒いが上は暑い。 ベッドは120センチ幅が2台、ハリウッドスタイルで並び、ベッドの奥にはカウンターデスクがある。せっかくのデスクだが、中央を26インチのテレビが堂々と占拠し、添えられたイスは隅っこに追いやられ、デスクの役はほとんど果たせていない。 また、階段の下にはクローゼットと2段の引き出しがある。上階よりは収納力があるとはいえ、重い荷物を細い階段から運ぶのは容易ではない。その観点からも、上階に広い収納を設けるべきだった。 ベッドの正面に見えるのは階段。すなわち階段ビューのベッドである。脇見をすれば、バルコニー越しに植栽と空が見える。ベッドと窓の間には、上階と同じオットマン付きのソファがある。下階のバルコニーにも、上階と同様のイステーブルを設置している。 バスルームは上階にあり、基本的な造りはデラックスナチュラルのものと同じ。四角い空間に、バスタブ、シャワーブース、ベイシン、トイレが設置されており、下半分はタイル、上半分は塗り壁だ。 ベイシンのある面は、横幅いっぱいのミラーを設けてもいいような感じだが、白い壁面を大きく残している。ミラーの脇には派手目の照明器具をシンメトリーに取りつけている。 石張りのベイシンには高いスツールを添えてあり、ドレッサーとしても使える。ただ、これだけの面積がありながら、トイレを個室にしなかったのは感心しない。しかも、バスタブ脇の窓にはルーバーはなく、目隠しするにはリビング側のブラインドを下ろすしかない。 バスアメニティはロクシタンを中心に、オリジナルの月桃ソープや保湿ローション、入浴剤などが揃う。タオルは3サイズが2枚ずつ。このタイプの部屋にはバスローブはなく、プール用にはガウンとビーチバッグが用意されている。 さて、せっかく好天に恵まれたので、早速プールサイドへと繰り出すことにした。ホテルの建物も、日差しを浴びて眩しく輝いている。段差のある動的な構造と、傾斜のある瓦屋根がダイナミックな外観を生み出しており、スケール感たっぷりだ。 プールは2段に分かれており、基本的に下段がファミリー用、上段は静けさを求める大人用としているが、その区別はあまり意識されてはいない。だが、子どもたちは小さいながらもスリルのあるウォータースライダーに夢中。その終着点は滝を配したジャングル風の小さなプールで、どうも子どもはそこが好きらしい。 そんなわけで、上段のプールは比較的静かだった。プールサイドには散策路が設けられ、そこを抜ければビーチに出ることも可能。まだビーチにも人は少なく、ゆっくりのんびり寝転がって過ごすもよし、アクティブにマリンスポーツ三昧を楽しむもよし、思い通りのプランが実現できる。 だが、ビーチの遊泳区域はごく限られてる上に、ホテル客室から出向くには少々遠い。ビーチハウスがその場所にあって、なおかつ海中にリーフや岩場がなく安全だというのが理由のようだが、せっかくホテルの目の前も大がかりな工事までしてビーチにしたのに、そこで泳げないとはバカバカしい。 かくして、人のいない静かな砂浜が保たれているわけだが、国外ならビーチ全体が余裕で遊泳可能だろうと思うと、神経質な規制に疑問を感じずにはいられない。 神経質といえば、プールサイドのビーチパラソルの扱いにも腹が立った。ちょうど陽が差し、寝転がるのに好都合だというのに、プールサイドのデッキチェアには誰もいないのである。なぜかというと、あまりに日差しが強く、せいぜい10分程度しかいられないのだ。 パラソルを立ててくれればいいのだが、そのパラソルは後ろの塀に閉じたまま寝せてある。係に開いてくれと頼んでも、風が強いため、万が一、パラソルが飛べば怪我につながるとの理由で開けないのだとか。 グラスボートもふつうに運行しているし、ビーチを見ればパラソル満開なのにである。それよりは水ぶくれにでもなったら、どうしてくれるんだと言いたくなるではないか。 そもそも、パラソルが飛んで人を傷つける可能性など、限りなくゼロに近い程度の風でしかない。本当に風で飛ぶことを心配しているのなら、さっさとより頑丈なものを導入すべきである。 しばらくして通り雨が降り出すと、今度はパラソルを広げ始めた。もう日は出ていないし、スコールの中で泳ぐような人は、雨など気にしないというのに。まったくバカじゃなかろか。 雨が上がり、また暖かさが戻ってきた。プールサイドには、飲みものや軽食を扱う店があり、頼めばデッキチェアまで運んでくれる。せめて南国気分でもと思い、トロピカルカクテルとココナツのアイスクリームを注文した。 とにかく、このホテルは宿泊料金が高い。アカプルコやボラボラのヴィラやスイートに泊まれるような値段を取っておきながら、ろくなサービスがないのだから困ったものだ。この料金なら、プールサイドでは恭しくタオルを敷き、ミネラルウォーターや冷たいおしぼりを出し、サングラス磨きやフルーツサービスくらいは無料で実施してもらいたい。 なのに実態は、係にタオルをくれと言っても、はるかあさっての方にあるアクティビティセンターまで取りに行けとあしらわれる始末。プールサイドのスタッフの質は、せいぜい市民プールがお似合いの程度で、高級ホテルにふさわしいトレーニングを受けた者はいない。こんな調子だから、高級リゾートの水準を知る外国人には見向きもされないのである。 こうなったら、サービスとは無縁の過ごし方を考えなければならない。そこで、プールはやめて、ビーチの遊泳区域外を散策することにした。 砂浜から振り返るホテルの外観は、青空によく映えている。手前の緑もまた鮮やかで、白い砂浜とのコントラストが美しい。 海を見れば、マリンスポーツを楽しむ人たちの笑顔がはじけている。時折、転落する人もいたりして、なかなかスリルがありそうだ。 敷地内の移動には、循環バスを利用できる。ビーチに行く際にもこれに乗ればいいのだが、歩く人の方が多いようだった。 歩けば、敷地内に多数ある花々を立ち止まって見つめることもできる。岬の方まで行くと、波間に光る鮮やかな熱帯魚の姿も見られ、穏やかなビーチとは一味違った雰囲気が楽しめる。 夕方から行われるプールサイドでのサクソフォン演奏は、今も継続されている。しかし、初代のプレイヤーは体調を崩して降板したと聞いた。現在は、複数のプレイヤーが交代で出演しているようだ。 夜になると、プールや木々のライトアップが幻想的だ。遊泳は19時までと、マリオットに比べると早じまい。それなのに、ルールを破ってプールに飛び込む人が後を絶たない。 2泊の間、夕食にはイタリアンレストランと、日本料理店を利用した。イタリアンレストラン「チュララ」は、大きなバニアンツリーが目印の、バニアンビレッジにある。正面玄関から徒歩で数分離れているが、夕涼みがてら歩くにはちょうどいい。 1回分の夕食がプランに含まれていたので、そのミールクーポンを使ったのだが、料理はランチセットかと思うほどに、とても貧弱だった。これじゃ気が滅入ると思い、アラカルトで料理を追加したところ、圧倒的に美味しいものが出てきた。 食券の客をバカにするつもりはないだろうが、それでひどいものをだしていたら、客を失うだけではないだろうか。つまらないセットをプランと抱き合わせるより、ルームクレジット扱いにして、好きなものを食べられるようにしてもらいたい。 2泊目の日本料理「真南風」は、期待以上の味だった。以前利用した頃よりも格段に美味しくなった気がする。ホール客席は、手前に子ども連れ、奥におとなのみと、うまくゾーンを分けていた。しかし、サービスは滞り気味だった。というのは、明らかに人員不足。 テーブルを担当した女性は、非常に優秀で、目配りもよくできている。だが、会席料理は出し下げのタイミングが多いし、鍋やらしゃぶしゃぶといった手間のかかるものにつかまったら、他には手が伸ばせなくなる。なのに、彼女はひとりで6卓を持たされていた。いくらなんでも無理。他に暇そうな係がいたので手伝ったらどうかと口出ししたが、はぁ?という感じだった。 さて、朝はまた、散策すれば新しい発見が次々と待ちかまえている時間だ。ホテルの前にはこの時期に一晩だけ咲いて朝には散るという「サガリバナ」があり、月食の夜には軽やかな花が房のように下がって幻想的な表情を見せていた。そして、翌朝には幹の下に無数の花が落ちており、それもまたハッとする美しさだった。 プルメリアには、さまざまな色や大きなものがあり、それらを愛でて歩くのも楽しいものだ。朝は香りが一段と甘く感じられる。 通り雨に濡れるローゼルも可憐な姿を見せてくれるので、ついつい高いところを凝視しながら歩いてしまうのだが、段差に躓いて転ばないように気を付けなければならない。 散策の後の朝食は、また一層爽やかである。1回目はファインダイニング「ファヌアン」を訪れた。ここの朝食が、最もブセナの価値を感じさせてくれるので、かつてから気に入っていたのだが、今回はガッカリすることも少なくなかった。 入店は一番乗り。テラスのコーナーにある心地よいテーブルを確保するためである。それは叶ったが、店内のテーブルからでも、完全に解放した窓を通して、海辺の空気を感じることができる。 テラスのコーナー席からだと、上階のプールがちょうど同じくらいの高さに見え、木々の緑も間近に迫り、プールサイドで食事をしているような気分が味わえる。 だが、サービスは最初からガサツで下品な印象だった。スタッフが外国人だからかもしれないが、折り目正しさがまったく感じられないのにはガッカリ。 料理はサラダやヨーグルト、パン、コーヒー、ジュース、卵料理などが、間隔を置いて運ばれてくる。だが、出すだけ出すと、あとは放ったらかしという感じで、タイミングもなにもありゃしない。 マフィンの上にポーチドエッグやサーモン、ハムの載ったものを頼んだのだが、これも冷めきって美味しくなかった。 もう少しパンとコーヒーが欲しいと思いつつも、係が誰も近くを通らないし、気を引こうとしてもこちらを見ることもない。諦めて帰ろうとしたところに、「パンをもう少しお持ちしましょうか」だって。 翌日は夕食が好印象だった日本料理「真南風」の和朝食を。ここにも、池に面したテラス席が新設され、そこが空いていたので希望した。ところが、「まだテーブルが濡れているので」と露骨に嫌な顔。心で何を思おうとも、表情にだしてはまずいだろう。構わずテラスに出てみると、テーブルは濡れてなどいなかった。 和朝食の膳は、丁寧に盛りつけられた料理が並び、味もなかなかよかった。最初につまならい言い訳をしなければ、もっと好印象だっただけに残念。 これはどのレストランでも感じたことだが、いったいマネジャーは何をしているのだろう。少なくとも、積極的に客席に出て、状況を把握したり、フォローをしているようには見受けられない。まったく姿を見ないこともあるので、責任者はそもそも存在しないのかもしれない。 だが、店のサービス一切を任せられるほど、スタッフたちは手慣れてはいない。むしろアドバイスや指導を必要としており、適切な教育を施せばもっと実力を発揮するはずである。アルバイトを多用するのなら、その管理をもっと厳格に執り行ってもらいたいものだ。 帰り路、那覇でナハテラスに立ち寄った。「おかえりなさいませ」と満面の笑みで迎えられ、心地よい時間を過ごした。まさに「口直し」。同じ名を冠しているが、サービスの品質は天と地の差がある。 |
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