この辺りのホテルは、周囲にオフィスが多いこともあって、日曜日が一番静かだ。ここ第一ホテルアネックスは、平日は多くのビジネスマンで賑わっているが、週末にカップルでお泊まりを楽しむには色香がないこともあって、土曜日から月曜の朝にかけては、正月やお盆のようにひっそりとした雰囲気の中、のんびりと過ごせる穴場でもある。ただし、客室は狭いし、館内施設も限られているので、ホテルステイをメインにすえてリフレッシュするには物足りない。ただひたすら静かな眠りを求めてひとり駆け込む瞑想の場所だ。
窓からの眺めはビルまたビル。ホテル自体その硬い岩の谷間にあって、妙にやわらかいベッドは、ヘブンリーベッドとは別の意味で雲の上にいるような浮遊感をもたらす。老朽化を隠し切れない内装や、壁の染み、家具の傷などが、人生を重ねることで自分の身に刻まれてゆく数々の汚点とも重なり、おまえもそうかと、無意味な共感を覚えたりもする。アネックスはこの先もっとボロボロになったとしても、何か断ち切れないものを醸してゆくような気がする。
毎回思うがサービスは非常によい。至れり尽くせりというのではないが、ミニマムながらもスピードがあり、そのわずかな接点に必要十分なホスピタリティを盛り込んでいるところが見事だ。
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