夜が更た頃、第一ホテルアネックスの周辺には銀座で客を拾おうと出番を待つタクシーの長い列ができ、まるで無法地帯のような混乱が毎夜のように繰り返されている。この夜も車で近くまで来たが、ホテルへアプローチするには、タクシーの群れの中に入るしかない。飛んで火にいる夏の虫だ。結局、大渋滞に巻き込まれて、遅い到着が更に遅くなり、くたくたに疲れてしまった。毎晩こんな状態では、ホテルの商売にも影響があるだろう。なんとも気の毒な話だ。 久しぶりに利用したアネックスだが、滞在時間は短かった。コンパクトにまとまった室内を見渡して、時には狭い部屋も悪くないなと思った。インテリアは庁舎の応接室やコンサートホールの楽屋を思わせるようなオーソドックスなものだが、いずれもしっかりとした品物なので、軽々しい印象はない。しかし、あとからとって付けたライティングデスクは、他に類を見ない狭さなので、滞在中に作業をする場合は、ホテル3階にあるラウンジか、外の店舗を利用したほうがはかどる。
3階のラウンジは、もともと宿泊者専用だった。エグゼクティブラウンジのように、飲み物などが無料で利用できるのかと思いきやすべて有料で、何のために宿泊者専用にしているのか不思議に思っていたが、今では誰でも利用できる単なるバーラウンジになった。ユニークなコンセプトでスタートしたホテルだったが、今ではすっかり普通のビジネスホテルになってしまったのは少々残念だ。室内の静けさと軽い布団はなかなか快適だが、眠る以外にはあまり利用価値のないホテルなのかもしれない。
|