2002年7月30日
ホテルオークラ Standard Room 楽-4 風格とくつろぎのロビー ホテルオークラ本館は10階建てで、11階にはスターライトとさざんかへの連絡通路もあるが、正面玄関とメインロビーは5階に位置している。それは、大倉集古館側が高台になっており、ちょうど5階が集古館側の地上の高さとなるためで、もちろん正面玄関が空中に浮かんでいるわけではない。そして、確かに都合10層のフロアを持っているが、建築法上は、5階が1階で、地上6階地下4階建てということになっているそうだ。それは、本館建築当時は、まだこの地域に建物の高さ制限があり、10階建ての建物を建てることができなかったため、形式上そのようにしたのだという。
最近、斜面に建設されるマンションが地下扱いで階数を稼ぎ、地域住民との衝突もあるようだが、それとおなじ手法である。もちろん、3階や4階の客室も決して地中に埋もれているわけではなく、きちんと窓もあって、3階なら3階、4階なら4階の実感がある。また、地上に接した正面玄関から客室棟の先端までのわずかな距離の間にも、相当の高低差があり、オークラの敷地の隅まで行くには、1階の宴会玄関から更に坂を下らなければならないわけで、崖のような立地に建っているホテルだ。
正面玄関を入ったところにあるメインロビーは2層吹き抜けになっており、日本の伝統美に彩られた空間には、天井から下がるランタンの照明が映えている。行灯を思わせるランプや、空間をたっぷりとった渋い色調のソファやテーブル、正面の障子などが巧みに配置され、これほど品格のあるロビーはほかにない。吹き抜けの中二階になった部分は6階に当たるが、ちょうどロビーを囲んで見下ろすように、ベランダ状のメザニンが設けられ、そこにも数多くのソファが置かれて自由にくつろげるようになっている。
また、奥の方にはブースに分かれたライティングデスクが用意されており、パブリックスペース内にありながらも、周囲を気にすることなく、手紙を書いたり、書類を整理したりといった作業に活用できるのはうれしい。デスクにはハガキやレターセットも用意され、ステイゲストに限らず、だれでも自由に利用できる。パブリックスペースに自由に座れる場所を設けず、まったくくつろげないホテルが多くなってしまった今日、これほどまでに開放感があって上質なスペースはとても貴重な存在だ。
外れた立地なので、便利な場所にあるホテルのように、いろいろなゲストが大勢押し寄せることもなく、このようなスタイルが続けられるのかもしれない。清掃状態も実にすばらしく、いつも乱れのない空気が流れているのは、見事のひとことだ。人の多くない時間帯を選んで、広々としたソファに腰掛けて、読みかけの本などめくってみるのもいいだろう。
[ホテルオークラ] 960915 981114 990807 990814 990906 991018 991030 000415 000503 000609 011103 011216 020601 020711 020724
Y.K.