グランドプリンスホテル高輪 Tower View Double Room
Grand Prince Hotel Takanawa
2008.02.25(月)
東京都港区
喜-2

老舗らしい落ち着きのロビー
 
近くて遠い高輪の宿 遅くチェックインし、翌日は早めに出発するというショートステイのスケジュールがあらかじめ決まっていたので、滞在時間が限定されているプランが好都合だった。フルタイムステイに比べて割引率が高く、場合によってはビジネスホテルよりもぐんと割安で利用できることもある。

今回も、手ごろな料金につられて予約をし、こりゃ賢い買い物をしたものだと自画自賛したのもつかの間、品川駅からホテルまで続く緩やかな坂をえっちらおっちらと進むに連れて、やっぱりパシフィックにすればよかったなどと悔やみ始めていた。タクシーを使うには近すぎるし、シャトルバスは滅多に運行していないのだが、歩くにしては少々遠いのだ。

これが日中ならば、都心にありながら緑豊かな環境の中を、「この木何の木気になる木」みたいな感じで、つぼみをつけた樹木を見上げつつ歩くのも気分がいいだろう。しかし、夜ともなればまだ冷たい風が身に凍みる。昼間見事に晴れていたからなおのことだ。

いつもなら、さくらタワーの脇から庭園を抜けてロビーに入るのだが、現在は庭園が工事中のため、車と同じように道路を通って大きく回りこまなければならず、これが一層遠さを感じさせた。やっと貴賓館の入り口が見えたが、ホテルロビーのエントランスはまだ先。わずかな距離でしかないはずが、はるかかなたにかすんで見えるようであった。

これしきの距離が苦痛に感じられるのは、リサイタルに向けた連日の稽古のためである。「スーパーストイック」と異名を取る我が練習法は、1秒の無駄も許さず、動き出したら止まらない列車のように、決められた時間になるまでひたすら鍵盤を追うというスタイルなので、およそ8時間半の稽古が終わった直後は、大抵放心状態である。ロビーに到着した時点でも、まだひどく疲れた顔をしていたことだろう。

だが、係から「どうかなさいましたか?」と声を掛けられることはなく、「ご宿泊ですか?」とフツウに出迎えられた。昨年新装になったロビーは、老舗ホテルらしい落ち着きをベースに、新しい時代の感覚にもマッチするよう内装に工夫が見られる。フロントは光るカウンターが印象的で、係も十分に配置され、適度な緊張感が漂っており、老舗ホテルらしい雰囲気を醸している。

最近はホテルサービスがどんどんフランクになり、親しみというより馴れ馴れしさを感じることも少なくないが、このホテルのように節度のあるほどよい距離感というのは、客との信頼や安心感を築く上でも有効だと思われる。最初っから調子だけがいいような奴を相手にすると後から痛い目にあうのは、巷もホテルも同じだ。

チェックインは丁寧かつスムーズに行われたが、プランで限定されているチェックアウトタイムの確認が省かれたのはあまりよろしくない。プラン内容をきちんと把握している客ばかりとは限らないし、カードキー入れに記された正午チェックアウトの文言を見て、その気になってしまう客もいるだろうから、きちんと確認すべきだった。

ちょうどベルが出払っていたので、案内を辞退して自ら客室へ。用意された部屋は比較的高層階だったが、エレベータホールの真裏という位置だった。こりゃまいった。一晩中エレベータの作動音に悩まされるかもしれない。なにしろ、壁の向こうにはエレベータがひっきりなしに昇降しているのだから。

だが、不思議なことに、その作動音はまったく気にならなかった。壁が分厚いのか、エレベータが静穏なのか。まあ、いずれにしても部屋が静かなのは大変結構。今回の部屋はタワービューダブル。その名の通り東京タワーがよく見えるが、それほど近いわけではないので、迫力ある姿を期待するとがっかりするかもしれない。

面積は21平米。改装前はシングルルームだったものを、160×203センチベッドを導入して、ダブルルームに改めた。天井高が245センチと低いこともあり、コンパクトな空間にはそれ相応の圧迫感があるが、設備はいろいろと揃っている。

もともとあったデスクユニットはドレッサーとして使うようになっており、ベッドと窓の間に新たにビジネスデスクを導入。広いテーブル面の他に、窓台にもあれこれと並べることができ、作業のしやすいデスクである。キャスター付き椅子を添え、電話機もデスク上に備えている。

テレビは液晶だが、23インチと小型。LANは有料だ。ベッドは見た目には存在感が大きいけれど、実際の寝心地はいまひとつ。その原因は、マットレスが薄い上に古くなってバネが緩んでいることや、シーツの粗さにある。バスルームは200×150センチのタイル張りユニット。アメニティは高層階仕様で、アシュフォード&ホールが用意されている。

最初は全体的に窮屈な印象を受けたが、実際に過ごしてみると、狭いながらにバランスがよく、居心地は悪くない。使い込まれた家具の渋い存在感と、ベッドからも近い窓が、独特の雰囲気を生んでいる。こうなると、イマイチなベッドの寝心地が惜しい。

ロビー階には充実したビジネスコーナーがあり、無料で使えるノートPCの他、有料だがコピー機なども設置されている。かつてティーサロンだったところは「高輪ゲストサロン」になった。それはいったい何なのか尋ねたところ「婚礼の打ち合わせ場所です」との返事。なんだ、面白くない。

現在は庭園が改装中で、散策しても殺風景だし寒いしでいいことがない。春には整備されて一段とグレードアップした庭園と、コーヒーショップがオープンするとのこと。意外かもしれないが、このホテルがサービス的にも赤丸急上昇となる可能性もあるような予感。

 
コンパクトな室内 窓には遠く東京タワーを望む テレビの脇には元デスクが残されている

新しいワークデスク 室内奥から入口を見る ミニバーはドアの脇

タイル張りのバスルーム やや暗いが居心地は悪くない アメニティも充実

1階のビジネスコーナー コピー機やプリンタもある 高輪サロン

ロビーには木目のグランドピアノがある 広々したフロントカウンター前 ロビー越しに光るフロントカウンターを見る

庭園を望むラウンジ 庭園は工事中 庭園に咲く花

 グランドプリンスホテル高輪(公式サイト)
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