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ホテルオークラ神戸 Deluxe Corner Room | |
Hotel Okura Kobe | 2010.02.22(月) |
神戸市中央区 | 喜-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
品格とゆとりのオークラ 国道2号線のメリケン波止場前交差点を曲がったとたん、急に時空の彼方へと飛ばされたような感覚に包まれた。20年以上前、ホテルオークラ神戸を我が家のように使っていた時代。それは、怖いものなどないと自分に言い聞かせながら、たとえようもない不安と闘っていた時代でもあった。 明日のことなど誰にもわからない。だから今日を生きる。そんなことを本気で考えていた若さが懐かしいと同時に、今もさほど変わっちゃいないと、自分を笑った。 交差点を曲がれば、水面に撥ね飛んでいるような巨大な魚のオブジェが見える。オークラはもうすぐそこだ。ホテルの門を通り、ゆるやかな坂を上がる。今は水が止められているが、かつては壮麗な滝が流れ落ち、車の中からでもその飛沫を聞くことが出来た。 曲がり具合にまで気品が漂う坂を上がりきると、まっすぐな長い車寄せのプラットホームが見える。そこには淡い色の制服をまとったドアマンが立ち、近寄る車に敬意を払いながら迎えている。その立ち姿もまた美しい。 正面玄関を入り、フロントデスクへ。チェックインは丁寧かつ明朗に行われ、必要なことはすべて1分以内に終了した。無駄が一切ない中に、十分な説明も含まれているのはたいしたものである。 ロビーはいつ見ても凛とした表情を湛えている。十分なゆとりをもってレイアウトされた多数のイスとテーブル。落ち着いた品格を醸す色彩感。そこにいつまででもとどまっていたくなるような空間だ。 客室へは中国人のベルガールが案内してくれた。快活でチャーミングな彼女は、北京から来たという。最後には中国語で会話をし、ささやかな異国情緒を味わった。 用意されたのは10階のコーナールーム。未改装の低層階ではあまり好条件とは言えないが、なぜかオークラ神戸では、低層階の方が心地よく感じる。その理由はまったくもってわからない。 室内のインテリアは開業当時の懐かしさそのまま。それも過ぎた日々に思いを馳せる旅路には都合がいい。20年以上経つが、家具は今でも立派に現役を務めているし、この先20年でも十分に使えそう。それだけ最初からよいものを導入しているということだ。 居室はほぼ真四角。ありきたりなレイアウトではないので、ホテルステイとしては新鮮さに満ちている。入口ドアと居室の間には短いながらL字状の廊下があるので、居室のプライバシーは通常タイプの部屋よりも保たれる。 窓はコーナー部分にひとつ設けられている他は、非常出口付近にちょっとした明り取り程度の曇りガラスがあるだけで、全体的に窓の比率が低いと感じるかもしれない。その暗さを補っているのが、天井に設置された蛍光灯の間接照明だ。日中はある程度効果的だが、夜にはかえって明るすぎるので、消してしまう方がいい。 ベッドはハリウッドツインスタイルで、ドレープと同じファブリックの天蓋が特徴的だ。寝具はカバーと一体となっている羽毛布団。シーツの肌触りは悪くないが、マットレスは古い印象があった。ナイトテーブルは両脇にあり、それぞれに調光可能なナイトランプが載っている。ナイトパネルでは、カーテンの開閉、空調、BGMのコントロールも可能だ。 一番のお気に入りは、2名掛けのソファ。壁のくぼみにうまくフィットし、両脇にサイドテーブルとスタンドを従え、前には大きめのテーブルを置いてある。このスペースの特別なくつろぎ感は、ホテルを泊まり歩いている者でなければピンとこないかもしれない。 デスクは大きくしっかりとした造りで、トップも広い。壁面を向いているが、目の前の大きなミラーにより、閉そく感はほとんどなかった。脇のテレビは2004年製の21型ブラウン管テレビで、DVDプレイヤーとVHSプレイヤーを内蔵している。 家具は大切に扱われてる印象だが、デスクイスの背もたれに大きな染みがあり、これがオークラのブランドイメージを大きく引き下げた。部屋の隅々までオークラテイストが満ちているだけに、こうした一点の染みが甚だ残念である。 また、スカスカのミニボトル入れも停滞というより斜陽を感じさせてしまう。ミニボトルが2本だけなのは構わないが、空きスペースのないよう、仕切りを取り払うなどの工夫をして欲しい。 高層階海側ならメリケンパークの向こうに広がる海が見え、山側からは山々の手前に流れるマグマのように広がる市街の夜景を眺められるが、低層階のこの部屋からは海面も宝石のような夜景も見ることはできない。目の前には高速道があり、ハイスピードで駆け抜ける車の音が室内まで聞こえる。だが、神戸の街の中にいるという実感は確かにあった。 バスルームは大理石仕上げ。蛍光灯の照明が白々しいが、同時にそれが清潔感を強調している。ベイシンはダブルで、大きなミラーが全体をより広く見せている。 バスタブはロングサイズ。一部はベイシンとの仕切りに隠れるが、湯に浸かった時に洞窟風呂にでも入っているような、独特の抱擁感があって面白い。カランはサーモスタット付きで、シャワーは強力だ。シャワーブースも独立しているが、バスタブにはシャワーカーテンが設けられている。 トイレはシャワーブースの前にある。その上に照明がないので、やや薄暗い印象だ。シャワーブースの仕切りは、オークラならではの軽量サッシ。やや安普請だが、仕切りの役は十分に果たしている。欲を言えば、透明にして解放感を持たせて欲しかった。 シャワーブース内部はシンプルな造りになっている。こちらもサーモスタット付きカランを備え、ハンドシャワーがあるのみ。シャワー水圧は極めて強力だった。 バスアメニティはオークラ神戸オリジナルのパッケージだ。東京のものよりも品質が劣るが、品揃えは悪くない。シャンプー類はスーパーマイルド。液体のボディソープはない。開業当時は箱に入ったランバンのシャンプー&コンディショナーが用意されていたが、その頃が懐かしい。タオルは3サイズが用意される他、薄いボディウォッシュクロスもあるが、バスローブはなかった。 滞在中の食事はルームサービスを利用することが多かった。メニューが豊富に揃い、おまけに安い。「カメリア」にある料理はほとんど注文することができ、店の値段に100~200円が加算される程度と良心的だ。 朝食は毎日「カメリア」を利用した。ブッフェ形式だが、料理の種類が豊富な上、それぞれの料理にコメントや説明が添えられており、楽しく選ぶことができる。しかも、どれも美味しそうで、実際に美味しかった。サービスは自然体で嫌味がなく、ゆとりが感じられる。 ビジネスに便利な立地と言えないが、周辺には港ならではの風景と安らぎとロマンが広がっており、ひと足伸ばす価値は十分にある。いつもより早起きをして、周囲を歩いてから仕事に繰り出せば、一層溌溂と張り切れるに違いない。 |
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