1996.11.24
ハーバーライトに煙る街
ホテルオークラ神戸 Deluxe Room
喜-2

神戸のホテルでは、夜景の美しい山側の部屋を希望することが多いが、ホテルオークラの場合は海側の方が好きだ。ホテルのすぐ下がメリケンパークになっており、整備された新しい街並みを見下ろせる一方、少し遠くに目をやると、コンテナヤードやクレーンなど、港町らしい景観が広がり、夕暮れや早朝にはハーバーライトが美しい。以前利用した山側の客室は繁華街が近すぎて、ネオンサインが眩しく、遠くの夜景を楽しむには明るすぎる印象があった。

平山郁夫画伯の作品に思わず目を奪われるロビーの渋い雰囲気に比べて、客室は明るい色調のモダンなインテリアだ。デビッド・ヒックス氏のデザインによる客室は、白い木肌の家具とチェック柄のベッドカバーが印象的で、完璧な清掃状態とあいまって、清潔感が漂う。その清潔感は大理石張りのバスルームにもっとも生きており、真っ白なバスタブやタオル類がまぶしいくらいだ。デラックスルームのバスはゆったりとした広さがあるが、シャワーブースはない。

アメニティは以前よりも品質が落ちたものの、大きな石鹸やしっかりした歯ブラシなどが用意されている。シャンプーは以前、ランバンの非常に香りのよい高品質なものを用意してあったのだが、今では資生堂のリンスインシャンプーになってしまった。

ベッドルーム、バスルームともに、照明の一部に蛍光燈が採用されており、十分な明るさが確保されるが、夜になると少し白々した感じが気にならないでもない。ルームサービスは、なかなかの充実ぶりで、料理の写真が数多く取りいれられており、思わずなにか注文したくなる魅力的なメニューだ。しかも、その写真通りのものが実際に運ばれてくるので、期待を裏切られることがない。当たり前のことかもしれないが、ホテルによってはイメージと随分違うものが運ばれてきてガッカリするケースもあるので、これはありがたく感じる。

また、このホテルでいつも心地よく感じるのが、オペレーターの対応だ。電話の取り次ぎに関する複雑なリクエストにも、正確にしかも快く応えてくれるし、ありがとうと声を掛けた時の「いいえ」というさりげない言い方がとても洗練されている。全般にサービスは素晴らしく、とびぬけて感動的なことに出会うことはない代わりに、いつでも安定したサービスを受けることができる。

「レストランカメリア」

朝食にブッフェを利用した。白髪まじりで見るからにベテランという感じのオークラマンに明るく出迎えられて、席まで案内されるだけでも、ここは高級ホテルなんだという実感が得られる。メニューを眺めればその実感は確信に変わる。

非常にバラエティ豊かな品揃えで、しかも健康に留意したメニューがしっかり用意されている。メニューを一通り眺めてから、ブッフェ台に興味をそそられブッフェを注文した。朝食らしくないような品物は並んでいないので無駄はないにもかかわらず、極めて充実した内容のブッフェだった。シリアルだけでもかなりの種類が用意されており、朝はこれと決めている外国人のお客さんを十分に知り尽くしているオークラならではだと感心した。フルーツの種類も実に豊富で、とてもすべての種類を味わってみることなどできない。

サービスは快適で、全員が朝に相応しい爽やかでやさしい表情でサービスに当たっているから、こちらも気分がよくなってくる。空いた皿を下げるタイミングもよく心得ており、テーブルに対する目配りが足りないということはないようだ。「レストランカメリア」は、神戸ではもちろん、日本でもっとも充実し、気分よく朝食を楽しめる店のひとつだ。

Y.K.