ゴールデンウィーク中の日曜日。いつもならビジネスの人々で賑わう銀座の裏路地には、ほとんど人影がなかった。ホテルもさぞや閑散としているかと思いきや、多数のベルボーイが元気に出迎え、館内には活気があった。3階で行われていたブライダルフェアは盛り上がりに欠けているようだが、2階の披露宴会場では、まさに新郎が友人に胴上げされていた。
チェックインはスムーズだった。今回利用した客室はエグゼクティブスイートフロアに5室あるローズスイート。位置によって微妙に面積が違うらしく、43平米から50平米と差があるが、いずれもスタンダードルームほぼ2室分を割いている。室内はワンルームタイプなのだが、パーテーションの役割も果たす大型の収納家具が中央にどっしりと置かれ、部屋を二分している。
ホワイエ部分には姿見とコート掛け用の小さなクローゼットだけがある。リビングには壁を向いたデスク、ガラスのラウンドテーブルを囲んだソファとアームチェア、スタンドというシンプルな設えだ。家具はいずれも存在感のあるものだが、床スペースには余裕が残る。中央の収納家具は、リビング側から見ると照明付のミニバーやテレビ台になっており、旧型ながらオーディオ設備もある。
ベッドスペースには、オットマン付きのキングサイズベッドが一台。ベッドスプレッドを外すとトップシーツ仕上げの毛布を使っているのはカメリアスイート同様だが、へたりきったマットレスの寝心地と共に、もう少し工夫が欲しいところ。収納家具は、クローゼット、姿見付き引き出し棚、テレビ台の役目を果たし、全ての扉を閉じると、取っ手こそ付いているものの、木目一色の壁のような状態になる。
室内のファブリックは最近改装したようだが、元来のインテリアとはややバランスが悪い気がする。ドレープは安っぽく、窓の幅にしか開かないし、たまった部分のヒダが揃わずだらしない印象。しかし、清掃はよく行き届いており、感心した。ホテルディレクトリーは新しくなり、外資系らしいデザインになった。各セクションの見出しには歴史上の著名人の名言が記されており、それに目を通すだけでも楽しめる。
バスルームは、総大理石張りで非常に立派だ。やや古いデザインではあるが、重厚感があって興味深い。扉を入ると正面がベイシン、右に大型のプラスチック製バスタブがある。左には、それぞれ独立したシャワーブースとトイレがあり、それぞれに昔の電話ボックスを思わせる扉が付いている。ステンレス製でなかなかしっかりした造りの扉だ。
大昔に滞在した時には、シャワーを浴びるとこの扉の間から水が漏れて困惑した記憶がある。今回は大丈夫だったが、バスルーム扉の木部はかなり腐食が進んでおり、やはりあふれ出すことはあるのかもしれない。バスタブのカランは水圧が低く、湯をためるのに時間を要した。バスタブ上に照明がなくて薄暗いので、瞑想向きだ。アメニティのクオリティはフツウだが、品数は豊富に揃う。その他、出窓やナイトテーブルには大理石をふんだんに使っている。
特別フロアの特典で、カセット式ドリップコーヒーとミネラルウォーターは無料。その他、ウェルカムドリンクチケット、朝食が付く。朝食は地下一階の和食店でとった。席はコーナーごとに仕切られ、セミコンパートメント風だが、かなり離れた席で吸っているタバコの煙が回ってくる。着物姿の女性のサービスは快適だった。
しかし、この客室はラックレートが高すぎる。約8万円の設定だが、50平米に満たない部屋にそんな料金で、果たして誰か利用するのだろうか。ラックレートの設定には、各ホテルでそれぞれにポリシーがあるのだろうが、なにが基準になっているのか理解し難いケースが増えているようにも感じる。
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