新年を迎えたばかりの銀座東武ホテルは、ひっそりと静まり返っていた。ロビーにも人影がなく、スタッフのサービスも物静かで、ポートピアホテルの活気と明るいサービスを見た直後だけに、まるで通夜の受付のようにも感じられた。それでも、サービスに手抜きはなく、ベルによる客室への案内も行われた。客室は一部のファブリックが新しくなっていたが、その他のほとんどの部分は開業時から変化がない。張り替えた壁紙は、パール風の光沢があり、プリンスホテルを彷彿とさせるが、木目を生かした温かみのあるインテリアには、あまり合っていないように感じられた。
標準客室の面積は26平米と、現在のデラックスホテルの水準を大きく下回っているが、備品の質は悪くない。デスクやテレビの台などは、しっかりとした木製で、存在感も大きい。落ち着いた風合いの中に、真鍮や鏡の光沢感が加わり、高い質感を漂わせている。ただ、ベッドカバーなどはくたびれており、古びた印象もあった。照明はすべて白熱電灯と、明るさは控えめながら、やわらかい光がやさしく包む。
440チャンネル有線放送とステレオスピーカーで、室内とバスルームで好みの音楽が楽しめる。ミニバーと冷蔵庫内も充実した品揃えがあるが、お茶用に置いてある湯のみが非常に小さい。東武ホテルのポリシーなのだろうか。銀座という魅力的な立地にあるが、窓からの景観は裏路地のようで、眺めるには値しない。
バスルームは、ベイシンにしか照明がないために、薄暗い印象があるが、タオルは3サイズがそれぞれ4枚ずつあって、豊富なアメニティにはヘチマも揃うなど、充実したセッティングがされている。狭い空間を有効に使えるよう、アメニティ類はベイシン脇の棚に収めた。トイレに洗浄機能つき便座を備えないところからも、設備投資がやや遅れていることが伺える。
パブリックスペースは、小ぢんまりとしているが、真鍮と大理石、そしてシャンデリアのきらめきが織り成す、華やぎのある空間だ。パリのホテルのように、小つぶながらも小粋でアットホームなホテルを目指したらいいような気がするが。
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