どういうわけか、このホテルに泊まるのはいつも1月だ。特に意識しているわけではないが、結果的に正月明けの時期に利用することが多い。ホテルそのものは、いささか時代遅れでもあり、銀座という華やかな場所にあって、存在感は控えめだ。標準客室もツインで24平米程度と、東京の現在の水準からすると窮屈だし、眺めにも恵まれていない。だが、そんな足りない所だらけの存在が、時折無性に愛おしくも感じられる。
今回は、久しぶりにスイートを利用した。記憶をたどると、15年ぶりのことだ。最上階のエグゼクティブスイートフロアは、エレベータにキーを挿し込んでアクセスする特別階になっており、4種類のスイートとデラックスルームが配置されている。エレベータホール前には、かつてのルネッサンスクラブラウンジがそのまま残っているが、現在は機能していない。今にして思えば、この狭い空間でよくもラウンジを営業していたものだと、感心するほとコンパクトだ。ここに女性アテンダントが3名常駐し、カクテルアワーや朝食のサービスを行っていた。全国に特別階が増えてきたが、これほど狭いラウンジは見たことがない。
カメリアスイートは、最高級のオーキッドスイートに次いでグレードの高い客室だが、通常客室3室分の面積があるものの、72平米と、広さとしては控えめだ。室内はリビング・ダイニングルーム、ベッドルーム、バスルームの3室に大別され、それぞれに気合いの入ったインテリアデザインが施されている。バブル期の建築だけに、重厚感があるだけでなく、極めて質感の高い素材を多用した贅沢な内装だ。
通常客室2室分を割いたリビング・ダイニングには、テレビとオーディオセットを収納したキャビネットを仕切り代わりにして、ゆったりとしたソファを配したコーナーと、天然石のテーブルとしっかりとしたアームチェアの6名用ダイニングセットを配したコーナーに分かれている。ソファの裏手にはウェットのミニバーコーナーがあり、入り口付近にはクローゼットとゲスト用トイレを設けている。
サイトの情報によれば、改装したとあったが、ファブリックを改めただけで、備品そのものは開業当時と変化していない。オーディオにはカセットプレイヤーやアンプなども備えるが、DVDなど今風の機材は用意されていない。照明もコントロール性に乏しく、いささか不自由な印象だった。
ベッドルームは、正方形に近いスペースに、ベッドを斜めに配置しているのがユニークだ。ベッドはクイーンサイズで、枕元には鏡を使い、照明や有線放送のコントロールパネルをはめ込んでいる。真鍮色とミラーがとても華やかだ。寝具は毛布のトップとアンダーをシーツで包んだスタイルで、空調吹き出し口からの風が当たることもあって、毛布だけでは物足りなかった。ベッドの足元には、ドレッサーを兼ねたデスクがあり、ここに無料で利用できるLANも用意されている。デスクの上の方にテレビを収納したラックがはめ込まれており、その扉はナイトパネルで開閉する仕組み。その脇には十分なスペースの収納家具が並んでいる。
バスルームへと続く扉は、ベッドルームの一角にある。重い扉の先には、天井以外のほぼ全ての面に大理石を張った立派なバスルームが広がり、ダブルベイシン、扉で仕切られたトイレとビデ、シャワーブース、ジェットバス、サウナが細長い空間に配置されている。シャワーブースには腰掛けたり、足を掛けるのにちょうどよい段差が設けられて便利だ。
ジェットバスは強い水流が心地よいが、長年の汚れが溜まっているので、一度湯を張って、10分程度空運転をしてから、再度湯を張りなおして利用した方がいい。サウナは家庭用の小さなものだが、サウナとしての機能は十分に果たしている。シャワーやカランの水圧が低いのが残念だが、440チャンネル有線放送でお気に入りの音楽を流し、ジェットバスやサウナで思う存分にプライベートなスパ気分を味わえるバスルームだ。アメニティは4名分が揃うが、面白みのない製品なので、自分でセレクトした品を持ち込むのがオススメ。
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