21世紀最初の朝をこのホテルで迎えてから、2年弱のご無沙汰だった。館内の雰囲気は嫌いではなかったが、トゲのあるサービスと、何にでもやたらと時間を要する体制が嫌いで、候補にあがっても却下し続けていた。今回も、イヤな印象が主体の滞在になるかもしれないと覚悟してきたが、その予測は完全に間違っていた。
ドアマンの対応から、ベルへの引継ぎは完璧だった。感じのよい出迎えを受け、ベルマンには丁寧かつ快活にフロントへと案内された。平日らしく、特に混雑もなく、スタッフにも十分なゆとりがあったのかもしれない。そう考えると、週末には元来持っている彼らの実力やホスピタリティが、まったく発揮できない慌しさなのではないだろうか。フロントでは、手際よくチェックインが済んだ。総合的には、このフロント係の対応が一番冷たかった。もう少し寛いだらどうだろう。
ロビーには11月初めだというのに早々とクリスマスのデコレーションが施され、夢のあふれるファンタジックな世界に様変わりしている。クラシックでゴージャズな様式の空間によく似合っていて、このロビー空間を楽しむためだけでも、立ち寄る価値はあるだろう。ガーデンプレイスのバカラ製シャンデリアとあわせて、見物に訪れる人が後を絶たないのもうなずける。
客室は、改装をしたわけではないが、備品を入れ替えることで、ディティールから進化を遂げつつある。最大の進化はヘブンリーベッドの導入だろう。最高のの寝心地を約束する究極のベッドとして、センセーショナルにデビューしたウェスティンのヘブンリーベッドだが、このベッドがホテル業界全体に与えた影響は大きかった。ヘブンリーベッドというネーミングとPR作戦が功を奏し、その名は瞬く間に世界中に知れ渡った。フォーシーズンズなど、このベッドが登場する以前から、眠りのクオリティに十分な配慮を持っていたホテルも少なくなかったが、ヘブンリーベッドの登場によって、各ホテルがより快適な眠りを追求するようになり、ホテルのベッドは急速に進化し続けている。
ウェスティンのヘブンリーベッドも、快適な眠りという点では世界共通でも、その仕様にはホテルによって随分と違いがある。3枚のシーツを重ね、寝具の上に寝具を掛けた重い上掛け布団に、5つの異なる枕を合わせた、ツインでも160センチ幅以上のヘブンリーベッドはとりわけ快適だが、まだ国内にはお目見えしていない。ウエスティン東京のは、都ホテル東京のベッドといい勝負をしており、ぐっすりと休みたいのなら、この2軒はリストから外せないだろう。
その他にも、グラスが新しくなったり、写真スタンドのような形をしたルームサービスメニュー、無料のLAN接続など、細かい工夫が散見される。以前はおざなりだったターンダウンサービスも、丁寧なフルサービスにスタイルを変えた。室内の空気を乱すことなく、隅々にまで目を行き届かせてナイトセットを行う。バスルームもほとんど元の状態にまでしてくれた。
翌朝の「ビクターズ」での朝食も、快適で楽しいものだった。スタッフはよく気が利き、適度にフレンドリーで、エグゼクティブクラブらしい雰囲気があった。料理もおいしく、メニューからチョイスできるメインディッシュは工夫が見られ、なかなかのものだった。
サービスの向上はなにをきっかけにしたものだったのか。総支配人が変わったこと、セルリアンタワーがオープンし、じきにグランドハイアットがオープンするなど、ライバルが出現したこと、テロの影響で外国人客を中心にゲストが減ってしまったことなど、いろいろな要因が考えられる。本当のことはよくわからないが、この立派な建物に相応しいサービスとは何かを、スタッフが真剣に考えた結果であって欲しいと願っている。
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