1999.09.27
汚れたタオル
ウェスティンホテル東京 Suite
喜-3今まで不満が多かったウェスティンが、今回は健闘した。残念なことがなかった訳ではないが、いつものお粗末さを考えると、今回の滞在でずいぶんと印象がよくなった。ただ、どのようにして印象が良くなったかといえば、ホテルがサービスを改善したという訳ではなく、単に今回はタイミングが良かったというだけのことだと思う。また、ほとんどの時間を客室内で過ごしたので、客室の印象が良かったことが今回の滞在を満足させた一番の要因だった。
定価90,000円の値付けがされたスイートは、都内にある同レベルの料金の客室と比較した場合、かなり充実度が高い。ホテルに到着したのは午後3時で、すでにチェックインのラッシュは去っており、フロントも閑散としていた。手際よく手続きが済んだものの、担当者はやはりクールな対応だった。これはウェスティンの流儀と解釈した方が良さそうだ。
客室までは、小柄な女性のベルアテンダントがカートと共に同行してくれたが、カートから客室内に荷物を移す際の扱いが乱暴で見ていてひやひやしただけでなく、今時の高校生のように鼻に掛かっただらしのない発音で話すのを聞いているだけで苦痛に感じた。
今回利用したスイートはスタンダードルーム2室分の広さで、総面積は84平米、天井の高さは270センチある。1室分がリビングで、もう1室分がベッドルームとバスルームになっている一般的なスイートだが、単純な構造のためか、それ以上に広いような印象を受ける。
リビングルームには、大きなソファ、オットマン付きソファ、肘掛け部分にスワンの彫刻を施した椅子、ビデオデッキとテレビを収納したアーモア、FAXの載ったライティングデスク、ウエットタイプのバー、ゲスト用トイレとクロゼットを備える。ダイニングテーブルがないので、その分広々としておりゆとりを感じる。リビングの照明は各スタンドの他に、天井に仕込まれた間接照明や、バー上部にあるハロゲン光のダウンライトなどの存在で、かなり明るい印象だ。壁紙や絨毯も、スタンダードルームの濃い色調に比べるとはるかに淡白で、やさしい雰囲気になっているが、重たいドレープや重厚な家具類がアクセントになっている。
一方、ベッドルームは薄いブルーの壁紙が採用されており、若干雰囲気が異なっているほか、照明はスタンドとナイトスタンドのみで、やや薄暗い印象が残った。ベッドは130センチ幅で、シーツはやわらかく肌触りが良い。羽根枕の他に一部そば殻を利用した枕が用意されている。窓際にはソファと脚の肱掛椅子が置かれ、両脇には2本の円柱があり、よいアクセントになっている。ベッドサイドに置かれた電話機の他に、アーモアの脇にもコードレス電話機が用意されている。バスルームの前には荷物台とクローゼットがあり、リビング側のエントランスとは別にベッドルーム側にもエントランスが設けられていて、同じキーで開けられる。
バスルームはスタンダードルームのものよりも広々しており、とても使いやすいレイアウトだった。ダブルベイシンで、ストールも用意されている。バスタブはスタンダードルームのものと同じでやや小さ目で浅いが、シャワーブースはひとまわり大きいし水圧も十分だ。ベイシン脇にあるトイレは壁の死角にあり、あまり目立たなくなっている。床は大理石だが、壁はタイルのようなものが張られている。高価なものではなさそうだが、落ち着いたシックな雰囲気に仕上がっている。
アメニティはクラブツリー&イブリン社製のアロエシリーズのボトルがならび、ソンデシンという名の香水も置かれている。グリーンのポーチの中味はスタンダードと同じだった。タオルは3サイズが豊富に用意されている他、スクラブタオルもあり便利だ。
だが、このタオル類に今回は問題があった。確かに注意して見なければわからないのだが、どのタオルにもうっすらと染みがあり、一番濃いものは結構目立っていた。サービスエキスプレスにその旨を指摘すると、追加のタオルを持ってきてくれたが、それにも同様の染みや汚れが付いていた。清潔であるかをきちんとチェックせずに客室に置いた客室係も注意不足だったかとは思うが、タオルの洗濯を請け負っている会社の責任の方が大きいように感じた。
高級と称されるホテルでこのようなタオルを一時に大量に見たのは、これが初めての経験だった。こちらから呼んだ訳ではないのだが、ハウスキーピングのマネージャーが直接詫びにやって来た。想像していたよりも事態を重く考えていて、今後はチェックを入念にし、このようなことがないように務めたいと話していたが、上辺だけの言葉でない様子が伝わって来たので、好感度は高かった。
ルームサービスで、以前は幾つかの料理では要望ででポーションを増減してくれるとの記載があったが、現在はなくなっていた。品揃えが多少充実したのだが、ユニークなシステムが消滅してやや残念。今回はナシゴレンとクレソンとミツバのサラダを注文してみた。広げると円形になるトロリーには真っ白なクロスが掛かり、蘭の花が飾られている。ルームサービスを運んで来たサービスエキスプレスの担当者は、非常に丁寧で謙虚な姿勢でサービスしてくれた。ウェスティンにもこうしたキャラクターの従業員が存在することを知って、うれしい気分。
しかし、その他の面では、依然としてサービスエキスプレスは時間が掛かる。実際にサービスが提供されるまで、例えばターンダウンを頼むと40分、タオルの追加では30分を要した。
ウェスティンエグゼクティブクラブのサービス内容にも変化があった。まず、無料だったスポーツクラブの利用が、1回につき2,000円の優待になった。「ビクターズ」での朝食ブッフェの内容も寂しくなり、ジュースはフレッシュでなくなってしまった。こうしたことからも、ウェスティンはフォーシーズンズやパークハイアットと並べて考える対象にはならないことがわかる。帝国、オークラと比較した時のニューオータニのようなものだろうか。
Y.K.