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山の上ホテル Standard Twin Room Japanese | |
Hilltop Hotel | 2011.01.27(木) |
東京都千代田区 | 楽-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
控え目ゆえの魅力 山の上ホテルに来ると、なぜかホッとする。館内にはのんびりとした空気が流れていて、宴会で賑わっていても、レストランが満席でも、不思議と慌しさを感じることがない。盛り上がっているのに、穏やかなのである。 クラシックホテルと呼べるほど古くないかもしれないが、東京で老舗のひとつに数えられることは間違いない。そんな年季が醸す落ち着きと生真面目なサービスが、いかにも日本のホテルらしいムードを創り出し、訪れる人をくつろがせる。 そして、それぞれの空間がさほど広くないのがいい。本館ロビーは正面玄関を入って左右に区分けされ、いずれにも革張りのソファが多数並んでいる。ここは宿泊客の憩いの場であり、宴会場のホワイエであり、喫茶室でもある。ここで文庫本でも開けば、何時間でも読み耽っていられるだろう。 一角には文机と書棚が置かれ書斎のよう。ここも自由に使える。かつてこのホテルで執筆を進めた作家もおり、文化人に愛されるホテルとして名が通っていることを物語る設えだ。 ロビーのテーブルには喫茶メニューが置かれているが、必ずしも注文しなければならないわけではない。注文したい時には、係に声を掛ければすぐに応じてくれる。ラウンジのカウンター脇には、マッチが積まれたカゴや、オブジェたちが置かれている。 フロントデスクはといえば、正面玄関の脇に設置されているが、そのまま気付かず素通りしてしまいそうなくらい小ぢんまりしている。カウンターの奥はフロントオフィスになっており、そこで事務作業をするフロント係の姿が見られる。 客室へは1基だけあるエレベータか階段を使う。エレベータは改装されて昔の趣きが失われたが、最上階まで渦巻状に通じている階段には歴史的な風情を感じる。荷物が多くなければ、この階段で往来するのもいい。 今回利用した客室はスタンダードツインルームの中でもユニークな和室型。このタイプは2室しかなく、通常のスタンダードツインよりも若干広い。 扉を入ると踏み込みがあり、そこで靴を脱いで居室に上がる。脇には木製の棚とクローゼットがあり、居室との間は襖が設けられている。 居室は、家具がなければ明らかに和室の造り。そこにベッドやイスを置いたことで、和洋折衷の独特の雰囲気が生まれた。畳の床、漆喰の壁、そして木の柱や板張りの天井など、ホテルの中というより、和風建築の一室のようだ。 ベッド幅は100センチと狭いが、ゴージャスな柄のベッドスプレッドが格段の存在感を示している。シンプルなベッドボードがあり、間にはナイトテーブルを設置。ナイトランプは60年代デザインを思わせるメタルのボール型。畳の上には部分的にシートを敷いている。 ベッドの脇には独立型のドレッサーを配置。ここの部分はやや暗いのだが、大きな楕円形ミラーがあり、支度には便利。いつの品物かわからないが、木目が艶やかで大切に使われている印象だ。 ベッドの向かいにはシッティングスペースを配置。ここにも畳の上にシート状カーペットを敷いている。脇に掛かる床の間風の額や、囲碁盤を思わせるテーブル、白いカバーの掛かった安楽椅子など、どれもがユニークだ。 デスクは意外と小さい。意外にというのは、「作家にも好評」という観点での感想である。窓の脇、ほぼ部屋の隅という場所に置かれたデスクには、ガラスの天板が載っている。洒落たスタンドライトやペン立てがあり、目を斜めにそらせば障子窓が見えるというのはいい感じ。 その窓からは隣接する建物が見える。眺めがいいというわけではないが、空は広く感じられた。窓の下には風格を醸す空調設備がある。 到着するとすぐに運ばれてくるお茶。初々しい客室係が担当することが多い。この日もまだぎこちない動作の女の子が運んで来たが、いずれ熟練した雰囲気に変わっていくのだろう。 テレビはベッドの脇。まだブラウン管だ。そんなところにもレトロなムードが感じられる。照明は部屋の中央に下がるペンダントライトで十分に明るいが、立派なフロアスタンドも置かれている。 居室の隅には冷蔵庫がある。上に載っているのは「おゆ」と書かれたポットや急須付きのお茶セット。湯はウェルカム茶とともに客室係が運んでくる。 また3種類のハーブティとそれ用のカップもある。 バスルームはタイル張り。上部に装飾帯があり、かわいらしい印象だ。さほど広くもないが、窮屈でもない。おそらくベイシンが小さめであまり場所を取ってないからだろう。ベイシン前のミラーには棚が設けられており、便利。 バスタブはハンドレスト付き。奥にちょっとしたスペースがあり、腰かけたりもできる。トイレはバスタブの並び、ベイシンの背後という配置だ。 バスアメニティは他であまり見ないシャンプーなどを使っている。各パッケージに記されたロゴがかわいい。 食事は館内のレストランのほか、ルームサービスも利用できる。ひとりの時は気軽なセットメニューが便利。味もなかなかだ。 華やかなわけでもなく、特別な施設が揃っているわけでもないが、それらを満たすホテルと変わらないか、あるいはそれ以上に心を潤しリフレッシュしてくれるホテルである。ちょっと気分を変えたい時に訪ねるにはぴったりだ。 |
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