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箱根ホテル Superior Twin Room | |
Hakone Hotel | 2010.12.10(金) |
神奈川県足柄下郡 | 楽-4 |
ARCHIVES ・ 1992 |
不死鳥ホテル 芦ノ湖を望む安らぎの宿・箱根ホテルの歴史は波乱万丈だ。箱根ホテルの前身は江戸時代から続く旅館「はふや」であった。それを富士屋ホテルの山口正造氏が買収し、1923年6月15日に木造4階建ての新建築で開業するも、3ヶ月も経たないうちに関東大震災の被害で休業。 1926年7月15日には本館再築を終え再オープンしたが、1930年11月26日の豆相地震でふたたび倒壊。それにもめげず1931年に本館新築、1934年新館増築と、箱根観光におおいに貢献した。 その後、1945年5月から2年間続いたドイツ海軍による借り上げ中に新館が焼失したものの、1951年5月28日に純スペイン風の新館完成。この異国情緒漂うホテルは多くの旅人に愛されたが、老朽化に伴い建て替えが決定。1992年に現在の建物となってからも、客室から眺める穏やかな芦ノ湖の風景美は不変である。 今でこそ、芸術的なまでのデザイン性を見せるホテルは数多く存在するようになったが、中でも箱根ホテルはその先駆けであるだけでなく、今なおデザインの完成度の高さではひときわ注目に値する建築と言える。 ホテルは商業施設であるからして、敷地や空間の有効活用は大きな課題であり、デザイン性ばかりを追求するわけにはいかない。しかし、箱根ホテルの場合は、合理性などどこへやら、芸術性をとことん盛り込むことを許された、建築家にとってはこの上なく「おいしい」仕事だったのではないだろうか。 近頃のデザインホテルには、見た目だけで使いにくいところが散見され、時に苛立たしさを感じるものだが、ここまでデザインが全面に出ていると、見るもの触れるものすべてに説得力があり、苛立ちよりもあっぱれという気持ちが勝る。 正面玄関は湖とは反対側の国道1号線沿いにある。屋根付きの車寄せを中心に、まるで美術館のような外観を見せ、ここがホテルだと知らない人も、いったい何の建物だろうと興味を持つに違いない。車寄せから階段を上がり、小さな回転扉を入るとロビーがある。 ロビーの床はフローリングで、外観からも見える列柱の屋内部分には大理石が張ってある。ロビーのデザインも秀逸だが、土産物ワゴンや案内看板などが、せっかくの雰囲気を大衆的なものに引き下げているのが残念。 フロントカウンターは入口から見てすぐ左脇。広いロビーの一角の目立たない位置に佇んでいる。総客室数は50室なので、それを考えれば適切な規模ではあるが、今の時代ならイスに座ってゆっくりチェックインできる、デスク型のフロントの方が似合うような気もする。 ロビーを始め、パブリックスペースの空間デザインは、どこか劇場のようでもある。スペースを大胆に使った階段や、それぞれに表情の違う壁や天井など、見ごたえのある建築美を楽しめる。 ロビーフロアは中2階に当たる位置にあり、湖畔の中庭やレストランフロアは1階、そして客室は2階から4階までに位置している。1階は特に天井が高く、ロビー中2階との間にも1階分以上の差があるが、ロビーから2階までは白い大理石の階段でわずかな差だ。 エレベータは1階、ロビー階、3階、4階に停まる。カゴは1基のみで、内部も小さい。また、各階へは階段でもアクセスできる。客室階エレベータホールは国道側、湖側ともに細いスリットウィンドウになっており、最上階はトップライトもある。エレベータ扉の周囲は立派な大理石造りだ。 客室階エレベータホールには、湖に向けてシッティングスペースが設けられている。客室とは一味違った表情が眺められる人気の場所だ。この湖側ウィンドウの左ウイングには、ジュニアスイート2室が並んでいる。 客室は芝の中庭を囲むようにして、「コ」の字に配置されており、全室がレイクビュー。客室が並ぶ廊下には、小窓が連なっており、独特の表情を見せている。それぞれの客室扉はどっしりと大きな造りで、ドアノブが高い位置に設けられているところも、日本離れした印象だ。 客室は34平米のモデレートと38平米のスーペリアを中心に、和室やスイートも用意されている。中でもレイクフロントにあるレイクサイドダブルやスイートからの眺めは群を抜く。モデレートは湖を横目に見る位置にあり、スーペリアは湖を正面に見る。4平米の広さの差より、眺めの優位が圧倒的だ。 そして、最上階4階はより高い天井が特徴的。窓の大きさは2階や3階と同じだが、窓上から弧を描いてバスルームを飛び越える高い位置まで天井が広がるダイナミックな造りが興味深い。 今回利用した客室は4階のスーペリアルーム。同じカテゴリーの部屋には、バスルームに窓が設置されているタイプもあるが、この部屋の風呂には窓がない。それでも、湖を正面にのぞむ格別な眺めだけで満足だった。 客室の窓は床からのパノラマウィンドウ。サイドの一部は開閉可能で、湖面を渡る空気や、自然のサウンドを感じることができる。湖面や山々の表情は刻々と変化する。穏やかで優しいかと思えば、ミステリアスになったり、いつまでも見飽きることのない風景だ。 ベッドはハリウッドツイン。マットレスや寝具は古く、さほど快適とはいえない。枕もひとつだけで、眠りの環境としてはビジネスホテルレベルである。 ベッドの脇はバスルーム部分。しかし、バスルーム入口はホワイエ側にあり、内扉より外側だ。バスルームの上部には間接照明が設置されており効果的。天井の最高部分は高さ4メートルにもなる。暖房の効率は悪そうだ。 窓際にはソファセットを配置。ファブリックはやや傷みが目立つ。カーペットや壁の汚れも気になるところだ。 デスクは独立型だが、壁向きに置いている。目の前には四角いミラー。テレビの脇にはスツール、ミニバーキャビネットの隣にはサイレントバトラーがある。 バスルームはタイル張り。細い足がユニークなスタンディング型ベイシンは、バスタブとトイレに挟まれて設置されており、エレガントな曲線が印象的。 バスタブは大型で、周囲が台座になっている。バスタブに入るには大きく跨がなければならないが、手すりが設けられているので安心だ。シャワーブースはない。 トイレの前にはタオル類を入れたカゴがあり、脱衣の際にも重宝。そしてまだあまり見かけないタオルウォーマーもある。日本で目にしたのはこのホテルが初めてだったと記憶している。 バスアメニティは簡略化の一途。しかも過渡期なのか、ホテルの名称さえ入っていない品が多く、そっけなかった。 温泉浴場は1か所のみで男女入れ替え制。小さいながら露天風呂もあり、箱根の温泉らしい湯が楽しめる。この温泉だけは、せめて男女別に同時に使えるよう、もう一箇所欲しいところだ。 天候に恵まれれば、湖畔の散策を楽しみたいもの。ホテルには専用の桟橋も設けられており、さまざまな水上アクティビティを提案している。湖上で出ないまでも、芝の中庭からひたすら眺めているだけで、十分に心地よい。 |
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