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帝国ホテル大阪 Superior Room | |
Imperial Hotel Osaka | 2010.02.18(木) |
大阪市北区 | 喜-4 |
ARCHIVES ・ 1992 |
帝国ホテルアイデンティティ 新山口駅から乗車したのぞみは割と混雑していた。その車内で餃子を食べている客がいて、くさくてたまらなかった。 大阪では絶えて久しく足を運ぶことのなかった帝国ホテルを予約してあった。最後に訪れてから8年以上が経ち、設備や雰囲気はどう変化しているのか、楽しみでもあり不安だった。 大阪駅からはホテルの送迎バスを利用した。大阪市内の高級ホテルの多くは、大阪駅からの無料送迎バスを運行している。最も便数が多いのはリーガロイヤルホテル。あとは、15分から30分間隔の運転なので、あらかじめ時間を調べておいた方がいい。 バス乗り場には、各ホテルのロゴをプリントした色とりどりのバスが並んでいて、眺めるだけでも面白い。帝国ホテルのバスは、ひときわ立派だった。車内の内装もだが、感心したのは運転手のマナーである。礼儀正しさはもちろん、荷物の扱い方もベルアテンダント顔負けの丁寧さ。ヒルトン東京の横柄な運転手とは比べものにならない。 バスは1階の宴会用玄関に到着した。館内に入ってまず最初に目についたのは、「帝国ホテル120周年の歴史展」であった。荷物を持ったままだが、強く興味を惹かれ、そのままざっと見物してみた。 「松の木にあたかも鷹が止まっている」かに見えるという大理石をはじめ、昔のテーブルやイス、ライト館で使われていたクリンカータイルやスクラッチタイルの一部など、貴重な品物が往時をしのばせる。後にじっくりと鑑賞したが、なかなかの充実ぶりだった。 館内の様子は、8年前とほとんど変わっていない様子。ファブリックなどは改められているかもしれないが、基本的な構造は記憶通りである。そして、ほとんど劣化が見られず、隅々までメンテナンスが行き届いている印象だった。 ロビーラウンジを中心としたエレガントなアトリウム空間は、片側が全面ガラス窓になっており、より広々と躍動的に感じさせる。中央の水流のオブジェも存在感がある。 2階のロビーはライトのデザインモチーフを多用し、クラシカルながら華やかな雰囲気を醸す。広い空間に、多数のソファやイスが配され、それぞれすべてに座ってみたくなる。一角には滞在中の客か、外国人たちが気ままなスタイルでたむろしており、風変わりな映画のシーンのように見えた。 その他は人影もまばらで、客を受け入れる準備の整った施設だけが、独特の世界を造っている。まるで真夜中の誰もいない遊園地で、すべてのアトラクションが稼働しているような雰囲気。だが、空気の分子ひとつひとつにまで、帝国ホテルらしさが染みわたっている。 チェックインは感じよく行われた。係は知的でキリリとした印象の女性。客の行動をよく見ていて、バッグから何かを探しているなど、客の注意が他に向いている時には、話しかけたりせずに待っている。東京での慣習に倣ってデポジットをたんまりと要求されるかと思いきや、それもなく、キビキビとした動作のベルボーイが颯爽と案内してくれた。 エレベータホールにもスケール感があり、ホテルの格式を物語っている。深夜になると、客室用エレベータホールに入るにはルームキーが必要となる。そうしたセキュリティに対する視点も、帝国ホテルらしい。 エレベータの中も立派。大型のカゴは天井が高く、東京と同じくバラの一輪ざしが飾ってある。館内のどこにいても、そこが帝国ホテルであることが実感できるのは、それだけホテルのアイデンティティが確立しているということだ。行き先ボタンも扱いやすい。 エレベータホールには、銀の衝立とブルーのイスが置かれている。ロビーの濃厚なカラースキームから一転、淡く清楚なイメージだ。 客室階廊下にも同様のエレガンスが漂う。長く伸びる廊下に、多数連なるブラケットライト。天井の高さも空間を大きく感じさせる。 用意された客室は40平米のスーペリアツイン。このホテルにおける標準客室である。ストライプやチェック柄など、直線的モチーフによるデザインで満たされ、明るく温かみのあるカラースキームが、気分を軽やかにする。しかし照明は落ち着いた雰囲気を保っており、あくまでくつろぎは持続する。 入口ホワイエは長めの廊下状。片側には大型クローゼット、ミニボトルや冷たい飲みものを豊富に揃えたミニバー、ルームサービス時のエキストラチェアや荷物台として役立つイスがある。 ベッドは120センチ幅が2台並び、木目のベッドボードが存在感を醸す。だが、旧式のマットレスやデュポン社のダクロン掛け布団は、いずれも心地よいとはいえない。インペリアルフロアや一部一般客室にも上質なベッドを導入していると聞くが、一日も早い全室導入が待たれる。 ナイトテーブルは2台のベッドに挟まれており、ナイトスタンドとチューブ式の読書灯を備える。コントロールパネルは可動式で、電動カーテン、照明、エアコン、プライバシー表示、オーディオをコントロールできる。時計は、これとは別に置かれている。 窓際にはゆったりとしたソファセットを置き、読書灯を添えている。デスクは壁向きに置かれ、目の前にはミラーではなく大きな額が掛かる。照明はスタンドの他に、梁から照らすダウンライトがある。 テレビは32インチ液晶型だが、まだアナログ放送。テレビの下は3段の大型引き出しになっており便利。更に脇には2段の引き出し付きのバゲージ台があり、収納スペースは十分に揃っている。 窓は大きく取られており、昼夜を問わず開放的な眺めを楽しめる。特に日中は、目の前を流れる川面や、両岸の緑地の風景が、心なごませてくれる。 バスルームは広くて快適。艶のある木目のドアを開けると、正面にはベイシンがある。ベイシントップには濃い色調の天然石を使い、全体を引き締めている。ベイシンの脇には棚が設けられ、細かいものを整理するのに便利。また、タオル地のカバーが掛かった小さなスツールが添えられ、ゆっくり腰かけながら身支度ができるのもいい。トイレは個室ではないが、一番隅の奥まったところに設置されている。 ウェットエリアは、バスタブとシャワースペースを一体化させている。壁は白い大理石、床はグレーと黒の天然石仕上げ。シャワースペースに設けられたイスが何かと便利だ。 シャワーは固定式のものと、ハンド式のもがそれぞれ設置されている。最近は嫌われ者になってしまった固定シャワーだが、映画のシーンのような優雅なシャワータイムには欠かせないアイテムである。 また、バスルームの仕様は、同じ40平米のスーペリアルームでも、一部客室では異なっている。特にエレベータホール前に位置する末尾03番と05番は、バスルームが狭いためにシャワースペースが割愛されているので注意が必要だ。 バスアメニティは帝国ホテルオリジナル。品揃えはあまりパッとはしないが、シャンプー類の甘くやさしい香りは魅力的だった。 タオルは3サイズ揃っているが、どれも使い古され黒ずみが生じ始めているのが残念。バスタオルは、トイレ前に設置された籐カゴに載せられている。カゴには引き出しと、使い終わったタオルを入れる箱もある。この部屋にはバスローブは備わっていない。 清掃の丁寧さとしてはまだまだ詰めが甘いが、東京の半額以下という実勢価格を考えれば、やむを得ないという同情も湧いてくる。しかし、帝国ホテルというブランドに掛けて、最後の最後までさすがと言わしめるクオリティを保ってもらいたいものだ。 廊下で出会う清掃係たちは、みな物静かに作業を進め、滞在中の客に迷惑をかけないよう心掛けていることがうかがえる。 ホテル周辺はよく整備されており、四季折々の花や斬新な彫刻などを見ることができる。よく晴れた日には、川に向かって設けられたベンチでくつろぐ人たちの姿に、見ている方も気分が和らぐ。ハーモニカを吹くおじさんの気ままな旋律が楽しげだった。 正面玄関は川とは反対側に位置しており、そこから見上げるホテル棟には凹んだ部分がある。そこには30平米のスタンダードルームが並ぶ。やはり、解放感溢れる滞在を楽しむには、川側の部屋を選びたいところだ。 チェックアウトも大変スムーズ。今回はレストランを利用するタイミングがなかったが、心地よい滞在となった。 |
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