1997.09.29
お買い得スイート
帝国ホテル大阪 Suite
喜-5

実によく考えられた快適な客室だった。料金も手頃でコストパフォーマンスが非常に高い。このタイプのスイートは各階のコーナー部分、ちょうど建物がL字型に折れる箇所に半円状に突き出している部分に位置し、100平米のスペースを確保しているが、このホテルではもっとも小さなスイートだ。ただ広いだけでなく、居住性や機能性を考え抜いた秀逸な客室だといえる。

まず客室入口の扉の造りも立派で、入るとすぐに前室がある。フレンチドアの向こうは半円を半分に切った形でリビングルームとベッドルームに分かれている。リビングには大きなTVと大きなライティングデスク、ソファセットなどがあり、随所にオブジェなどが置かれており、高品質なファニチャーと共に雰囲気を高めている。眺めはよいというほどではないにしても、一応川や緑も多いし、窓が大きいので光がたくさん射し込んで明るかったが、その分、夕方は西日がきつかった。

ベッドルームには2台のダブルベッドが入っても、スペースに十分ゆとりある設計。バスルームは外光の入るパウダールームとトイレ、洗い場を設けた広いバススペースに分かれている。アメニティは非常に豊富で充実している。タオルははじめから十分な数が用意されているのがありがたい。

照明は調光式で部屋の雰囲気を自在にコントロールできる。これだけの高品質な設備があれば、通常なら100,000円以上の値段が付いても不思議ないが、ラックレートで60,000円という破格。この値段でこれ以上充実した客室は見たことがない。客室係のサービスも卓越しており、随所から帝国ホテルの実力をうかがいしることができる。

このホテルにも東京同様、宿泊客が無料で利用できる音楽練習室が用意されている。地下の意外な場所に設置されているので、通りかかってもなかなかそれとは気付かない。ゲストリレーションに利用を申し込んで案内してもらうと、そこは二重の扉で防音を施してあり、中にはスタインウェイのグランドピアノとリビングセットが置かれていた。スポットライトの設備があり、雰囲気を作ることもできる。また、ルームサービスから飲物をオーダーすることができて便利だ。ホテルの中で思い切りピアノが弾ける空間があるのは、本当にありがたいことだ。

客室は極めて快適だが、ロビーなどのパブリックスペースの雰囲気は、帝国ホテルのイメージからすると、世俗的に感じる。特にロビーラウンジのひどいオルガンの演奏は、雰囲気を壊しているといってもいいくらいだ。また、「フライングトマト」のサービスはカジュアルというよりも、崩れているという印象だった。帝国ホテルの非常に長い歴史と、その間に培った信用に恥じない仕事をし続けてもらいたいものだ。

Y.K.