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ハイアットリージェンシー京都 Deluxe Balcony | |
Hyatt Regency Kyoto | 2010.01.19(火) |
京都市東山区 | 怒-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
無言の圧力 ホテル館内に足を踏み入れると、そこは穏やかな京都の街並みとは異なる活気に包まれていた。ちょうどチェックインタイムになったところで、ロビーで手続きを待っていた客とそれに応じる係が一斉に動き出したという雰囲気だった。 さて、この賑わいをどうやり過ごそうか。思案する間もなく、パークハイアット東京から顔馴染みだった支配人が気付き出迎えてくれた。若い女性の係もすぐに気付いたらしく、必要なものを手に、カウンターから出てきた。 軽く挨拶を交わすと、混み合うフロントカウンターを横目に、まっすぐ客室へと案内された。「広めの部屋を用意しました」とあてがわれたのは、最上階にあるバルコニーデラックス。サインのみのチェックインはあっという間に終わり、係は「用があればなんなりと」と言い残し、部屋を去っていった。 誰もいなくなると、部屋はたちまち静寂に包まれた。チェックイン直後の、この整った空気の心地よさは、ホテルステイの醍醐味のひとつである。見るとコネクティングドア付きだ。今のところは隣室に人の気配は感じられない。ドアのフロア図を見ると、隣はここの半分ほどの小さな部屋だ。入るとしても、ひとり客だろう。おとなしい人だといいのだが。 客室の清掃は丁寧に仕上げられ、ベッドのリネンにはシワひとつ見られない。イスの角度ひとつを取っても考え抜かれており、絶妙なバランスが感じられる。L字に置かれたソファセットのテーブルには、ウェルカムアメニティがさりげなく用意されている。 バルコニー側の一面はすべて窓。その半分は開け放つことができる。日差しを避けるためか、視線をかわすためか、窓ガラスにはサングラス効果のあるフィルムが貼られ、京都の景色が幾分ブルー掛かって見える。窓際には独立した大型ワークデスクが置かれ、対面して座れるよう、ふたつのイスが添えられている。 ベッドからテレビを見るのはソファ越しになるが、これはやむを得ない。テレビの脇にはコネクティングドアが見える。客室ドアの並びにはミニバーキャビネットがあり、天端はカウンターの役も果たす。コネクトドアと客室ドアの間にある木製ボードの窪みには、2冊の書物が立て掛けられ、インテリアのアクセントになっている。 壁は木製ボード部分とアイボリーカラー部分のコントラストが効果的だ。天井に装飾性はなく、ハロゲンのダウンライトが多数設置されている。また、窓上の梁は、全体的にスッキリした天井にあって、威風堂々たるようにさえ見える。 バルコニーは広々としており、隣室とは簡単なパーテーションで仕切られているだけだ。客室の向きによって眺めは異なるが、いずれの場合でも、京都の緑を間近に感じることができる。 バスルームはたいへん魅力的だ。そしてなおかつ快適である。居室からバスルームへの引き戸を開けると、片側にはクローゼットなどの収納スペースと独立したトイレがあり、もう片方にバスエリアが広がる。以前、同タイプの部屋を使った際には、トイレの寒さに参ったが、今回は内部にも暖房が届いていた。 ベイシンはダブル。ゆったりとした間隔を持って置かれており、中央にはスツールを備える。クローゼットとの間にある2段のステップが内装にメリハリを加味している。床と壁はそれぞれ違う石を張り巡らせてあり、控えめな色彩ながら、高い質感を保っている。 ベイシン下には引き出しやラックがあり、余計なものを片付けて置ける。用意されているタオルはすべてフカフカなのも気持ちがいい。 バスルームにも居室と同じく大きな窓があるが、こちらは開閉できない。それでも、十分な採光と木々の眺めは心なごませてくれる。バスタブはヒバ製。乾燥を防ぐために、若干の水を張ってある。バスタブの傍らにはオープンなシャワースペースが設けられ、こちらも解放感満点だ。 バスアメニティはハイアット共通のラインナップが揃う他に、バルコニーデラックスとスイート向けにアレンジされた京都コスメ「ちどりや」のアイテムも加わる。写真左隅にある「月桃ローション」の使い心地が気に入り、泊まる度にレギュラーサイズのものを何本か買い求めて帰る。この日もホテル内のスパ「RIRAKU」で2本購入した。 夕方からはジャズピアニストと会って、翌日に開催されるイベントの打ち合わせをすることになっていた。ピアニストはウェスティンに滞在しているので、どこで会うかを相談するために連絡を入れた。会話の中で、ピアニストは京都が初めてだというので、せめて清水寺だけでもと思い、連れ出して見物させた。 打ち合わせは食事を兼ねて行うことにして、ハイアットリージェンシー京都のダイニング「ザ・グリル」に入った。店に客はなく、従業員ものんびりと振舞っている。入口で対応した若い細身の男は、最初から気取った風を振りまき、鼻もちならない感じがした。 テーブルに着くと、彼は黙ったまま一枚のメニューを差し出した。口が利けないわけでないことは、入口でのやりとりでわかっている。せめてニコリとでもすればかわいいものの、高飛車な態度は受け入れがたかった。メニューだと思って眺めると、それは飲みもののリストだった。食前酒を頼めと、無言で命じられた気がして不愉快だった。 最初から飲みものは注文するつもりでいたので、ワインと発砲水を頼み、ついでに料理も最も高額のコースを注文した。さて、これで落ち着いて話が進められる。そう思ったのも束の間。ピアニストはBGMが気になって落ち着かないと言い出した。接待に夢中でそれどころではなかったが、言われてみればまったく同感だった。 それはジャズのセッションが熱狂の域に達した、スリル満点のプレイだった。どう考えても、このシチュエーションと音楽はマッチしない。これほど扇情的な演奏をレストランで流すとは、軍歌をBGMにするのと同じセンスである。 従業員にBGMを変えて欲しいと頼んだ。他に客はいないので、誰にも迷惑を掛けることはない。しかし、気取った従業員は、無表情だった顔をこわばらせて、視線を宙に泳がせた。「バカじゃないか」と言う彼の心の声が聞こえた。気にせず重ねて問うと、「別の場所からの集中管理で、ここでは一切コントロールできない」と言い訳した。 おそらく、音楽をコーディネートする企業に委託しているのだろうが、正直、そうした企業のセンスは信用できない。音楽のことは多少知っていても、ホテルを熟知していないからである。開き直る係に「この音楽はここに相応しいと思うか」と尋ねても、「私が決めたわけではないので」と更に開き直った。 話にならないので、すべてをキャンセルして席を立つことに。ウェスティン都へ行って、改めて食事と打ち合わせを成功させた。 部屋に戻ったのは22時。隣室は23時に到着した。やはりコネクティングドアは音が筒抜けになる。隣室のテレビ音声が気になって、その後は落ち着かない夜となってしまった。 朝食は6時半に「ザ・グリル」で。すでに数組の客がいたが、BGMを停止し、しっとりとした雰囲気に包まれていた。従業員は3人。ホールの客に目を行き届かせず、テーブルセッティングや、バックヤードでの作業に勤しんでいる。未熟な新人が陥りやすい状況が展開しているわけだが、宿泊に比べて飲食のレベルは低すぎると判断せざるを得ない。 |
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