風雅の宿 長生館 Sho-to-tei  
Choseikan
2009.12.23(水)
新潟県阿賀野市
楽-3

松濤亭の外観
 
寒さとの戦い

クリスマスディナーショーに出演するため新潟村杉温泉の長生館へ。ショーの当日は宿泊客も多くなることから、出演者に用意されるのは小さな部屋になることがほとんどなのだが、今回はどうしたことか明治時代に建てられたという由緒ある離れに泊まることになった。これは素直に喜ぶべきだろう。

この時期、村杉温泉はすでに深い雪で覆われていた。見事な庭園もすっかり雪化粧をし、眺めることはできても、雪解けまでは歩くことはできそうもない。この寒さは、秋以来、ほぼ連日の公演で疲れ切った体には、まことにこたえた。一瞬でも気を抜けば、たちまち体調を崩すに違いない。

そう直感しながら、意識して暖を取り、これ以上無理を重ねないよう細心の注意を払った。ショーがはね、スタッフたちと食卓を囲み、部屋に戻ったのは日付が変わる直前。せっかくのラジウム温泉に浸かる気力もなく、一刻も早く床に着きたかった。

だが、あまりに広い部屋は冷え切っており、ストーブをいくら焚いても追いつかない。ふとんにくるまって暖かくなるのを待つが、いつになっても震えが止まらなかった。

部屋は二間続きで、三方に障子があって、その周囲を廊下が囲んでいる。建築的意匠は大変素晴らしく、襖や欄間のひとつひとつにも心奪われてしまいそうだが、今回ばかりはそれどころではなかった。女将も大層気遣って、追加の暖房器具を用意してくれたが、自然の冷却機能の方が数段勝っていた。

この離れの名は「松濤亭」。1階だけでなく、2階にも客室があるが、洗面所とトイレは共用となっている。廊下にもストーブがあるが、トイレの中は自然の気温。昔の暮らしなら、こうしたトイレの寒さは当たり前だったことを思うと、資源に頼りきったライフスタイルを少々反省せずにはいられなかった。

こんな目の回るような体調でも、料理の味はしっかりと覚えている。高級素材を使わなくても、手間暇かければ見事なご馳走ができあがるのだと実感した。素朴な山里で出会う、昔ながらの日本の安らぎ。朦朧とした中にも、くっきりとした印象を残す滞在だった。

 
二間続きの和室 歴史ある建築美を楽しめる 窓に囲まれ明るい

奥の床の間 手前の床の間 縁側

二階へと続く階段 共同スペース 洗面所

窓の外は雪景色 庭園 池は凍ってはいない

 風雅の宿 長生館(公式サイト)
 以前のレビューはこちら→ 020310 050311

 


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