腹が空いていれば食事でもと考えるところだが、満腹な上に書き上げなければならない楽譜があったので、ラウンジで作業をしながら待つことにした。アールグレイティを頼み、フードカウンターからケーキと焼き菓子を取り分けて、ガーデンに面した大きなソファのコーナーに腰掛けた。外を見ると雨が木の葉を濡らしている。ラウンジ内の大型ディスプレイでは、ジュリアロバーツ出演の映画が流れるが、他に客もなく、静かな雰囲気の中、作業は効率よく捗った。

言われた通り、1時間後に部屋が用意できたとの知らせがあり、キーを受け取って自ら部屋へと向かった。ラウンジのある5階から、アサインされた6階の部屋へは、ラウンジ前にある階段でもアクセスできる。廊下を延々と歩いて辿り着いた部屋は、一番奥のコーナールーム。とは言っても、特段広いわけではなく、基本的にはミニマムなゲストルームのカテゴリーだと思われる。

角部屋なので心持ち横幅が広い他、脇に突き出たスペースを活用して、格段に広い収納コーナーを設けている。石のバゲージ台とワイドなクローゼットを配したそのコーナーだけでも4平米あって、扉があればウォークインクローゼットにもできただろうし、小さなドレッサーでも置けば、もっと心地よい空間になったかもしれない。だが、ハイアットらしくシンプルにサッパリと仕上げている。

バスルームはグランドルームとまったく同等だ。居室はというと、最もコンパクトな部屋とほぼ変わらない。窓際に寄せられた150センチ幅ベッド、窮屈そうに背中合わせになった1人掛けソファとデスクチェアなど、あまり落ち着かない雰囲気だ。また、窓に当たる雨の音が思いの外うるさく感じられたこと、そしてキャナルシティのイベントの音や、窓から入り込むラーメンスタジアムとゲームセンターの照明など、くつろぎを壊す要素に取り囲まれているのが非常に気になった。

部屋の設備にも不満がある。例えばカーテン。電動なのはいいが、開放か閉鎖かのどちらかだけで、途中で止めることができない。手動で開けようにも、そうはできない設計になっている。照明は調光ができる点はいいのだが、ボタンを押し続けることでゆっくりと明るさが変化する仕組みなので、結構じれったい。気取っているだけで使いにくいデザインというのは実に迷惑だ。