広いバスルームを持つミニマムルーム
2006.08.02(水)
グランド・ハイアット・福岡 Grand Club Guest Room
Grand Hyatt Fukuoka
楽-4

クラブラウンジのガーデンから見上げる外観 日本で初めてのグランドハイアットとして1996年に開業したグランド・ハイアット・福岡は、キャナルシティ博多の中に位置するインターナショナルホテルだ。ひときわ存在感があり、キャナルシティ全体のグレードを引き上げる役割をも果たしている。キャナルシティ自体には生活感のある店が多く、地元の人々の暮らしにとっての、ちょっとしたスパイスになっているような施設だ。観光客も多数訪れているようだが、貴重な時間を割いてまでここを訪れるような魅力は感じなかった。

今年で10周年を迎えるグランド・ハイアット・福岡は、いよいよサービスも円熟し、落ち着いた雰囲気のホテルになっているのではないかと想像していた。これまで、利用したいとは思っていても、その機会がなかなか持てず、今回が初めての滞在となった。

福岡空港からタクシーで20分程度でホテルに到着した。ドアマンが出迎え、ベルに引き継がれて、5階にあるグランドクラブラウンジに案内された。この日は、宴会場でどこかのジュエリー展示会が開催されており、館内はオバちゃんの大群でごった返していた。5階にはクラブラウンジの他、「なだ万」と客室もあるのだが、このフロアにも「なだ万」目当てのオバちゃんたちが進出していた。

オバちゃんをかき分けるようにしてクラブラウンジに入り、レセプションカウンターでチェックインを行った。係の対応は、丁寧で品がよかった。宿泊内容の確認や特典の説明なども、一切手を抜くことなく、とてもわかりやすかった。ただ、予定していた部屋の仕上がりは14時頃になるとのこと。この時、まだ正午を回ったところだった。できるだけ早く部屋に入れると嬉しいと頼んでみたら、スイートのコネクティングルームでよければとの断り付きで、10分で部屋を用意してくれた。

その間、クラブラウンジで一息入れることに。ルーフトップに独立して建っているという珍しいラウンジは、アーチ状の高い天井が印象的だ。まるで邸宅のリビングルームのような雰囲気で、いろいろなソファやイスが広い間隔を持って配置されている。3方をガラスに囲まれたサンルーム風のコーナーもあって、ルーフトップに設けられたクラブフロアゲスト専用のガーデンに通じている。ガーデンには自由に出られるようになっていて、せせらぎや遊歩道が設けられ、ガーデンというよりも公園のような開放感だ。全国に特別階用ラウンジは数あれど、このような環境を持っているラウンジは他にない。

ラウンジ内の飲食はセルフサービスだが、午後にはリーフの紅茶と共に数種のケーキやクッキーが並ぶアフタヌーンティが楽しめる。カクテルアワーは自分で創って楽しめるカクテルやワイン、温冷のオードブル、チーズ、小皿料理、フルーツなどが並び、クオリティもなかなか高い。特に生ハムとメロンが美味しかった。朝食も充実しており、滞在中のリビングルームとして、利用価値の高いラウンジだ。

今回利用した客室は、最上階にあたる12階にある、このホテルで最もコンパクトな27平米のゲストルームだ。狭い部屋だが、木の質感と上品なインテリアに囲まれた、居心地のよい空間だった。石、木、布、紙、ガラスなどの異素材と、水色、ベージュ、黒、白、透明色といった異なる色を巧みに使い分けるバランス感は絶妙で、完成度の高い調和を見せている。また、この客室は2名でも利用できるようだが、基本的にはシングルユースを想定してデザインされている印象だった。

入口を入って、バスルームが途切れるところまでは、床にバスルームと同じ市松風柄の石を敷いている。入口からバスルームの切れ目までと、そこから窓までとの距離を比べると、なんと前者の方が長い。ということは、居室よりも、バスルームと廊下の方が広いという珍しい部屋なのだ。確かに、バスルームは広くて立派に造られている。30平米未満の部屋に、これほど立派なバスルームがあるのは、他では東京プリンスホテルパークタワーくらいだろうか。

このバスルームは、グランドデラックスルームと同等になっており、狭い部屋だからといって妥協しなかったことは高く評価したい。面積は約7.5平米で、ガラスポウルの広いベイシン、深くて湯を溢れさせることもできるバスタブと洗い場を設けている。洗い場の壁は障子風のスクリーンを通じて自然光が入ってくるし、ベイシンとバスタブ脇の壁を鏡張りにしたことで、一層広々と感じられる。また、空間を仕切っているのは、簡単なガラスのスイングドアだけなので、バスルーム全体がひとつの空間になっていることも、開放感を高めている。造形に変化があって、遊び心も感じられ、しかも快適と、三拍子揃った秀逸なバスルームだ。

一方の居室は、150センチ幅のベッドが1台と、壁に組み込まれたテレビとミニバー、そしてデスクだけの、シンプルでさっぱりとした空間になっている。イスはデスクに添えられた重たいアームチェア以外にはなく、コーヒーテーブルの類も置いていない。ややくつろぐための場所が足りない気もするが、この広さでは仕方がないだろう。デスクはガラス板だけで出来ており、引き出しがない。テレビの下には冷蔵庫とミニバーの他、FAXやLANも収納されている。また、すべての家具がいわゆる置き家具ではなく、壁などに組み込まれている点も特徴的だ。

照明はよくデザインされている。ハロゲンのスポットとベッドサイドのブラケットのみで構成され、スタンド類はひとつもない。ベッド周辺のライティングは調光が可能になっているが、調光するにはスイッチを長い時間押し続けなければならず、少々まどろっこしかった。マスタースイッチをオフにすると、照明がゆっくりと消灯するようになっており、この演出効果は大きい。

今回の滞在では館内のレストランを利用する機会がなかったが、キャナルシティに軒を連ねる店とは一線を画したインターナショナルグレードの設備が整っている。その割にはランチタイムを中心に、手頃な値段設定になっているように感じられた。フィットネスクラブも完備しており、ビジネスでもレジャーでもトータルで充実した滞在が楽しめるホテルだと見受けられた。

 
シンプルモダンな室内 ベッドは150センチ幅 家具類はすべて据付

光を透過させるバスルームの障子風壁 ベイシンはガラス製 バスタブは湯を溢れさせられるタイプ

石を使ったバスルーム バスタブ脇の洗い場 バスタブから洗い場を見る

フィットネス内のプール クラブラウンジ クラブラウンジ

ガーデンからクラブラウンジを見る サンルームのように明るいラウンジの一角 ガーデンのせせらぎ

 
グランド・ハイアット・福岡


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