ホテル内は、よく冷房が効いている。昨年暮れに利用した時と違って、チェックインはスムーズだった。東京全日空ホテルのマネジャーが手配してくれた通り、最上階のスイートが用意された。このホテルでは最高級の客室だが、面積は40平米しかない。ラックレートで45,000円と、料金も手頃。シングルルームはオバケが出そうなほど陰気な印象しかないので、スイートと言っても名ばかりではないかと、まったく期待せずに来た。だが、実際に利用してみたら、懐かしい応接間のような内装で、思いのほか快適であった。

エントランスを入ると、すぐに独立したトイレの扉があり、奥に進むとワンルームになったリビングベッドルームになっている。小さなライティングデスク、ソファセット、テレビキャビネット、ベッドという設えだ。ソファは英国風のどっしりした造りで、レースの肘当てや背当てが掛かっているのが懐かしい感じ。テレビの下には2台の冷蔵庫とビデオデッキが収納されている。なぜ冷蔵庫が2台なのかは謎だが、両方ともほぼ空っぽ。片方に、無料のミネラルウォーターが2本入っているだけだった。

ベッドはハリウッドツインスタイルに並んでいて、ふっくらとした寝具を使っており、寝心地は良かった。ナイトランプのほかに、ベッドボードの上に蛍光灯の間接照明を備えている。クローゼットの扉も艶やかな木目がいい雰囲気を醸していて、中には珍しいネクタイプレッサーが用意されている。シャンデリアやブラケット、厚手のカーペットや天井の飾りなど、室内を重厚に見せる工夫が随所に施されており、スイートらしいクラス感がある。

バスルームはアウトベイシンで、ベイシンにもバスルーム内にも立派な大理石をふんだんに使っている。大型バスタブの脇には洗い場を設け、ゆったりとしたバスタイムを楽しめるよう工夫してある。浴室金具の種類などから想像すると、90年代の初頭に改装されたものと思われる。アメニティにはそれほど思い入れを感じない。男性化粧品の標準サイズボトルを備えるが、いったいいつから使っているのかと思うほど、見るからに古いものが置かれている。タオルは豊富に用意されるが、バスローブは備わっていない。

反対側向きの部屋からは眺望はないに等しかったが、この部屋の向きだと結構開けた景観が望める。信濃川や万代橋が見えるし、夕日がなんとも美しかった。すぐ下に目をやれば、人々でごった返すイベント会場も一望できる。そのお陰で、夜遅くまで喧騒に悩まされた。翌朝は、アンパンマンショー。握手を求める長い列ができていた。

ホテル内のレストランも混雑しており、特に夕食の予約が取れずに困ってしまった。すべてのレストランが終日満席とのことで、仕方なくロビーラウンジで食事を出してもらうことに。黒毛和牛のサーロインステーキコースを注文したが、きつい冷房の下だからか、運んでくる間に冷めたのか、スープからステーキまで、どれもよく冷えていた。だが、デザート代わりに注文したホットケーキは、手作りのいい味だった。この時、連れが座席に忘れ物をしてしまったのだが、翌日立ち寄ったら保管してくれていた。部屋付けで食事をしているのだから、忘れ物を見つけた時点で連絡してくれてもよさそうだが、そういった気は利かないようだ。

朝食はブッフェスタイルが1,500円で提供される。野菜料理が充実しているのが嬉しい。フレッシュフルーツジュースや、ゴマバナナジュース、カスピ海ヨーグルトなどもある。

チェックアウトから次の約束まで数時間の余裕があったので、市内を気ままに散歩してみることにした。最初は古町あたりまで行って戻るつもりだったが、そのまま海岸まで歩きたくなった。海が近づくと、店の類は少なくなり、住宅街になった。坂の向うに海が見えたりして、何となく湘南の風景にも通ずる。ふらりと歩いて気が付くと、はるばると新潟市水族館「マリンピア日本海」までたどり着いた。いるかショーなどを見物して、帰りには市内の見所を巡るバス「ドカベン号」に乗って戻った。ちょっとした観光気分を味わうことができた。