万代シルバーホテルの周辺には、百貨店やファッショナブルな店が揃い、若者が集まるスポットになっているようだ。目の前には郊外へと向かうバスターミナルもあって、常時多くの人で賑わっている。館内へのエントランスは正面と裏にあるが、どちらにも車寄せはなく、ビジネスホテルのような感じだ。裏口から入ったところ、入口に係が立っていたので、フロントの場所を尋ねたら丁寧に教えてくれた。
フロントは4階にあり、エレベータは2基だけ。エレベータはそのまま客室階へも行けるし、2階の本屋さんにも停止する。ロビーは古びた雰囲気だが、照明が抑えられており、昔の写真を見るようだった。どの家具を見ても年代を感じされ、熱帯魚が泳ぐ水槽も、タイムスリップした気分を盛り上げてくれる。
ロビーの奥には「サンセットラウンジ&バー」があり、名前こそしゃれた感じだが、70年代の喫茶室という趣き。時が止まったようにくつろいでいる老年のゲストが、ピッタリとマッチする空間だ。フロントには中年の男性スタッフと若い女性スタッフが数名立ち、サービスは不器用ながらも低姿勢で親切だった。ベルアテンダントは置いていない。
ホテルの建物はT字型で、増築された部分もあるようだ。利用した客室は標準的なツインルームだった。20平米程度とコンパクトな室内には、2台のベッドとテレビ、デスクが入って精一杯。ベッドは左右で幅が違い、窓際の方が狭く、エキストラベッド並みだ。窓の外はマンションなどが見え、何ら目を楽しませるものはない。
クローゼットは薄く、扉の代わりにカーテンを使っている。テレビは96年製のワイド型だが、冷蔵庫はかなり古そう。ソフトドリンクが160円と手頃なのがうれしい。LANは全室無料で利用できるが、電話機はデスクに1台だけだった。バスルームはシングルルームのもの程度の広さで、入口の段差が高いのが気になった。アメニティも最低限で、入浴剤やコットンセットなどはフロントで販売している。
全体的に家具の傷みも激しく、ファブリックや照明のセンスも今ひとつなので、部屋にいると気が滅入りそうになるが、それを救ってくれたのが、TVプログラムにあるリラクセーション用のエコミュージックTVだった。ふわりとした音楽が、なんとなく緊張を解いてくれ、青いピローケースに収まったカテキン入りの低反発枕でリラックス。とはいっても、ここは活動派のためのホテルだと思う。
朝食は頑張っていた。4階の「ダンスィングドール」という赤面しそうなネーミングの店だが、店内はオーソドックス。フレッシュのバナナジュース、調理人が目の前で作るオムレツ、絞りたてのグレープフルーツジュースなど、気合たっぷりだ。その他、和洋の料理が揃い、結構楽しめるのだが、卓上にしょうゆ瓶がそのまま置いてあるのが、ちょっと社員食堂風でかっこ悪い。ご飯や味噌汁は係がよそってくれることになっているが、不在であることが多かった。
また、コーヒーはデカンタが2つ用意されているが、残り少ない方はかなりの時間放置されている様子。スタッフが他のスタッフのために注いでバックヤードに持っていったのは、多く入っている方からだった。自分たちも飲むのをはばかるようなものを、客に飲めというのだろうか。時間が経ったものは廃棄すべきだと思う。品揃えはよくても、サービスが陰気。オークラの朝食が圧勝だ。
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