客を大切にするホテル |
2006.04.17(月)
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仙台ロイヤルパークホテル Executive Suite | |
Sendai Royal Park Hotel |
楽-5
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東京駅から仙台駅までは新幹線に乗ってしまえば1時間40分。スピーディでとても便利だ。だが、仙台ロイヤルパークホテルまでは、そこからまだ先が長い。JRの仙台駅から地下鉄仙台駅まで、地下通路で徒歩5分程度掛かり、地下鉄南北線に乗って泉中央駅まで16分、更にそこから送迎バスかタクシーで15分〜20分を要する。泉中央駅からホテルまでのタクシー料金は約2,000円だった。アクセスするだけでも結構くたびれる。
例えば、東京駅で新幹線を降りてから、舞浜のオフィシャルホテルに行くとしよう。地下通路を経由して京葉線ホームまで徒歩10分、京葉線で舞浜駅まで約15分、そしてタクシーに乗ったとしてせいぜい5分、1,000円でお釣りが来る。都心からホテルまでのアクセスで比較すると、仙台ロイヤルパークホテルへ行くのは、舞浜のホテルに行くよりも大変だということだ。 だが、ホテルに到着した瞬間、そんな疲れは吹き飛んでしまった。タクシーに駆け寄り、颯爽と出迎えてくれた係にフロントまで案内。薦められたイスに掛けると、今度はフロント係が「ようこそお越しくださいました、神田様。5年半ぶりですね。」と、久しぶりの再訪を心から喜んでくれた。更に「前回お越しの際にも、私がチェックインをさせていただきました。」と一言。なるほど。それにしても、よく覚えているものだ。結局、一度もこちらから名乗る必要はなかった。 そこに、総支配人も顔を見せ、到着を待っていたと歓迎の言葉を添てくれた。今回、このホテルに泊まりに来ることはあえてアナウンスしていなかったので、宿泊客の名前を日々きちんと把握するよう努めていることが伺え、さすがだと思った。 今回の客室は、廊下の一番奥に位置するエグゼクティブスイート。リビングルーム、ベッドルーム、バスルームから構成される約60平米のスイート。入口を入ると、すぐにゲスト用のトイレとクローゼットがあり、リビングルームへと続いている。リビングには、ゆったりとした4名用のソファセットとテレビやミニバーを収納したアーモアのみというシンプルなレイアウト。ヨーロピアンスタイルのエレガントなデザインの家具を使いながらも、淡い色調でコーディネートされたインテリアは、控えめで落ち着いた印象だ。 アーモア内のテレビは古いタイプだが、DVD/VHSプレイヤーを備え、ディスカバリーチャンネル、MTV、ムービープラスなどCS放送も充実。ミニバー冷蔵庫のソフトドリンクは150円と安く、カップ&ソーサーや無料のハーブティの用意もある。リビングにはバルコニーが設けられ、庭園の風景とともに、新鮮な空気を室内に運んでくれる。 フレンチドアの向こうには、三角形をしたベッドルームが広がっている。3面の窓を持ち、開閉も可能だが、バルコニーはない。ベッドは190センチ幅で、高さは43センチと低め。柄物のベッドスプレッドを外すと、むき出しのデュベが現れ、デュベの下にシーツを1枚敷いたスタイルだ。ライティングデスクはベッドルーム内に設置され、無料のLANも備える。だが、室内にコンセントが少なく、みつけても床の低い位置にあってやや不便だったので、今後の整備が待たれる。他に、コーヒーテーブルとアームチェアが置かれ、就寝前のくつろぎのひと時に打ってつけだ。ベッドルームにあるテーブル類はすべて天然石の天板を使い、グレード感を醸している。 ベッドルームとバスルームの間には、ドレッシングルームを兼ねた前室があり、クローゼットや引き出しなどの収納スペースを備えている。窓があるので、自然光が入って明るい。引き出しには、バスローブが4着と、浴衣とナイトウェアが2着ずつ用意されている。 続くバスルームは、約11平米の面積がある非常にゆったりとした空間だ。ダブルのベイシン、180×92センチサイズの大型バスタブ、ガラス張りのシャワーブースを備え、トイレもバスルーム内に設置してある。アメニティは種類豊富に揃うが、平凡な品物ばかりなので、もう少しクラス感があった方がいいように感じた。タオルは3サイズが4枚ずつ用意されるものの、肌触りが今ひとつだった。それでも、扉を開放すれば前室を通じて自然光が入り、ついつい長く入りたくなるバスルームだ。 客室の清掃状態は実に素晴らしく行き届いている。たくさんある窓に掛かるドレープのヒダまでが、すべてきちんと揃えられており、まさに折り目正しい品格を感じさせる。その端整さは、客室だけにとどまらない。パブリックスペースは、どこを取っても立派な調度品や花々に彩られ、非常に質感が高く、庭の手入れにも抜かりはない。ロビーラウンジ「フォンテーヌ」では、リチャードジノリやヘレンドなどのデリケートで高価な食器を使って、優雅なティータイムを楽しめる。 夕食は、フレンチレストラン「ヴァンセンヌ」でひとりディナーを。コースは6,930円から11,550円まで3種類が用意されているが、今回はアラカルトで好きなものを注文してみた。アミューズに赤ピーマンのムースが振舞われ、パンは香ばしい焼きたてが運ばれる。オードブルは鴨のローストにフォアグラを添え、トリュフのソースで仕上げたもの。続いて伝統的なオニオングラタンスープ。メインは帆立貝のエチュベにキャビアを挟み込んだもの。刺身に限りなく近いレアでさっぱりと。デザートは、フルーツを適当にカットしてもらった。これだけオーダーし、ワインも飲んで8,000円程度と手頃なのに、味も盛り付けもそれ以上の価値を感じる。白いテーブルクロスにナプキン、そして大きなキャンドルがセットされ、次第に暮れてゆくガーデンを眺めながら優雅な時間を過ごせた。 このホテルの居心地の良さを言葉で伝えるのは難しい。現実感から引き離されて、ここだけが別の世界に存在するような感覚だろうか。だが、例えば東京から、このホテルを訪れるだけの価値はあるのだろうか。館内で一日中過ごすとなると、やることが限られてしまう。アーユルヴェーダが充実したサロンはあるが、それだけで間を持たせるのは難しい。時間と金を掛けてまでこの地を訪ねるには、何かが足りない。到着した頃はそう思っていた。だが、食事が済んでコーヒーを飲みながら、ふと気付いたことがある。こんなに自分と向き合う時間は、いつ以来だろう。美しいものや心のこもったものに囲まれて、静かな時間を過ごすという贅沢。何もすることのないホテルだからこそ、気が付けば自分と向き合っている。 朝食は「ヴァンセンヌ」のテラス席を選んだ。少々風があるが、日差しがあって心地よい。ガーデンを独り占めして、鳥のさえずりと滝の音を聞きながらの朝食は最高だ。ブッフェは和洋揃うが、洋食が充実している。美味しく焼きあがったパン、オリジナルのフレッシュ野菜ジュース、見た目にもきれいに仕上がったオムレツが印象的だった。テラスにもサービスは行き届き、コーヒーが冷めた頃を見計らって、熱いものと取り替えてくれた。 出発時には、フロントの係が揃って見送ってくれた。この日は仙台市内でコンサート。すっかりリフレッシュして気分もいいので、とびきりいい演奏ができそうだ。 |
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