1999.09.18
いくつもの顔を持つホテル
仙台ロイヤルパークホテル Presidential Suite
喜-4杜の都、仙台を訪れる機会があり、仙台ロイヤルパークホテルに宿泊した。三菱地所が展開するロイヤルパークホテルズ7番目のホテルとして、95年4月8日にオープンしたこのホテルは、仙台の中心からは車で30分の距離にあり、都市ホテルの機能とリゾートホテルのくつろぎを同時に実現した、ハイグレードなホテルだ。「泉パークタウン」の中核施設として、コミュニティホテルの役割も果しつつ、三菱地所のゲストハウスとしての性格も強く出ている、ユニークなホテルだ。
今回は東京から車で出掛けたのだが、東北道に乗ってからはとてもスムースで、泉インターを下りたら5分程度でホテルに到着した。ホテル周辺が渋滞することはなさそうだから、道路混雑が著しい市街地のホテルへ行くよりも早くチェックインできるかもしれない。ヨーロッパのマナーハウスを意識したという建物は、エントランスからその雰囲気がよく出ており、広々とした立派な車寄せが訪れるゲストを出迎えてくれる。地下にある駐車場はチケットもなにもなく、フリーで停めることができることにも新鮮な驚きがあった。
エントランス右手にレセプションがあり、チェックインはすべて椅子に掛けてデスクで行う。「ロイヤルホスピタリティ」をキーワードに、パーソナルで高品質なサービス提供を心がけているそうだが、サービス面は実に素晴らしかった。もてなしの心がとてもよく伝わってきてなんとも心地よい。ハード面の追求に力を入れてばかりで、サービスの洗練がおざなりになっている昨今のホテルでは、珍しく特筆に価するほどに快適なサービスが、チェックインの瞬間から絶えず続いた。ビジネスサポートにおいても申し分ない迅速さで、正直驚いた。
客室は3階から6階に、のべ114室があり、レセプション奥にある2台のエレベータを利用する。宴会場は反対のウイングに集約されているため、宿泊客と7階のレストラン・バーを利用するゲストのみなので、2台でも待たされることはなかった。このエレベータ、天井が高くて木目が生きた、なかなか優れた内装だった。
6階には2室のスイートと3室のデラックスルームの5室だけしかなく、エレベータホールや廊下のインテリアは、一般階に比べひときわ豪華になっている。この日の客室は最高級客室ロイヤルスイートの並びに位置するプレジデンシャルスイートを利用した。エグゼクティブスイートとレイアウト違いの同面積だが、6階の南正面に向いていることと、内装がよりアップグレードなことから2万円の差がある。
客室に入るとすぐに前室があり、右にゲスト用トイレ、左が寝室、正面フレンチドアの向こうがリビングルームになっている。横浜のロイヤルパークホテル同様、ウィルソン&アソシエイツによるヨーロピアンスタイルながらモダンなインテリアは、洗練度が高いだけでなく、高品質な家具を採用し快適な環境を演出している。アーモア、ソファセット、ライティングデスク以外には何もなく、スッキリとした印象でゆとりある空間配置がなされている。
一般客室より10センチ高い270センチの天井とワイドな窓により、圧倒的な開放感が感じられるリビングだ。金の塗装が施されたアーモアにはオーディオとビデオを備え、左の扉内はミニバーになっている。充実したCATVでは、ミュージックチャンネルを含む多彩な衛星放送を無料で楽しむことができる。このあたりは都心のホテルにも見習ってほしいものだ。また、ミニバーは非常にお手頃な価格に抑えられており、ソフトドリンクはなんと150円だ。ルームサービスも比較的低価格で、コーヒーは450円となっている。
寝室には、140センチ幅のベッドが2台入り、アーモアと荷台、ソファがある他、ウォークインクローゼットを備えている。全体に引き出しが多数あるのがうれしい。リビングと寝室にはそれぞれバルコニーがあるが、椅子やテーブルは用意されていない。バスルームは、入口にドレッシングスペースがあり、奥に行くにしたがって、ダブルベイシン、シャワーブース、トイレ、バスタブが配置されている。壁は大理石張りだ。バスタブは長さ160センチの大型サイズで窓に面しており、外光が降り注ぐだけでなく、珍しいことにその窓をわずかながら開けることができるので、外の風を感じながら入浴することも可能だ。
アメニティは全室共通で一通りのものは揃うが、品質的には客室のグレードにふさわしいとは思えなかった。タオルはスリーサイズあり、バスタオルのみ4枚でその他は2枚ずつ用意されていた他、バスローブが2種類あって、それぞれ2着ずつ備わっていた。シャワー、カランともに水圧が十分だったが、シャワーブースの排水があまりよくなかった。
ガーデンフロアにはプール&サウナがあり、宿泊客は1回1,000円で利用することができる。施設内は小ぢんまりとしているものの、リラックスできる雰囲気にコーディネイトされており利用価値は大きい。ロビーフロアにはロビーラウンジ「フォンテーヌ」があって、ロビーから一段低くなっている上に天井が高いので、ロビーから覗いてみるよりは、実際に席についた時の印象の方が、空間の広がり感が強かった。
ゴルフ場をコンパクトにしたような庭園を見下ろすゆったりとした配置の座席で、パレットデザートとコーヒーのセット1,300円にトライしてみた。今の季節は洋梨がテーマで、たくさんのお菓子がパレットに並び、これだけで十分おなかがいっぱいになってしまった。量だけでごまかすのでなく、一品ごとに味わいがあり、飽きずに食べることができる。コストパフォーマンスも優れているように感じた。
ロビーラウンジのちょうど真下に位置し、庭園を望む「ヴァンセンヌ」は、朝食からディナーまで、もっとも長い時間営業しているレストラン。いわばオールデイダイニング的な存在だが、時間帯によって営業形態や雰囲気をガラッと変えている。
ディナータイムには本格的なコンチネンタル料理を、ヨーロピアンスタイルのサービスで提供しており、料金も手頃ながら昼に比べるとかなりアップする。一方ランチタイムには、カジュアルなスタイルで、非常にリーズナブルなセットメニューや、2,500円のブッフェを用意しており、コーヒーショップ的な色合いが濃くなる。お客も近隣の奥様方中心と、店内にはコミュニティホテルらしい光景が広がっている。
ホテルにチェックイン後、ちょっと遅めの昼食をとることになり、ブッフェを注文してみた。店自体がさほど大きくないので、東京のホテルのように何を食べようかと迷ってしまうほどのバラエティこそないものの、その分品質に力を入れている印象で、もう終了間際の時間だというのに補充がしっかりとしてある。特に目を引くのは、目の前で焼き上げてくれる鉄板焼だ。
エイジアンオードブルに新鮮なサラダ、冷製パンプキンスープとその焼き肉、そして豊富なデザートやフルーツだけで、2,500円の価値は十分にあるように思う。もちろんコーヒーも付く。デザート類は箱崎のロイヤルパークホテルと遜色ない出来映えで、箱崎でも評判のカスタードプディングは、ここでも味わうことができる。市街地のホテルとは違って、非常にゆったりとした時間が流れており、サービスもそれに似合った心あたたまるもの。機会があれば、雪景色の頃に出向き、梅崎総料理長の料理に舌鼓を打ってみたいものだ。
ホテル最上階にあたる7階には、中国料理レストランとラウンジがある。普通ならフレンチレストランが位置しそうなロケーションに中国料理店を配しているが、近年のレストラン需要や地域性を考えると、これは正しい選択だったと思う。
この日20時30分からと遅い時間に来訪したが、週末だったこともあってかほとんど満席に近く、かなりの賑わいを見せていた。祖父母や社会人になった子供を同伴した、2世代ファミリーが多いように見受けられた。
店内は「ヴァンセンヌ」同様、非常にコンパクトでアットホームな雰囲気があるが、インテリアは西洋風にアレンジされており、洗練された空間に仕上がっている。ちょっと見にはフレンチレストランだといっても通用するかもしれない。
ディナータイムのコースは4,000円から用意されており、月替わりで内容が工夫されているようで、9月は家鴨を中心にコースが組まれている。今回は8,000円のコースを注文してみた。東京のホテルで8,000円の中国料理といえば並クラスの内容だが、仙台ではフカヒレの姿煮やアワビまでコースに盛り込まれいる。
インテリア同様、料理の盛り付けも西洋料理を意識した非常に端正なもので、見るからにおいしそう。サービスもタイミングよく、とても快適だった。地域の人々にも評価され、連日賑わっているのもうなずける。
「源氏香」でランチが950円からあるなんて!
かなり驚いてしまった。鉄板焼コーナーでさえ1,500円からのラインナップだ。かといって手を抜いていることはない。きちんと布のナプキンが置かれ、着物姿の女性スタッフによる快適なサービスが提供される。庭園を望むテーブル席はゆったりと配置され、箱崎の「源氏香」とよく似た雰囲気だ。そんな中、週替わりのランチは1,200円、おすすめランチが1,500円など、かなりのオトク度だ。
あまりゆっくりと食事をしている時間的余裕がないながらも、松花堂弁当2,800円を注文した。あまり時間がないことを告げると、スピーディにサービスしてくれ、1時間を要さずに食事を終えることができた。
1999.09.23
ロイヤルホスピタリティ
仙台ロイヤルパークホテル Superior Room
喜-4先週に引き続き、車で仙台に出掛けた。当初の出発日は24日だったが、台風の接近に伴い交通麻痺が懸念されたため、予定よりも一日早く出発することになった。ところが仙台のホテルはどこも満室。ロイヤルパークホテルも、直接電話を掛けたところゴルフ関係の団体予約が入っており、客室は確保できなかった。半ば諦めながらもJTBに問い合わせたところ、サマープランに空きがあった。
1室2名朝食付き9,500円と破格だったので、この価格では多くを期待できないと思われたが、チェックインも、かなり遅くなることが予想されたし、翌日は早い時間に出発する必要があったので、ベッドが確保できただけでよしとするつもりだった。
途中の高速道がスムースだったので思いのほか早く、午後8時過ぎには到着することができた。到着時、エントランスに従業員の姿はなかったが、程なく中からディレクタースーツ姿の従業員が出迎えに来て、カートで荷物を運んでくれた。その際の物腰はとてもやわらかく、駐車場の案内も的確かつ丁重で、最近のホテルマンによく見られる尊大さは微塵も感じられなかった。
すでにロビーはひっそりとしており、フロントには男性スタッフが多く、ナイト勤務体制の入っている雰囲気だった。先ほどのディレクタースーツの従業員を除くと、平均年齢がかなり若いのだが、みな丁寧で感じがよく、長距離を車で移動した疲れがすぐさま癒されてゆくようだった。
案内された客室は5階のスーペリアルーム。ツインタイプの客室としてはこのホテルでもっとも小さく、数も多い客室だが、その水準の高さには驚いた。約38平米だという広さは、新しいリゾートホテルを基準に考えれば平均的かもしれないが、仙台のシティホテルでは最大の面積だ。客室は横に長く取られ、その横幅一杯に窓があり、その向こうにバルコニーがある関係で、床までガラス張りになっている。天井高は260センチ、スーペリアルームは全室南向きにあるので、日中は抜群の採光が得られる。
この広々としたスペースに120センチ幅のベッドが2台、テレビとミニバーを収納したアーモア、ライティングデスク、リビングセット、荷物台が置かれてもなお、かなりの空きスペースがある。また、バスルームにも十分なスペースを割き、シャワーブース、洗浄機能つきトイレを備えている。バスルーム内の照明が明るいこと、BGMを聞くことができること、シャワーの水圧が高いことなども、快適なバスタイムを過ごすに当たっては、とてもありがたいことだ。
ひとつ不便に感じたのは、エキストラでタオルを頼んだ場合、タオルを置くラックがないことだ。元から用意されている2枚のバスタオルは、タオル掛けに掛けられているのだが、それ以上掛けることはできない。エキストラのタオルはベイシン脇に積んでおくしかないようだ。アメニティは先週利用したスイートとまったく同等。バスローブは備えられていない。
空調は全館4管式の空調を採用しており、いつでも好みの室温に調節可能だ。因みにデラックスルームは、南正面に位置するタイプと6階の北側に位置するタイプがあるが、南向きのタイプはバスタブ脇に窓が付いている。北向きの方が広いが、バルコニーがないこと、バスルームに窓がないこと、日当たりがよくないことなどのデメリットがある。また、スーペリアと南向きデラックスを比較した場合、バスルームの窓と、ダブルベイシンになること以外、設備的には大差がないので、コストパフォーマンス的には、スーペリアの方が優れているとの印象を受けた。
総合的なサービスの優秀さ、設備の充実度などを考えると、東京のホテルもうかうかしていられないかもしれない。機能的だが、どちらかというとクールな印象の東京流サービスよりも、親身で人間的なこのホテルのサービスの方が、ホスピタリティの本質には近いと思う。こんなホテルが東京近郊にあってくれたらと、切に願わずにはいられない。
チェックアウト前に、ロイヤルスイートをショールームさせてもらった。ラックレートで250,000円の客室は、さほど広くはないが、希に見るほどに照明効果の高い客室で、光の使い方が実に素晴らしかった。日曜日に女性2人で予約を入れた場合、ロイヤルスイートに一般の予約がない限り、17時にロイヤルスイートに集まって抽選会に参加することができるそうだ。見事当選した場合、そのままロイヤルスイートに宿泊でき、更に館内衣装室で選んだ好きなドレスを着ての記念撮影、ルームサービスでのスペシャルディナー、プリティウーマンでリチャードギアが注文したのと同じ内容のブレックファストが楽しめるなど、至れり尽くせりの特典が付く。若い女性に当選すれば、婚礼などの需要につながりそうだが、実際にはオバサマ方が当選するケースが多いそうだ。このプロモーションは10月一杯まで。かなりの当選確率だそうだ。
到着が予定よりも早かったお陰で、館内レストランでの夕食に間に合った。フロントで梅崎総料理長を探してもらったが、すでに勤務を終え退社していたので、「ヴァンセンヌ」でのコンチネンタル料理はまたの機会にということにし、先週と同じく最上階の中国料理「桂花苑」へ行った。入店したのは20時30分過ぎだったが、祝日にもかかわらず先週の土曜日の同じ時間に比べると、やや店内は落ち着いていた。
ところが、働いている従業員たちの顔にどっと疲れが浮かび上がっているところを見ると、この日一日、昼からずっと混雑を呈して、体力的にかなり消耗しているように見受けられた。それでも皆笑顔を絶やさず、タイミングよいサービスを提供してくれるので、お客にとってはまったく不足がないのだが、サービスというものは体力が勝負だなと、つくづくと感じさせられた。
入店してから30分ほどすると、それまでの賑わいがウソのように静まり返り、店内には我々のグループと他に2組を残すだけになった。こうして、サービスに余裕が出てくると、隠そうにも一層顔に浮かぶ疲れが色濃くなってくる。マラソンのラストスパートを見るようだ。仕事後には、ゆっくりと足を休ませてあげてほしい。
この日の料理は、6,000円のコースにして見た。先週の8,000円のコースから、アワビの煮込みがなくなり、フカヒレの姿煮がフカヒレ入りスープになり、車海老が芝海老になる。価格設定としては適正な感じがした。また、JTBからドリンクチケットがプレゼントされ、それを利用してグラスのワインを。
ホテル全体で、ワインの販売に力を入れているようで、グラスワインならば赤白各3種ずつの銘柄を、90cc、120ccと2種類の分量で注文できるようになっている。また、この6種の銘柄に関しては、無料でテイスティングができるので、味わってみてから好みの1杯をオーダーすることも可能だ。
久しぶりの晴天に恵まれた仙台で、素晴らしい朝食を楽しんだ。小鳥のさえずり、芝の緑、やわらかく差し込む初秋の日差し。それらを全身で感じながら、薫り高く熱いコーヒーを飲む。心地よいベッドで疲れを癒し、すがすがしい目覚めの後にテラスで取る朝食は、ホテルライフのクライマックスになる。増してや、今回は1泊9,500円のうちにこの朝食も含まれているのだから、驚きのコストパフォーマンスだ。
朝食は洋食セットメニューの他に、和洋のブッフェが用意されている。ランチブッフェ同様、バラエティこそ多くはないが、目の前で丁寧に焼いてくれるオムレツや、地元の人たちにも人気の各種デニッシュ、その場でブレンドして作るフレッシュ野菜ジュースなど、クオリティは高い。また、おいしく炊き上がった白飯に、宮城名産の各種珍味、焼き魚など、どれもこれも食べたくなるような料理が豊富に並んでいるので、和食党でも満足できるだろう。
テラスへの出入り口は一個所だけなので、ブッフェ台まではかなりの遠回りなのだが、その距離を苦痛に感じないほど、テラスのロケーションは素晴らしい。ところが、この日は久しぶりの雨上がりということで、芝刈りの職人が入っていたため、食事の途中からガーガーと芝刈機の唸る音がせっかくの雰囲気を台無しにしてしまった。芝は雨が降ると一気に伸びるそうで、およそ3週間に一度程度、ランダムに手入れをする必要があり、かなりの経費が掛かるそうだ。
まぁ、仕方ないなと思っていた矢先、サービススタッフが職人に近づき、なにやら耳打ちをすると、ここでの芝刈りをやめ、ホテル棟の反対側に移動していった。その気配りのお陰で、再び滝からほとばしる水の音が聞こえるようになった。こうしたさりげない気配りが、このホテル全体のサービススタイルを如実に表している。
Y.K.