2000.06.11
バスルームがデラックス
仙台ロイヤルパークホテル Deluxe Room
楽-3コンサートの打ち合わせのため、会場となる仙台ロイヤルパークホテルに出向いた。いつもどおり東北道をノンストップで駆け抜け、都心を過ぎてからは3時間足らずで正面玄関に到着した。シックなユニホームをかっこよく着こなしたスタッフに導かれてスムースにチェックイン。サインだけの手続きを済ませるとすぐに部屋へと案内してくれた。バンケットセールスから予約を入れてもらっていたので特にルームタイプを指定していなかったが、部屋に入ってみるとデラックスルームであることがわかった。
丁寧に清掃され、おそらくぎりぎりまで最終チェックにも厳しい目で臨んでいたのだろう、誰もいない客室ではあったがそこには確かにチェックした人が残していったもてなしの心のようなあたたかい気配が感じられた。客室はバスルームを贅沢に取っているのが特徴で、主に寝室とバスルームの2つに分けたようなレイアウトになっている。寝室には125センチ幅のベッドが2台、ライティングデスクとアーモアが置かれスーペリアルームとほぼ同じ設備だが、スペースはかえってスーペリアの方がゆとりある配置となっている。アーモアにビデオデッキが備わっているのもデラックスルームならではのようだ。
天井は270センチあり、窓も大きいのでかなり開放的な印象。以前はアーモア内に設置されていた湯沸しポットや日本茶のセットがライティングデスク上に引越しをした。新たにハーブティやインスタントコーヒーを導入し、マグカップも置くようになって手狭になったこともあるようだが、独立したライティングデスク上に濡れるものを配置するのはあまり感心しない。第一コンセントがデスクの下にあるため、湯を沸かそうにもかがみこんでコンセントを差し込まなくてはならないのは面倒だ。
一方バスルームはそのままスイートのバスルームをくっつけてしまったような充実ぶりで、10平米近い面積を割いている。壁面は総大理石張りで、開閉できる窓に面した大きなバスタブ、洗浄式トイレ、シャワーブース、ダブルベイシンが天井高235センチのゆとりある空間に配置されている。アメニティは前回宿泊したときとは全面的に変わり、箱に入っていたアイテムがすべて袋包装になったほか、ボディスクラブやクレンジングフォームなどの女性を意識した新しいアイテムも登場した。石鹸の種類も変わってサイズが大きくなったが、その分ひとつしか用意されなくなった。ポンプ式のボトルに入ったハンドソープは健在。またバスルーム前にあるクローゼットの扉がすべて鏡張りになっているのも便利だ。
料金を見るとスーペリアルームとの間には8,000円の差がある。スーペリアルームはバスルームがタイル張りだが、全体的に見ても十分に広く設備に不足はない。そう考えると部屋で過ごす時間を中心に考え、ひときわリラックスしたバスタイムを楽しみたいという趣旨がない場合には、スーペリアルームでも十分だと思う。
コンサートで実行委員を務めてくれている若者を招いて会食会をした。夕方の早い時間に集まる予定だったので、当初はアフタヌーンティでもと思っていたが、さすが若い人たちは食欲旺盛だ。「おなかは?」と尋ねると間髪いれず「すきました!」という返事。なにが食べたいかと聞けば、神田さんといっしょだからフランス料理がいいと言う。あれまぁ、こりゃ高くつくし、経費でまかなえなくなるから自腹だと思いつつも、いい機会なのでご馳走してあげることにした。
店に行くとキャッシャーからはさわやかな挨拶が聞こえてきたが、店の中は慌しさが漂い、入り口で待っている我々になかなか気付いてくれなかった。やっと気付いて近寄ってきたときも怖い形相で、とても「さぁ、お食事を楽しんでください」とは解釈できるものでなかった。席について周囲を見回すと、確かにこの時間帯にしては混み合っており、さらに奥の個室ではパーティの準備が進んでいるようだった。この店はいわゆるオールディダイニングなので、格式ばったレストランとは違い本格的な会食からコーヒーショップのような役割まで幅広く対応しなければならない。お客がどのような目的で訪れているのかを判断することは、期待に沿ったサービスを提供する上でとても大切だ。
どうも周囲のサービスを眺めていると、コーヒーショップの延長線上にあるように見受けられた。しかしメニューはコースを中心とした堂々たるもので、そのメニューを渡されてサンドイッチとコーヒーを注文するのはいささか気が引けるような構成だった。ワインリストもそれにならった充実振りで、下手な都心のダイニングよりもよほど気の利いたラインナップ。しかもお値段控えめで嬉しさ倍増だ。料理はプリフィクススタイルのコースが魅力的だった。品数によってコースの料金が変わるほか、料理によっては追加料金が必要となるものがある。
ユニークなのは、その追加料金が必要となる料理のうち幾つかは、世界の名陶から集めた高級食器の中から好みで皿をチョイスできるというサービスだ。デリケートで維持管理が難しい食器を敢えて利用しているのは素晴らしい試みだと思う。料理はどれも盛り付けに注意が払われた美しい状態でサービスされ、味もその見た目に適ったもので満足。地域柄か大胆さや意外さはないものの丁寧で上品な料理だった。ワインは勧められたシャンパンCanard Duchene Brutに始まり、Corton Charlemagne '90、Ch. D'dssan '95を楽しんだ。専属のソムリエの姿が見られなかったので、通常のサービス人によるサービスだったが、もう少し優雅さのようなものが加われば、料理やワインとのバランスが取れるように感じた。それはサービス全体に言えることで、あと一歩垢抜けた感覚がほしいところ。
とはいえ、地方の、しかも中心地からかなり離れた比較的新しいホテルでこれだけの高い水準を保っているのは奇跡に近い。フランス料理は決して初めてではなかった若者たちだが、料理の選び方やワインを注文するタイミングなど、大事なデートで失敗しないちょっとしたコツのひとつをお土産にしてもらえたようだ。レストランでカッコよく振舞える若者が一人でも増えれば、散財した価値があるというものだ。
2000.09.22
ハネムーンをふたたび
仙台ロイヤルパークホテル Royal Suite
楽-39月22日は内海源太さんとのジョイントコンサート「MIND" NEXT"」の仙台公演だった。当日の午前中に車で東京を出発し、昼ごろにはホテルに到着。サインだけのスムースなチェックインが済むと、現地で実行委員を務めてくれている方々と合流し、直ちに公演準備に取りかかった。今回予約したロイヤルスイートは、この日一日さまざまな表情を見せ、さまざまなカタチで活用された。
6階の一番奥に位置し、160平米を超えるスペースを持つこのスイートの扉を開くと、まずグリーンの大理石を敷き詰めたエントランスホールがあり、左にダイニング、右にリビングと分かれ、リビングの奥にベッドルームとバスルームが位置するという、主に4つのセクションに分かれた造りになっている。室内はどこも選りすぐった家具や調度品で埋め尽くされ、控えめな色調のファブリックにより巧みなコーディネートを実現させている。家具はどれも大きいサイズで、存在感が大きいだけでなく、使い心地も抜群なものばかり。そしてシーン設定の可能な照明装置が雰囲気を一層盛り上げてくれる。あって欲しいと思うものはグランドピアノ以外ほとんどが揃った完成度の高い客室だ。
バルコニーに細い釣り糸のようなものが屋上から渡されており、以前から何なのかと不思議に思っていたが、今回チャンスがあったので尋ねてみたところ、バルコニーに鳥がとまるのを防ぐ効果があるとのことだった。思いのほか効果は大きいそうで、ちょっとした細工がホテルの美観を保っていることに思わず感心した。さてせっかくの広い客室だが、日中は主にダイニングがミーティングルームとして利用され、軽くシャワーを浴びた程度でほとんど演奏会会場となるチャペルに付ききりだった。
今回の公演では受付の後、ウェルカムドリンクでくつろいでもらっている間に、宴会場付帯のバルコニーでぼくと源太さんからホスト役としての挨拶をさせてもらい、その直後に打ち上げ花火を上げるというアトラクションが用意されていた。ホテルの庭園の向こうに大きな空地があって、そこから花火が打上げられる。挨拶が終わると、庭園の向こうから腹に響く低い打ち上げの音が聞こえ、同時に鮮やかな花火が夜空を焦がしたが、距離が近いだけにその迫力は想像以上のもので、時間的にもかなり満足させられる内容のものだった。シャンパングラスを片手に、思い思いのオシャレでキメて来てくれたゲストからも歓声があがり、一気に雰囲気が盛り上がった。
続くディナーでは宮廷の晩餐会を彷彿とさせる特別の装飾を施したボールルームで総料理長が自ら指揮をとったコースを堪能していただき、更に場所を庭園内のチャペルに移してコンサートを楽しんでもらうという、ホテル空間を最大限活かしたイベントとなった。終演後はスイートで簡単なレセプションを催し、スタッフや親しいゲストが集まりコンサートの余韻を楽しんだが、この時間がもっともホテル空間らしい空気が流れていたように思う。
だが、こうして多くの人が客室に尋ねてくる場合は、ぼく自身も相当に気を遣わずにはいられない。周辺の客室に迷惑にならないように、室内を汚したり破損したりしないように、ゲストに「見張られている」という感覚を与えないようにしながらもしっかりと「見張って」いなくてはならない。ホテルからもスタッフが付きゲストをもてなすサポートをしてくれ、大変助かった。あらかじめ決めた時間になったところで、シメのご挨拶をしてお開きとしたが、その後も散らかったグラスを片づけたり、移動した椅子を元に戻したりなかなか気が休まらない。
片付いた後はスタッフだけが残り、リビングで反省会を行った。ぼくを含めスタッフは食事を取る時間がなく、やっと空腹を自覚したが、すでにルームサービスも終了。仕方なく、スタッフのひとりが近所で唯一営業しているモスバーガーに買い出しに出掛け、シャンパンとバーガーで深夜のミーティングをした。やっとすべてから開放され、一日を振り返るこの時間が一番楽しい。時間はすでに午前3時を過ぎていた。
今回実行委員長を務め、最後まで何かと頑張ってくれた若いカップルはちょうどこの月に結婚1周年を迎えた。彼らもこの日はスーペリアルームを予約してあったが、お世話になったお礼に客室を交換することにした。ぼくが広い部屋を一人占めするよりも、ふたりにハネムーン気分をもう一度味わってもらう方が、このスイートも喜ぶだろうと思って。
Y.K.