晴れ渡った10月の札幌は、さらっとした風がとても心地よかった。街全体にリトルトーキョーのような活気があるが、中心部にいても空気が汚れていないように感じられる。今回の滞在先は、公演の主催者が用意したグランドホテルだった。やはり老舗だからだろうか、ここをチョイスされることが多い。
チェックインはスムーズに行われ、フレンドリーで好印象だった。ベレー帽の若いベルボーイが、部屋まで同行して荷物を運んでくれた。部屋は本館の狭いシングルルームだった。窓の間隔と不均等に部屋が配置されているので、同じシングルルームが並んでいるセクションでも、部屋の広さが微妙に異なっていたり、窓が2枚ある部屋もあるようだ。
17平米のコンパクトな空間だが、ベッド幅が120センチと狭いこともあって、室内にはまだゆとりがある。だが、なんとなく閉塞感があって、あまり長時間ここで過ごしたくはないという感じ。デスクやクローゼットも小さいながら備わっている。縦長の窓からは、緑豊かなホテルのルーフトップガーデンを眺めることができる。
照明は、フロアスタンド、デスクスタンド、ミニバーを照らすスタンド、ナイトランプの他に、窓の近くにダウンライトも設置されているが、明るい場所に偏りがあって、特にベッドの隅の方が暗く感じられた。バスルームはタイル張りで、いささか古くなった感じが否めない。アメニティはビジネスホテル並みの最低限の用意だが、タオルは3サイズ揃っていた。
さて、いつもはサービス面での不足をあまり感じたことがないこのホテルだが、今回は違った。公演が終わり、レセプション会場へ向かう途中、とりあえず衣装などのケースをホテルに置いていくことにし、正面玄関に車をつけた時のことだった。近寄る係にルームキーを示し、トランクのスーツケースを客室に運んでおいて欲しいと頼んだところ、一度フロントへ行ってもらい、滞在の確認をしてからでないと運べないと言われた。ルームキーを持っている客が頼んでいるのに、何の疑いがあるのだろう。では、仮に疑いがあるとして、それがフロントでどう晴らすというのか。
すでにレセプションのスタート時間を過ぎていて急いでいたのに、無駄な足止めをくらった。この係が単に教わった通りにしていることはすぐにわかったので、ここで問答しても始まらない。仕方なくフロントへ行って、玄関の係はこのように言っているが、それはおかしくはないかと尋ねてみたが、フロント係は断固とした態度で「そういう規則ですので」と返答。いったい何のための規則だろう。フロント係とやり取りをしているうちに、先程玄関にいた係が、カートでさっさと部屋まで運んでしまった。まだ規則である「確認」には至っていないのに。
なんとなく釈然としない気分でレセプション会場に向けて出発し、再びホテルに戻ったのは深夜1時近かった。だが、フロント前にはマネージャーが待ち構えており、先程の一件に関して、間違った対応であったと謝罪してくれた。一人の客の意見に、真摯に応える姿勢には感心した。
連泊の間、姉妹ホテルであるパークホテル札幌に出向いて夕食をとった。中島公園に隣接し、その名の通りゆったりとした雰囲気のあるホテルだった。ホテルのガーデンもまた美しい。中国料理レストランを利用したが、どの料理も丁寧に作られ、満足できる内容だった。特に牛フィレの中国風ステーキや、さっぱりとしたザーサイの味が特に印象に残った。
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