2001.02.21
方向音痴
札幌グランドホテル Superior Single Room
楽-2

入り口から室内を見る

羽田でサイさんやハンペ先生と待ち合わせをしていたが、渋滞につかまって便をひとつ遅らせると連絡があったので一足先にひとりで札幌へと発った。電車に乗り継いで札幌駅に着き、そこから荷物を持って歩いてホテルに向かった。タクシーに乗るには申し訳ない距離だと聞いていたが、まだ雪が残る滑りやすい道を歩くのも骨が折れる。最近は近くでもいやな顔をする運転手は少なくなったが、それでも万が一露骨にいやな顔をされたら一日気分が悪くなる。

それなら歩いてしまえと意を決したのが運の尽き。気が付けば北口と南口を間違えて、正反対の方向にまっしぐらに歩いていた。なんかおかしいな?と気が付いて引き返し、駅のコンコースを通り抜けて反対口からホテルを目指して歩いたが、今度は東西を間違えて、ぐるっと遠回り。結局30分くらいウロウロしてやっとホテルのエントランスにたどり着いた。寒いはずなのに汗だくでクタクタ。館内に入ると暖房が十分に効いていて余計に汗が噴きだした。

館内は本館、東館、別館と複雑な構造で、どこがフロントなのか迷っているとベレー帽子がかわいいユニークなユニフォームを着たベルマンが案内してくれた。ゴージャスな大理石に囲まれたフロントは係の対応もよく、思っていた以上にしっかりしたホテルなんだという実感があった。従業員から素朴な優しさが感じられて心地よい。

手続きを済ませるとマネージャーが客室まで案内してくれた。今日の客室は本館8階スーペリアフロアのシングルルームだという。本館と東館は繋がっており、本館の最上階までなら相互に往来ができる。それぞれに3基ずつのエレベータが備わっているが、同じ本館のエレベータでも1基だけ仕様が違っているところを見ると、このホテルが増築を繰り返して徐々に大きくなってきたことをうかがわせる。各階のエレベータホールには、雰囲気の違う6基のエレベータが横一列に並んでいるので、次はどれが来るかな?と乗るたびに楽しみがあった。

部屋に入るとまず荷物を解き、夕方のコンサートで使うものを用意し、衣装を整えてからとりあえずシャワーを浴びた。タオルは3サイズ各1枚ずつの用意でアメニティも一人前だ。シングルなのだから当たり前だが、何であれ一人分ずつというのはなんとなく淋しい。シャンプー類はポンプ式で、固形の石鹸は置いていないが、リクエストすれば持ってきてくれるそうだ。バスルームは2.8平米のコンパクトな空間だが、白いタイルに囲まれ、なんとなくレトロな雰囲気が漂っている。トイレは洗浄機能付きで、BGMを聴く設備もある。

一息ついたところで改めて室内を見わたすと一昔前の視点から見たモダニズムを感じる。八角形のテーブルやちょっとかわった肘掛け椅子が部屋の中央にあり、240センチの天井から床まで伸びた薄いベージュのドレープにはタッセルが掛けてある。窓はホテル敷地の内側を向いていて坪庭が見えた。ベッドは117×190センチとやや小ぶりで壁に密着しているため、その分室内にはゆとりがある。冷蔵庫が旧式で作動音が結構気になった。

デスクの上には3種類のTシャツがあって、ミニバーのような自己申告式の伝票により購入することができる。その他お土産のルームサービスなど、ユニークなアイデアが見られる。ロビー階には大きなホテルショップがあって、ホテルメイドの食材からありとあらゆるホテル仕様の食器までが揃い、見ているだけでも飽きない。レストランは2軒利用したが、サービス、味ともに安心できるもの。コーヒーショップではサービス料を加算しないことにも好感が持てる。また、ホテルの公式サイトにはホテルの歴史やエピソードなどが細かく解説されてあり、実に興味深い。次に訪れる時は迷わないように気をつけないと。

窓側から室内を見る シンプルなベッド

ちょっとレトロなバスルーム ベイシン 電話がレトロ

2001.02.21
お客様の笑顔が私共のごちそうです
「すし屋のやま田」 札幌(すすきの 新宿通り)
喜-5

うまくいったコンサート後の食事はなにを食べてもおいしい。体力も気力も消耗しているから、カラダが栄養を求めてなんでもおいしく食べられる。つまり動物的になんでも食べちゃうわけだ。ところがこのすし屋で満足したの食欲だけじゃなかった。本当においしいものに出会うと、人間は頭脳でもそれを味わう。1カン食べたら脳ミソがゲンキになって、そのままもう1本コンサートができちゃうくらいパワーアップして幸せな気分になってしまった。

主催者のご夫妻に誘われて、終演後にすすきのにあるこの店を訪れたのだが、どこかからゲストをお招きするときはこの店に決めているのだという。すすきの新宿通りは狭い路地で、道路には凍った雪が厚く残り、タクシーの運転手もゆっくりと慎重に運転していた。すすきのといえば歓楽街のイメージが強く、ぼったくり事件などが報じられることも多いから、危険な街だという印象ばかりが先走っていた。確かにそういう地域もあるようだが、一方では道産の食材を活かし、おいしいものを食べさせる店もこの界隈に集まっているらしい。

このすし屋も間口がさほど広いわけではなく、知った人に連れられてでなければ、ぴたりと場所を見つけるのは難しいかもしれない。軒先から店内に至るまで隅々まで清潔に保たれ、一歩店に足を踏み入れれば店主の心意気が感じられる。威勢のいい掛け声と、リラックスした笑顔が味への自信をあらわしているようでもあった。店内にはL字のカウンターのほかに、テーブル席や小上がり、個室などがあって、軒先の印象よりは広いようだった。

我々はカウンターに座り、店主がにぎる寿司を存分に楽しんだ。どの素材も新鮮で、もはや言葉で表現するのは困難なほど。ウニが嫌いだったが大好きになった。ドイツから来たハンペさんも海苔が苦手の様子だったが、生魚はおいしいと言って食べていた。サイさんは「私が死んだらこのカラダを貝に食べさせてやってね。」なんて冗談がでるほど貝が大好き。店主はお客を和ませつつも知性を保った会話術を知っている。そして、すしを握りながらも鋭い視点で状況を把握し、従業員には時折厳しい口調になって指示をとばしている。

だからサービスもぬかりはない。「お客様の笑顔が私共のごちそうです」と豪語するだけのことはあって、従業員全員が仕事を楽しんでやっているのが印象的だった。彼らがオーケストラなら見事なハーモニーを奏でるだろう。ぼく個人としては紅一点高橋さんの髪型がお気に入り。

すし屋のやま田

Y.K.