高輪プリンスホテルの客室改装が完成したと聞き、早速出かけてみた。これまで、プリンスホテルで目立った改装が行われることは稀だった。改装と言ってもせいぜいひっそりとファブリックを替える程度であることが多く、改装を大々的にPRした赤坂でさえ抜本的な改装というには程遠かった。果たして高輪の改装はどのくらい効果が上がっているのだろうか。
チェックインを済ませて案内された客室は、6階のガーデンビューツインだった。客室階廊下のカーペットは一新され、柄の趣味はともかくとしても、踏みしめる感触に高級感のあるフカフカのカーペットになった。だが、客室のカーペットはオフィスのもののように薄っぺらく、廊下とのギャップに早くもがっかり。全体的に、質にはこだわらず仕上げたことが、それだけで容易に想像できた。
ファブリック以外の改装のポイントは、窓際にオフィスチェアを添えたライティングデスクを置き、テレビを液晶に替え、ベッドを高くしてダクロンの寝具を白いベッドリネンで仕上げるようにしたというくらい。ホテルのサイトによれば、6階以上の客室にはマイナスイオンドライヤーを置いていると自慢げだが、それくらい全客室にさりげなく備えたらどうだろう。これしきを改装のポイントに書き連ねるとはみみっちい。
家具はヘッドボードや照明器具を含めて既存のものはすべて手入れして活用した。アームチェアはつややかな肘の木部がいい味をだしており、新調されたものよりもずっと肌になじみ、存在感もある。逆に言えば、それだけ新しいものが軽々しいということだ。ベッド周りの照明は暗いし、寝心地もいまひとつ。せっかくの液晶テレビもプログラムのつまらなさは相変わらずだし、画像も美しくない。バスルームにはまったく手を加えなかった。タイル仕上げのバスルームはまだ十分に通用する状態だが、アメニティもタオルも以前のままだった。
高輪プリンスホテルといえば、プリンスの中では高級なイメージを持っていた。古いというイメージもあったが、落ち着いた大人の雰囲気は魅力だった。リフレッシュされた客室は、新しい工夫も加えられ以前より快適になっているはずなのに、どうにも違和感があって落ち着かなくなってしまった。全体的に中途半端になってしまった要因のひとつは、ファブリックの選び方を失敗したことにある。既存の家具とのバランスを保つには、木肌と相性のよいもっと質感の高いものを選択すべきだったと思う。
改装によってクオリティは品川のエグゼクティブタワーと同程度になり、これで高く売れるどころか、次第に一層の安売りをしなくてはならなくなるだろう。せっかくの広大な敷地と、都内では貴重なガーデンを持ついい環境なのに、もったいないことこの上ない。
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