関東地方には台風21号が接近しつつあった。福岡で台風に遭遇し、スケジュールの変更に次ぐ変更で引っかき回されてから1ヶ月も経っていないので、少々神経質になっていたのかもしれない。翌日の鹿児島入りを控えて、なるべく空港に近づいておこうとシーフォートを予約した。羽田空港へのアクセスでは、このホテルは申し分ない。モノレールで1本。外を歩くことなく移動できるのがいい。
むしろ大変だったのは、シーフォートにたどり着くまでだった。渋谷でリハーサルを済ませ、山手線で品川へ。品川からタクシーに乗ろうと思ったが、熱帯のスコールのような激しい雨で、品川駅港南口の階段は、そこまで屋根に覆われているのに滝のようになっていた。じっとしていても収まりそうもなく、雨宿りの人が増える一方なので、思い切って移動を試みたが、なんとタクシー乗り場へは、屋根のないところを少し歩かなくてはアクセスできない。
ところが渡りに船。目の前に路線バスがいて、シーフォートスクエアにも停車すると書いてあったので思わず飛び乗った。走り出してから、バス停が建物から遠かったらどうしようと不安になったが、空港リムジンのように、きちんと建物の車寄せまでつけてくれたので、まったく濡れずにホテルに到着することができた。
チェックインは青年の係が担当。親切で感じがよかった。禁煙室はあいにくいっぱいだったが、シングルルームをツインにアップグレードしてくれた。部屋に入って翌日の準備をしていると、雨は次第に弱まり、峠は越えた感じに。結局、一番激しい時に品川駅で右往左往していたようだ。
朝にはすっかり気持ちのよい空となり、台風に備えた前泊は無駄になったが、ホテルから気持ちよく出発するだけでも、十分に価値はあった。外国人に混じってスムーズにチェックアウトを済ませ、モノレールに乗り込んだ。途中、羽田東急ホテルの前を通過。あと3時間ほどで全ての業務を終え、40年の歴史にピリオドを打つ。その最後の姿を眺められてよかった。敷地脇には、すでに館内から運び出されたテーブルやイスなどの備品のが山積みにされ、それぞれの歴史を振り返り、語り合っているかのようだった。本当にお疲れ様と思いつつ、車窓から消える羽田東急ホテルを見送った。
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