前回と同様の20平米と案内されたシングルルームだが、今回はあえてバスタブのないシャワーのみの客室を選んだ。どのようなバスルームなのか、そしてどんな雰囲気の客室なのか、かねてからとても興味があった。
チェックインは申し分なくスムーズだった。平日の夜7時に、フロント周辺には人影もなく、深夜のような落ち着きが感じられた。フロント係、ベルともに上品で親切なサービス振りだった。こうした気品こそがクラシックホテルには相応しい。いつもこうあって欲しいものだ。
案内された客室は、3階のエレベータホールから程近い場所だった。扉を入る前から、その位置関係から中庭を望む向きだろうと想像できたが、部屋に入って窓を開けて唖然とした。そこには恐ろしげな液体のしずくが垂れ下がる何本もの配管と、低いうなり声を上げる大きな機械があり、生ぬるい熱風が滞留していた。思わずマトリックスを思出ださせる光景だ。慌てて窓を閉じて振り返ると、ベルが苦笑いをしている。部屋の説明は辞退して、ひとりになったところで部屋の隅々までを見て回った。
隅々と言っても、部屋の中は数歩しか歩くところがない。前回の20平米もウソだろうと思ったが、こちらは一層ウッソだろーっという感じ。ベッドは110センチ幅のシングルサイズで、寝心地は前回の客室のものほどよくなかった。ベッドの脇にはスタンドの載ったナイトテーブルがあるが、操作盤を表にする向きには置くことができず、やむを得ず操作盤を完全に殺す向きに据えた。また、ベッドの足元近くには小さな謎の扉がある。夜中に誰か出てきたらどうしよう、という感じの扉だ。
テレビの下には冷蔵庫。バゲージ台は上に板を載せて、ポットやスタンドを据えている。そのため、カバンを広げるスペースはベッドの上だけになってしまった。デスクは狭く奥行きがない。デスク前にはミラーがあるが、全身を映せるミラーはどこにもない。クローゼットはベッドの枕元に細いものを設置した。全体的に収納力には乏しい。
バスルームは思いの外広かった。手前から、病室にあるような小さなベイシン、紐を引いて流す昔懐かしい水洗タンクとトイレ、一番奥にシャワースペースを設置した。壁はタイル張りで、改装時にもベイシン以外は手を加えてないようだ。シャワーもスペース的には十分だが、ひらひらと薄いカーテンの隙間から水滴が飛び散りやすい。頑張ってガラス扉にでもすればもっと印象はよかった。アメニティはリンスインシャンプー、ソープなど一通りが揃う。タオルは3サイズ1枚ずつで、バスローブやガウンはなかった。
この客室は料金が手頃なので、深夜の急なニーズにはいいかもしれないが、くつろぎをわずかでも求めるのなら避けたほうがいい。
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