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ベルジャヤシンガポールホテル Duplex Suite | |
Berjaya Singapore Hotel | 2011.10.06(木) |
Singapore, Singapore | 楽-4 |
ARCHIVES ・ 1992 |
ショップハウス シンガポールには最新設備の高級ホテルが揃っているが、小さいながらも個性的な輝きを放つブティックホテルの存在も見逃せない。中でもショップハウスと呼ばれるプラナカン建築を利用したホテルが面白い。 ショップハウスは、中国、マレー、西洋の文化の融合によって生まれた独特の様式で、京町屋のように細く小さな家が寄りあって建っており、1階を店舗に、上階を住居として使っていたという。シンガポールでは、このように歴史的価値のある建物を保存する策を講じており、取り壊すことはできないが、改装を施してさまざまに活用されている。 ダクストンロード沿いに建つベルジャヤホテルもそのひとつ。いかにもシンガポールらしい風景の中にあるが、カラオケスナックやクラブなどが多数入居するショップハウスが建ち並び、深夜になると妖しい賑わいに包まれる。だが、その賑わいがはねた夜明け前、ベルジャヤホテルは最も美しい表情を見せる。 日本からの深夜便で来ると、ホテルに到着するのがまさにこのような時間だ。朝もやに煙る静かな街の中で見上げるショップハウスは、完ぺきな舞台セットのよう。映画のワンシーンに迷い込んだ気分になる。 小さなエントランスを入ると、温かい照明に照らされた別世界がある。フロントカウンターは駅のきっぷ窓口ほどのささやかさ。エキゾチックな顔立ちの若者がにこやかに出迎える。 ロビーを見渡すと、ヨーロッパ風のエレガントな家具にまざって、中国やインドを思わせる調度が随所に飾ってあるのが目に入る。多くは古い年代のもので、それらが現代まで残されているのではなく、訪れた者の方が古い年代までタイムスリップしたかのようだ。 目にするものの中で最も近代的なのは、1基だけある小さなエレベータ。それさえ、実際は古めかしいのだが。到着早々、大きなホテルにはない温もりに包まれ、ここで数日を過ごすと思うと嬉しくなった。 館内は迷路のようになっている。細い階段が入り組み、廊下もまっすぐではない。客室は一列に並んでいるばかりではなく、忍者屋敷のような複雑さだ。自分の部屋を見失わないように、目印を見つけながら歩くのも面白い。 あえてエレベータを使わず、ゆっくりと館内を歩いてみる。階段の踊り場には、それぞれ違ったオブジェが置いてあるので、それを目印にしよう。ロビー同様、やわらかい光に照らされ、オブジェたちも心地よさそうだ。 廊下にはエレガントなブラケットライトやピクチャーライトが並び、壁の羽目板や天井の繰型など、装飾性の高い内装が施されている。わずか49室のホテルながら、探検のしがいがある。 今回利用する部屋は、デュープレックススイート。部屋の中に螺旋階段があり、上階と下階合わせて約60平米の面積がある人気のタイプだ。塗り壁に使われているペンキの色もユニーク。色ひとつで異国情緒を感じさせるというのも、ある意味たいしたものだ。 エントランスのある下階はリビングルーム。窓際半分は2層吹き抜けになっており、非常に天井が高い。ショップハウス独特の窓枠が、レースの向こうにシルエットとして浮かび上がる。ハッとする光景だ。重たいドレープにも存在感がある。 リビングにはどっしりとしたソファセット、布の掛かった丸テーブルを挟んだアームチェアが置かれている。片隅にある中国風の古いキャビネットには、テレビや冷蔵庫などが収納されている。 窓から差し込む日差しの中、のんびりと茶を飲んだり、本を読んだりして過ごすのがよく似合う。街のノイズも、ここでは異国情緒。BGM代わりだ。 ウェルカムフルーツは八角形の皿に載せて。ウェルカムフラワーアレンジメントは、友人が差し入れてくれたもの。花があると気分が和らぐ。 キャビネット下には、飲み物の入った冷蔵庫。あんがい大型でたっぷり収納できる。ミニリカーも5種類。コーヒーや紅茶は無料だ。 上階への螺旋階段は、ちょっとスリリング。クローゼットも上階なので、大きなスーツケースを抱えて階段を上がるのは怖かった。ミシミシと音を立て、階段ごとひっくり返るのではないかと気が気でない。それもまたショップハウスならでは。 上がったまではよかったが、今度は降りるのが怖かった。あんがい高いのだ。高所恐怖症の身には、足がすくむ光景だ。 上階はベッドルームとバスルーム。三角天井が面白い。天井に沿って施された赤いラインが気に入った。ベッドはキングサイズ。さすがにマットレスはややくたびれているが、ベッドリネンは申しぶんなかった。ベッドメイクも丁寧。 ベッドと天井の関係は、少々ずれている。そこがまたいい感じ。ベッドボードのデザインも、他ではなかなかお目にかかれない。 ベッド両脇には、ナイトテーブルとスタンドがシンメトリーに配置されている。スタンドのデザインはカムチェン(蓋つき壺)モチーフ。 ベッドの奥にはクローゼットとデスクが並んでいる。高速インターネットは無線。ベッドの前の扉はバスルームに通じている。 バスルームは白とグリーンの大理石仕上げ。室内では、バスルームだけに蛍光灯を使用している。ベイシンカウンターは広いが、ベイシンはひとつ。ミラーも大きい。 バスタブは浅い。ショップハウスの弱点のひとつが給湯だ。大型のボイラーを設置できないらしく、湯を出し続けているとすぐにぬるくなってしまう。ササッとシャワーを浴びるよう心掛けなければならず、ゆっくりバスタブに浸かって過ごせないのは残念。 バスアメニティは大理石のトレーの上に蘭の花と共に並んでいる。タオルは3サイズ。給湯の問題以外は、快適なバスルームだった。 朝食は1階のレストランでのブッフェ。シンプルだが、一通りのものが揃っている。卵料理はオーダーすれば好みのものを作ってくれる。 大規模なホテルにはない安らぎ。ちょっとした不便さえも、ユニークな体験として記憶される。そんなホテルだった。 |
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