YKsonic Web | home | concert | kidoairaku>2010 | blog | gallery | profile | contact | |
ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド Executive Moderate Twin Room | |
Hotel La Suite Kobe Harborland | 2010.04.07(水) |
神戸市中央区 | 楽-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
港の邸宅の味気ない接客 神戸にまたひとつ魅力的なホテルがオープンした。館内は邸宅を思わせる豪華なインテリアで埋め尽くされ、すべての客室には港を渡る風を肌で感じるテラスが設けられている。ワンランク上のシティリゾートの誕生は、都市におけるホテルの新しい在り方を示し、大きな注目を浴びた。 すべてのものに最高を求め、きめ細かく充実したサービスで滞在を華麗に演出する独自のスタイルは実に興味深く、泊まるためのホテルというより、高級レストランで過ごす時間がいつまでも続くというような醍醐味が感じられる。 総支配人の掲げる理念や、このホテルがゲストに提供しようとしているものの価値は十分に理解できる一方で、それらが現実に維持できるのかが気になるところだが、まずは実際に泊まって体験しなければ、話は始まらない。 神戸駅からホテルに向かう際、タクシーを使うかどうか迷った。歩けない距離ではないが、歩きたくなかったのである。途中に通る道に風情がないこともあるが、高速道路や交通量の多い太い道を越えるには、歩道橋を渡ったり、迂回をしたりする必要があり、ホテルに着く頃には表情が険しくなってしまいそう。だが、あえて歩いてみた。結果は案の定であった。 立派なアプローチと正面玄関は、高級会員制倶楽部を思わせる雰囲気で、ある種の近寄り難さが漂う。男前のドアマンが威風堂々とした身のこなしで出迎え、大理石で縁取られた大きな扉を押し開き、館内へと招き入れてくれた。 玄関ホールには壮麗なシャンデリアが下がり、重厚感のある木の装飾とミラー、そして大理石と豪奢なカーペットに彩られた廊下がロビーまで続いている。そこを歩く間に、ドアマンはインカムを使って到着した客の名前をフロントレセプションに伝えていた。 ロビーにも燦然と輝くシャンデリアがあり、大きなフラワーアレンジメントが華やかさを放っている。窓の近くには心地よさそうなソファが並び、そこで一日中読書でもして過ごすのも悪くなさそうだ。 レセプションデスクはロビーの一角の、少々奥まったところに設けられている。大きなデスクがふたつあって、座って手続きを進める仕組み。 せっかくドアマンがスパイ映画のようにインカムで情報を流したのに、フロント係は聞きもらしていたらしい。いまひとつ連携に欠け、気取っている割にはサマになっていないところがカワイイのだが、この「気取り感」は初めてではない。そう、ザ・リッツ・カールトンのにおいがプンプン漂ってくるのだ。 手続きの進め方も、手慣れてはいるのだろうが、どうもぎこちなかった。もっと自然体でいいから、係もリラックスしてくれないと、ゲスト側にも緊張が生じてしまう。 このホテルには正面玄関の他に、港に面したエントランスがあって、こちらの方が明るくて入りやすい雰囲気だ。門の前にはレストランやラウンジの案内が掲げられ、案外手ごろな値段で利用できることをアピールしている。この案内がなければ、立派な風体からビックリするほど高いのではないかと警戒されてしまうことだろう。 港側の門を入ると、ヨーロッパの城を思わせるような石の階段があり、ロビー階に通じている。そこにはウォーターガーデンに面したテラス席が設けられており、気候がよければここでもティータイムを楽しむことができる。 さて、客室へ向かうエレベータは2基。エレベータホールはレセプションのすぐ脇にあり、なおかつエレベータ内でキー操作をしないと客室階へは停まらないのでセキュリティ面も安心。もうひとつのレセプションデスクでは、有名な元モデルの母娘がチェックインしていたが、そうしたセレブリティのお忍び滞在にも打って付けだ。 部屋に着くと、おしぼりとウェルカムドリンクが届けられた。コーヒーとプティフール。女性客は化粧品のセットも選べるようだが、男はダメらしい。 今回利用した客室は、モデレートルーム。このホテルでは最も狭い客室のひとつだが、それでも62平米の面積がある。これに11平米のテラスが加わり、占有面積は73平米。インターナショナルなラグジュアリーホテルと比較しても遜色ない広さだ。 フロアカテゴリーは、低層階のラグジュアリーと高層階のエグゼクティブに分かれており、後者には若干の特典が含まれる。この部屋はエグゼクティブだが、同タイプであれば客室の仕様はほとんど同じのようだ。 客室の内装は、想像していたよりもずっと立派。ツインルームは落ち着いた重厚感のある色調でまとめられ、それぞれの家具にも存在感がある。居室は手前がリビングで、窓に近い場所にベッド。ワークデスクはベッドの前にある。 テレビは52インチと大型。CS放送はないが、数多くの映画オンデマンドサービスはすべて無料。もちろんDVDプレイヤーを備え、ユニークなオーディオスピーカーもある。天井の間接照明と、調光可能なシャンデリアが印象的だ。窓に下がるレースやドレープも洒落ている。 ベッドはシモンズのマットレスを使っているが、ベッドリネンの肌触りは粗い。ベッドボードは布が張ってあるが、そう遠からず汚れてしまうのではないかと心配。実際、カーペットはすでに汚れが目立っている。ベッド上に中途半端な梁が迫り出しているのも落ち着かなかった。 リビングスペースとベッドとの間には、サイドボードを置いて仕切りにしている。そこにはさりげなく蘭の一輪挿しがある他、就寝中に使う手袋や足パッドなど、女性が喜ぶアイテムが並んでいる。 リビングには大きな二人掛けソファとオットマン付一人掛けソファがある。それぞれのソファにテーブルを添えているが、トップに置いたガラス板の下側が曇って汚れているのが気になった。 ソファの向かいには2名掛けのダイニングセットがあるが、通行の邪魔になるからか、チェックイン時はテーブルも椅子も壁に着くように押し込まれていた。いざ出そうとすると結構重たくて面倒だった。 入口ドアと居室との間には内扉がある。ホワイエにはクローゼットがあるが、この部分は人の動きを感知しての自動照明なので、ちょっとじっとしていると電気が消えてしまうのが不便だった。 居室の入口付近にはバゲージ台と食器棚がある。食器棚にはグラス類、カップ、エスプレッソマシン、無料の神戸ウォーターなどが並ぶ。 冷蔵庫内には幅広い品揃えの飲みものが入っており、ほとんど空きスペースはない。シャンパンだけでも3種類用意されている。 また洋茶器はベルナルド製ボーンチャイナ、和茶器は立杭焼という凝りよう。ぜひともこれらの器を使ってみたいものだが、茶もさまざま用意され、どれにしようか迷ってしまう。 そして広々としたテラス。リゾート風のイスとテーブルが置かれ、ティータイムやルームサービスでの朝食など、この空間を活用できるシーンはたくさんある。隣室との間には仕切りがあり、さほど気になることはない。 テラスからは港町神戸らしい風景が見られる。メリケンパークの様子やポートタワー、オークラもすぐ目の前だ。 夜には雰囲気が一転し、よりロマンチックになる。水面を進む船が起こす波紋が、ライトに揺れて美しい。またメリケンパークオリエンタルホテルが、本当に豪華客船のように見えてくる。 バスルームも魅力的に造られている。ベイシンのある空間はドレッシングルームを兼ねており、ブードアのようだ。淡いカラースキームの中に、華やかなミラーやエレガントなシェイプの足を持つベイシン台が置かれ、女性なら身支度に一層の気合いが入ることだろう。 タオルはガラスの棚に畳んで並べられており、その下段には使用済みタオルのカゴやトレーが用意されている。ベイシンはシングルだが、片側にはスツール風のイスが添えてある。 ウェットエリアは石張りで、バスタブと洗い場風のシャワースペースがある。シャワースペースには和風に座って体を洗えるようにプラスチックのイスや桶が置いてあるが、このホテルには似合わない。また、バスルーム内の照明が特に平板で、あまりムードを感じない。 バスタブはブロア機能付き。スーペリア以上なら円形のバスタブを設けているが、モデレートは楕円形。それでも十分に広く快適である。バスタブ内照明をオンにすると、ダウンライトが暗くなる仕組み。浴室のテレビでも、メインのテレビと同じく映画を見ることができる。この時はジュリアロバーツと一緒にご入浴。 バスアメニティは極めて充実度が高い。入浴剤や化粧品などなど、女性陣はお土産がいっぱいでたいへんだ。だが、シャンプー類は大型のディスペンサーボトル。エビアンのスプレーも、大浴場の備品のように使いまわしなのだろうか。でも、その脇にあるボディローションは、客ごとに個別に用意されるサイズだと思うのだが、これも使い掛けが置かれていた。 トイレは独立しており、こちらも自動照明。徐々に明るくなるので深夜にも目くらましされずにいい。トイレには消臭を兼ねたルームスプレーが置かれている。 客室はこのように充実しているが、レストランと女性専用のSPA以外、パブリックスペースにはこれといった施設はない。ロビー階にあるウォーターガーデンも、夜のライトアップが美しく、水辺で佇む時間も悪くないのだが、アクティブ派には物足りない気がする。 女性客を強く意識しているのは構わないが、「女性限定」ばかりが目につくと、差別されている感すらあるのは否めない。また、自慢であるはずのサービスも、やけに恭しいかと思うこともあれば、印象の悪いことも少なからずあった。 出発時はタクシーを利用したが、他に客がいるわけでもないのに、扉に手を添えることもせず、車が動き出すのを見届けることもしなかった。このことからも、まったく心がこもっていないのだと感じさせられた。このホテルでは立派な部屋でのんびり過ごすことに専念するのがいいようだ。 |
▲このページの先頭へ | |
OFFICIAL WEBSITE |
このホテルに関する過去のレビュー 初登場のため、過去のレビューはありません。 |