ヒルトン大阪 Executive King Room
Hilton Osaka
2008.08.29(金)
大阪市北区
楽-4

鏡面塗装とレザーを使ったベッドボード
 
リフレッシュしたエグゼクティブルーム ヒルトン大阪の最大の魅力は立地条件である。大阪駅周辺、いわゆる梅田界隈には数多くのホテルがあり、中でも駅上のグランヴィアや駅前の新阪急ホテルは、大阪だけでなく周辺都市にもフットワークがよく人気がある。そしてヒルトンは、インターナショナルクラスのデラックスホテルとしては最も大阪駅に近く、地下鉄改札にも濡れずにアクセスできるので、大阪市内のどこに行くにも便利だ。

さらに高級なリッツ・カールトンも徒歩圏内ではあるが、パークハイアット東京と同様に、駅から歩くには少々遠く感じられる。天候が悪い時はなおのことだ。リッツ・カールトンの豪奢な雰囲気も捨てがたいが、コストパフォーマンスや動きやすさなどを総合的に比較すると、少なくとも今回はヒルトンの方が魅力的だった。

もうかなり昔のことになったとは言え、ここで体験した不親切な対応のことは生涯忘れることは出来そうもないが、当時の客を客とも思わない冷徹非情なサービスポリシーに関しては、今ではだいぶ柔軟になってきた。過去数回の滞在を振り返っても、このホテルを今なお避けなければならないような事態は生じていない。この先もないとは言い切れないが、とりあえず今は安心して利用できるホテルのひとつである。

昼下がりのロビーは多くの人で賑わっていた。待ち合わせの人、ランチを終えたビジネスマンなど、いかにもヒルトンらしい雰囲気の客層だ。吹き抜けのロビー中央にはカラフルなソファが並んでいるが、一部を除いてはロビーラウンジとして喫茶の注文を受けるコーナーとなっており、無料で座れるイスは数少ない。

フロントは昔ながらの一直線の大理石カウンター。ちょうどチェックインが重なり混雑していたので、列には並ばずに、32階にあるエグゼクティブラウンジへ直行した。そこには見覚えのある男性がちょうど背中を向けて立っていた。彼は、数ヶ月前に名古屋のエグゼクティブラウンジで苦情の対応に当たった係。その際は、大阪から名古屋にヘルプで出向いていたが、今はもう大阪に戻っているのだった。

背後から名前で呼びかけると、彼はびっくりしたように振り返った。次の瞬間には見事な作り笑いを浮かべ、接客専用の表情でレセプションデスクのイスを勧めてくれた。デスクはとても小さく、ラウンジ入り口の脇に無理にとってつけたような感じ。どうもレジストレーションカードは1階フロントで用意してあったらしい。予約は一般階客室で入れてあったので、エグゼクティブフロアはアップグレードでの利用である。

東京や東京ベイ、コンラッドでは、同様の予約であっても直接エグゼクティブラウンジへ案内されるので、ここでも習慣的にそうしてしまったが、どうもここでは1階でチェックインするのがいいようだ。次回からはそうしよう。でも、とりあえず今回も特に問題はなくチェックインすることができた。ラウンジで飲み物でもと勧められたが、空港ラウンジやら機内など、あちらこちらで飲み物が振舞われ、すでにガボガボだったので、まずは部屋へ向かうことにした。

部屋まで案内してくれたのも名古屋で会った彼で、歩きながら「早速ヒルトン大阪にも来てくれてありがたい」とか、「名前を覚えていてくれて嬉しい」と言ってくれた。実のところ、ここを選んだのは単に好条件だったからではない。名古屋で彼に見送られた際「今度は大阪で」と言い残した手前、それは遅かれ早かれ実現しなければウソつきになってしまうので、自らの有言実行を貫く目的もあった。

そして、苦情とは言え縁があったわけだから、それも無駄にはしたくなかったし、彼の大阪での仕事ぶりも見てみたいという気持ちもあって選んだのである。実際、名古屋であの「怒」がなかったら、今回も他のホテルをチョイスしていたことだろう。

用意されたのは30階禁煙フロアのキングベッドルームだった。以前は、当初からのエグゼ階と途中からエグゼ階になったフロアとで内装の一部に差があったのだが、今回のエグゼ階全面改装によってフロアによる差は解消された。6月に改装が済んだばかりのフロアは全体が真新しさで満ちており、照明は控えめなのにカーペットや壁の色によって陰気な印象を打ち消している。

客室内も同様にライトなカラースキームを基調としており、フレッシュで健康的なイメージに仕上がっている。レイアウト自体は、ヒルトンらしくティピカルなホテルスタイルを引き継いだ。また、先に改装を済ませたヒルトン東京のエグゼクティブフロアと同じ系統のデザインが採用されているが、東京で不評だったものは改善され、より使い勝手のよい客室になっている。

標準客室の面積は30平米。40平米が当たり前の時代にはやや手狭な気もするが、ひとりで利用するのに不都合があるほど狭くは感じない。だが、おそらくツインだと印象がたいぶ違うだろう。やはり30平米程度の部屋でゆとりを感じさせるには、ベッドは1台が限界かもしれない。

入り口付近にはバゲージ台とクローゼットを設置したが、ここにも工夫が見られる。バゲージ台の上には、ステンレスのL字状レールを設け、オープンクローゼットとしても使えるようにし、サイドの細い扉内にはアイロン、雑誌、金庫などをまとめて収納し、スペースを有効活用している。ただ、クローゼット本体が狭いという印象は否めなかった。

ミニバーはローズウッドカラーの独立したキャビネットに収納しており、冷蔵庫の他、コーヒーメーカー、ポット、グラス類などがところ狭しと収納され、やや窮屈で扱いにくく感じられた。キャビネットの外観がなんとなく現代仏壇のようなのも、なんと言ったらいいのか微妙なところ。

ミニバーキャビネットの並びは、ロングカウンター。ふたがポップアップする部分は、ステーショナリーなどの整理ボックスで、そのふたの内側はマグネット式のホワイトボードになっている。DVDプレイヤーやディレクトリーなどを収納する棚状のボックスもあって、シンプルな見た目以上に機能的だ。テレビは壁掛けの32インチ型で、地デジ、BSデジタル、CS放送など多彩なチャンネルを愉しむことが出来る。

デスクはカウンターからせり出した楕円形のガラス製で、オフィスチェアを添えている。窓際にはカウチ風のロングソファとコーヒーテーブル、小さいレザー張りスツールを置き、十分にくつろげるスペースを確保している。ベッドには真っ白いベッドリネンが映える光沢塗装のベッドボードを採用。両サイドにナイトテーブル、縦長のライト、スポット状のリーディングライトを設置した。マットレスの感触も悪くない。

照明は、幾つかのハロゲンダウンライトの他、テレビが掛かっているパネルの両サイドにも蛍光灯の間接照明が埋め込まれているので、部屋全体の明るさはまったく申し分ない。だが、個々にON/OFFするというコントロール性には乏しい上に、調光が一切できないので、雰囲気を調整することは難しいのが残念だった。

また、LANはエグゼクティブフロアでも1日1,680円の料金が発生するが、エグゼクティブラウンジ内なら無料でアクセス出来るので、自分のパソコンをラウンジに持ち込んで利用している客が多いようだった。ルームサービスは値段も手頃で利用しやすいが、食器やイス、テーブルのレンタルは有料だと記載されているのは珍しい。

無料で貸し出す品物nリストも用意されていたので、その中からアロマディフューザーとiPodスピーカーを借りた。スピーカーはなかなか便利だったが、アロマの方はまるで車の消臭剤のようなにおいだったので、使って後悔した。

バスルームは広さとしては以前のままだが、雰囲気はガラリと変わった。最初に入った時は、一瞬石張りにしたのかとビックリしたが、次の瞬間にはシールであることがわかった。ベイシンは新調され、照明器具も新しくなった。

バスタブは既存のものだが、カランやシャワーは新しくなり、壁の半分をミラー張りにした。空間を広く見せる意味では大変効果的だが、便座に座った自分の姿が実によく見えるので、落ち着かないと感じる人も少なくないように思う。アメニティはヒルトンエグゼクティブフロア共通のクラブツリー&イブリン。タオルは3サイズが3枚ずつ備えてあり、特にバスタオルは通常よりも大型だった。

エグゼクティブラウンジは32階にあり、面積は150平米あるが、客席数は約40席と、エグゼ階5フロアに対しては少ない。それでも今回の滞在に限っては、特に混雑する様子はなかった。週末のアフタヌーンには、ちょっとしたデザートブッフェほどの菓子が並び、カクテルタイムには各レストランから数品のつまみが用意される。シャンパンはローランペリエだが、カクテルはベーシックな7種類に限られ、他を希望の場合は35階のバーで有料でと書いてある。

朝食は布のクロスと布ナプキンをセットし、さながらレストランの雰囲気だ。ブッフェ台の料理だけでなく、卵料理やパンケーキ、フレンチトーストのオーダーにも応じる。サービスも溌剌としており、これから仕事に出掛けるという客にとっては、サービスの面からも活力が注ぎ込まれることだろう。

 
やわらかい色調の新装ルーム テレビの掛かるボードとカーペットの柄は共通 ベッド周辺はシンプル

ボードに備え付けられたカウンターは便利 カウンターのポップアップ部分 ジャックポート

ガラスのデスク ロングソファと丸テーブル 貧弱なウェルカムフルーツ

窮屈で使いにくいミニバー ミニバーの引き出し内 冷蔵庫

現代仏壇のようなミニバーキャビネット 細いクローゼットとバゲージ台上のレール クローゼットとバゲージ台

ベイシン バスタブ脇はミラー張り シャワー

窓からの眺め エグゼクティブラウンジ デザート

室内プール ロビーの吹き抜け部分 ロビーの中央

 ヒルトン大阪(公式サイト)
 以前のレビューはこちら→ 021223 060314


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