フロントには係がひとりしかいなかったが、幸いその係は手が空いていたのでチェックインを頼んだ。レジストレーションカードが差し出され、それに記入したまではいいが、フロント係も強情だった。「お部屋へのご案内は14時からになりますので、その頃またお越し下さい」と追い払い攻撃に出て来た。14時まであと10分だというのに、正月早々なんでケチなことを言うのか。ここで理屈をこねるのも面倒くさかったので、不機嫌そうに睨み付けるという戦法で反撃。にらめっこの末、フロント係は撃沈し、ルームキーを手にすることができた。

しかし、ホテルはなぜこうもチェックインタイムにこだわるのだろうか。以前宿泊した時は、ホテルの手違いが原因で、チェックアウトの際に相当の時間を無駄にされた。ホテルとて、自分たちの落ち度で客に迷惑を掛けることが少なからずあるはずだ。とりわけリピーターに対しては、日頃から柔軟な対応を心掛けておけば、ホテルがミスを犯した際、大目に見てもらえるかもしれないのに。それを、チェックイン時間まであと10分あるからキーを渡せないなどとセコイことを言っているようでは、ホテルがちょっとミスっただけで、大問題にされてしまうだろう。客に寛容を求める前に、まずは自分たちが太っ腹なサービスをしなければなるまい。

客室フロアに向かうと、そこは客室係の作業場と化していた。廊下にはワゴンやゴミ袋が多数あって、よけて歩くにも容易ではない。そして、このフロアは禁煙だというのに、廊下にはタバコの臭いが充満していた。更に埃っぽくて、正月早々、とんでもないところに来てしまったものだと後悔した。

この日の部屋は20平米のシングルルーム。標準的なレイアウトで、特段興味を引く要素はない。室内はグレーを基調とした彩度の低いインテリアでまとまっており、都会的でクールだと言えないこともないが、どちらかというと陰気でつまらないという印象だ。そして、ファブリックや家具の傷みがひどく、もうすぐにても改装しなければならないような状態になっている。

ベッドは122センチ幅で、壁にぴったりと寄せられている。マットレスは驚くほど薄く、ベッドの下にはもう1台のベッドが収納されており、粗いベッドリネンと合わせて寝心地は最悪。ベッドから窓までの間は広く空いており、そこに2台目のベッドを設置できるようになっているが、シングルで使う客にとってはまったくもって無用でしかない。無駄に空間を空けるくらいなら、もう少し幅が広くて寝心地のよいベッドを置いて欲しいものだ。

デスクは独立型だが、壁を向いて設置されており、デスクの上には埃だらけのアクセサリートレーがある。引き出しはふたつあるのだが、そのうちひとつはインターネット用の機材がはめ込まれているために使用できない。デスクの脇にはミニバーキャビネットがあり、冷蔵庫には各種ドリンクが乱雑に入れられている。用意されたマグカップやトレーも薄汚い印象があり、とてもそのまま使う気にはなれない。テレビは21インチのブラウン管。窓際にはアームチェアとコーヒーテーブルがある。窓からは活気ある渋谷の街を見下ろせる。109の前には初売りでの福袋を求め、徹夜で行列しているギャルたちの姿が見えていた。

バスルームは2.8平米で、タイル張り。シャワーもベイシンも節水コマが入っているらしく、ちょろちょろとしか出ない。アメニティはディスペンサーボトルのシャンプー類など、エクセル東急共通のものを用意している。全体的にビジネスホテルの粋を出ることはなく、むしろ新形態のビジネスホテルにすら劣っている状態だ。魅力は立地だけ。それだけの利点では、高額な宿泊料金に対する説得力には不足だ。